犬は外見のみで、他の犬がイヌであると特定できる(研究)

サイエンス・リサーチ
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前方から接近する他の犬をジ〜ッと見つめている愛犬。その様子をみて、「コイツは、相手がイヌだということをわかっているのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?

嗅覚が非常に優れている彼らのことですから、ニオイで嗅ぎ分けることはできそうです。では、与えられるのが視覚情報だけだったらどうでしょう?接近する犬を見て、「あ、ワンちゃんだ!こんにちは」とウキウキするのでしょうか?


「外見だけで、イヌであることを判断できるか?」という問いに挑んだのは、フランスに拠点を置く研究チーム。9匹の犬の協力を得て、実験を行いました(2013年)。9匹の内訳は、2匹の純血種(ラブラドール・レトリバーとボーダー・コリー)と7匹のミックス犬で、全て同じ場所で飼育されていた犬でした。

1294_Fig-1-Dog-subjects

実験参加犬9匹 image by Visual discrimination of species in dogs (Canis familiaris)

実験のセッティングは極めてシンプル。2台のPCスクリーンが準備され、それぞれ別の画像が表示されるように準備します。片方には犬の画像、もう一方には異なる画像が表示され、犬がどちらかに歩み寄ることで選択するという形です。犬が歩み寄った方を明らかにするために、スクリーン間には衝立が置かれました。

1294 Fig 3 Apparatus a b The dog sits in front of the experimenter on a line between the 2

イヌとイヌ以外 image by Visual discrimination of species in dogs (Canis familiaris)

犬の画像は、被毛の色、サイズ、頭の形、耳の位置など、見た目に異なるものが揃えられて提示されました。一方、イヌ以外として人間、猫、羊、アレチネズミ、ウシ、うさぎ、爬虫類、鳥など幅広い範囲の生き物の画像が提示されました。

1294 Fig 2 Examples of stimuli used a Dog heads displaying the variety of dog breeds shape

実験のセッティング image by Visual discrimination of species in dogs (Canis familiaris)

犬たちは「選択の練習」を経て、実際のテストに進みました。練習では犬の画像を選択するとオヤツがもらえることを学習します。「正しい方(犬の画像)に歩み寄ることができたらオヤツがもらえる」ということを繰り返し覚え、12回の練習のうち連続で10回できたら実際のテストを受けることになったのです。

結果、実験協力犬の全てが「正しい方(犬の画像)」を選択できました。視覚情報のみで画像が犬であると判定できたのです。実際のテストでは、練習セッションには登場しなかった画像が登場したり、画像の位置が逆になるなど工夫が凝らされていましたが、それでも犬たちはイヌ画像とそれ以外とを区別することができました。この結果を受けて研究者たちは「イヌは、表現特性が大きく異なるにも関わらず、頭部の視覚画像のみに基づいて種を区別する能力がある」と結論づけています[1]


ご存知のとおり犬には様々な品種があり、サイズ、体型、毛のタイプ、色などが大きく異なります。顔の形だけとっても、グレイハウンドのように面長の犬もいれば、パグのような鼻ぺちゃ犬もいます。にも関わらず犬たちは、個体の見た目の違いに関わらず、これは「イヌグループに属する」という認識をすることができるようです。つまり、犬は見て得られる情報を区別し分類して、「イヌ」という概念を形成できる能力を有していると言うことができます。

案外と高い認知能力を持っている、我らがワンコたち。小さな頭の中では、一般化もしっかり行うことができているようです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Autier-Dérian, D., Deputte, B. L., Chalvet-Monfray, K., Coulon, M., & Mounier, L. (2013). Visual discrimination of species in dogs (Canis familiaris). Animal cognition, 16(4), 637-651.

Featured image credit shamon.adam / Flickr

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