ドッグショーではオス犬が有利!? チャンピオン犬には雄が多い(研究)
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シドニー大学の研究によれば、ドッグショーでチャンピオンの称号を獲得する犬の62.8%はオスだそう。ドッグショーのリングにおいては、オス犬の方が優位にあるようです。
人間社会に置いては、女性が不利益を被ることは残念ながら少なくありません。女性は平均して給与が少なく、昇進が遅く、名誉ある賞を得ることも困難です。
驚くことに「女性が不利」という状況は、犬の世界にも当てはまるようなのです。シドニー大学の研究者が行った研究によれば、ドッグショーで勝ち進む犬はオスの方が多いのだといいます。
研究の内容に迫る前に、まずは「ドッグショーとはなんぞや」「勝ち進むには何が必要なのか」というところをみてみたいと思います。
一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)によれば、ドッグショーは「純粋犬種の見本展示会のようなもので、出陳犬が各犬種に定められた理想像(スタンダード)にどれほど近いかを審査する品評会」です。ショーで評価されるのは見た目の美しさ…ではなく、犬種標準に合った良質な純血種の犬をブリードする能力です。ケネルクラブは「純粋犬種を守り、後世に伝えていくこと」を使命としています。よってショーの目的は”美犬”を選ぶことではなく、標準化された理想の姿を示すことにあるといえます。
犬種はそれぞれ記述されたスタンダード(犬種標準)が定められており、これに基づき審査が行われます。審査のポイントは、(1) タイプ(犬種ごとの特色)、(2)クオリティー(犬質の充実度や洗練度)、(3)サウンドネス(精神的・肉体的な健全性)、(4)バランス(全体の調和)、(5)コンディション(健康状態、精神状態)、(6)キャラクター(魅力、マナー)の6つで、他の犬との比較するのではなく、その犬がどれだけ犬種標準に近いのかが審査されるのです。
つまり、品評会を勝ち抜くためには、しつけやトレーニングが入っていて、心身が健康で見栄えもよく、どんなところでも落ち着いて行動できるように準備できていなければなりません。生半可な準備では太刀打ちできない代物なのです。
今回の研究では、2015年から2016年に開催された18のドッグショーに参加した12犬種1,080匹のデータの分析が行われました。18のドッグショーで与えられた137のベストオブブリード(BOB)について、性別とショーでの成功との関連性が調査されたのです。
結果、参加した犬の性別はオスとメスでほぼ同数出会ったにもかかわらず、オス犬の方がBOBを多く獲得していることがわかったのです。137タイトルのうち86(62.8%)がオス犬、51匹(37.2%)が雌犬でした。
本研究では、オス犬が有利である理由については触れられていません。研究者は「ジャッジがオス犬をより魅力的だと考えている」と、ジャッジによる偏った見方が影響する可能性を示唆していますが、これには根拠がありません。
心理学者で犬の研究者でもあるブリティッシュコロンビア大学のスタンレー・コレン博士は、オスの優位性の理由を以下のように推察しています[2]。
- 犬種標準がオス犬を使って記述された
- オス犬はやや大きめで活発なので、ショーリングで際立つ
- メス犬は年に2回のヒートで被毛が抜けるため、タイミングによっては見栄えでオス犬に劣る
今回の研究結果は、意図的な差別を意味するものではありませんし、メス犬がオス犬より劣ることを意味するものではありません。また今回の研究はオーストラリアのショーのみを対象にしています。しかし、メス犬はオス犬と身体のつくりや働きが違うことは事実であり、これが影響して名誉な賞を取りにくいということもあることなのかもしれません。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Wilson, B., Kasbarian, A., Dhand, N., & McGreevy, P. (2018). Battle of the Sexes in Best of Breed: Sex Influences Dogs’ Success in the Show Ring. Animals, 8(12), 240.
[2] Sex Influences a Dog’s Likelihood of Winning in Dog Shows | Psychology Today
Featured image credit2013 Westminster Kennel Club Dog Show – Petful