犬は人間の性別がわかるのでしょうか？わかるのであれば、男性と女性とでは、異なった対応をするのでしょうか？
犬は人間の性別がわかる
犬は、人間を性別がわかるのでしょうか？この問いに対する答えはどうやら「イエス！」。犬は人間の性別の違いをしっかりわかっているようです。2014年に発表された論文[1]には「私たちの観察したところによると、犬は視覚/嗅覚の両方、および聴覚に基づき人間の性別を区別できる」とあります。これは「犬は男性に負の反応を示す」とか「男性の方が噛まれることが多い」といった先行研究の結果を支持する内容になっています。
とはいえ、犬の性別と人間の性別の”相性”や、犬の行動に与える影響については、それほどわかっていません。女性にデレデレするオス犬もいれば、男性と一緒にいる方がリラックスするオス犬もいます。性別の好みは確かにありそうですが、その傾向は一口で言うのは難しそうです。
オス犬は、女性の飼い主を守ろうとする傾向があるという説があります。妊娠中の飼い主に対しては、その傾向が強くなるというのです。ホルモンの分泌が変わってくる時期は、オス犬の騎士道精神に火がつくのかもしれません…。が、科学的な証明はありません。
不安な犬は神経症の男性と頻繁に接触する
さてここに、『人間のパートナーに対する好みに影響を及ぼす関係因子』なる論文があります。2010年に発表されたこの論文[2]には、不安を抱くオス犬は、神経症傾向ありと分類された男性と頻繁に接触する傾向が示されています。
実験は、男性10人と女性12人、および彼らの飼い犬（オス）が参加し、それぞれの相互作用を観察する形で行われました。調査により”神経症”と分類された男性飼い主と、同じく”神経症”と分類されたオス犬のペアは、実験においてもっとも頻繁に接触していたそうです。論文には、神経症同士がお互いのニーズを感知しているように見えること、そしてお互いに磁石のようにくっつく様子が描かれています。
この結果を見ると、「オスは男性が好き」と性別でのつながりとして解釈したくなりますが、研究者によれば「犬が所有者に近づいた時間と所有者の性別との間に関係はみられなかった」とのこと。曰く、犬を引き付けたのは性別ではなく飼い主の性格の可能性の方が大きいのだそう。自信に乏しく、不安な様子で、声に力がない男性飼い主は、「犬を支持者とみなし、頻繁に犬との交流を深め、犬との空間的な親近性が強」く、それが犬を惹きつけるようだといいます。
論文の筆頭著者であるWedl氏は、「飼い主の性別に対する犬の感受性は、性別がはっきりと異なる社会的役割を果たす先祖のオオカミから受け継がれたものかもしれない」と推測しています（実験などでは示されていない）。
どうやら犬は、人間の性別はわかるけど、性別によって人間を区別している訳ではなさそうです。結局のところ、個人として犬とどう接しているかが、犬の行動（または好き嫌い）を決めているといえそうです。
楽しい人、優しい人、たくさん構ってくれる人、そしてもちろんオヤツをくれる人。犬は男性でも女性でも、自分によくしてくれる人が大好きだということです。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Ratcliffe, V. F., McComb, K., & Reby, D. (2014). Cross-modal discrimination of human gender by domestic dogs. Animal Behaviour, 91, 127-135.
[2] Wedl, M., Schöberl, I., Bauer, B., Day, J., & Kotrschal, K. (2010). Relational factors affecting dog social attraction to human partners. Interaction Studies, 11(3), 482-503.
[3] Do Dogs Prefer Men Over Women? | Dog-Owner Relationship
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