孤独な犬は耳が冷たい!?〜犬のストレスをサーモグラフィで計測

サイエンス・リサーチ
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ストレスを感じている犬の身体には、どのような変化が起きているのでしょうか。

英国リンカーン大学の研究グループは、孤立ストレスと犬の耳の温度低下が関係していることを明らかにしました。

ストレスによる生理反応

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image by Igor Barin / Shutterstock

哺乳類はストレスを受けると様々な生理反応が生じます。例えば身体的、心理的ストレスがあると、多くの動物は心拍数や体温を上昇させ、身体機能を向上させることはよく知られています。

ストレス反応の計測の方法は様々にありますが、脳波計などの使用は計測自体がストレスを与えるというマイナス点があります。赤外線サーモグラフィ(IRT)は、被験者から離れた位置で皮膚温度の測定が可能であるため、人の心理状態の評価などに使用されてきました。

これを犬の反応にも使用してみようというのが本研究の目的です。研究は、犬のストレスなどへの感情反応を評価する際のIRTの有用性を評価する目的で行われました。

サーモグラフィカメラで撮影すると、撮影範囲にある物体は、温度分布によって異なる色調で表現されます。体表温度だけでなく直腸温も捉えることができるため、炎症状態や感染の検出も可能と言われており、家畜伝染病や痛みの早期発見も期待されています。

孤独な犬の耳は冷たい

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image by James Kirkikis / Shutterstock

さて、実験に話を戻しましょう。本実験を行ったのは、英国リンカーン大学の研究グループ(The Animal Behaviour, Cognition and Welfare Group at the University of Lincoln)のリーマー博士ら。犬の耳に着目し、環境かららの刺激に耳に血流パターンがどう変化するかを確認しようとしました。

協力したのはロットワイラーのカドル、ミックスのレウベンの他、マイロ、リリー、オルガ、クロエの6匹。他にも複数の協力犬がいましたが、「耳の毛が緻密にフサフサしている、あるいは不均一にフサフサしている」などの理由で研究には貢献できませんでした(フサフサ失格)。

犬たちはそれぞれ簡単な分離実験(飼い主と2分間別離した後に再会する)に参加し、その体温が部屋の角に設置されたサーモグラフィーカメラにより撮影されました。

結果、別離の間は犬の耳の温度が低くなること、そして飼い主との再会を果たしたときは高くなることがわかりました。研究者らはこの結果が、孤立ストレスは耳の温度低下に関連する可能性を示唆しているとし、「(耳の毛がフサフサしているような一部の犬には適用できないが)遠距離からの撮影が可能なサーモグラフィーカメラは、非侵襲的ストレス評価において有望な技術である」としています。


残念ながらサーモグラフィによる測定は、体のどこの部位でも有効に働く訳ではありません。

本研究に先立って行われたイタリアの研究では、測定の対象を目としましたが、この場合ポジティブな反応の時もネガティブな反応の時も、どちらも温度が高くなるという現象が見られたそうです。耳は如実に温度の差が出るのかもしれませんね。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Riemer, S., Assis, L., Pike, T. W., & Mills, D. S. (2016). Dynamic changes in ear temperature in relation to separation distress in dogs. Physiology & behavior, 167, 86-91.
[2] Travain, T., Colombo, E. S., Grandi, L. C., Heinzl, E., Pelosi, A., Previde, E. P., & Valsecchi, P. (2016). How good is this food? A study on dogs’ emotional responses to a potentially pleasant event using infrared thermography. Physiology & behavior, 159, 80-87.
[3] Hot Dogs Offer Window into Canine Emotions – Scientific American Blog Network

Featured image credit Halfpoint / Shutterstock

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