メス犬と育つ子は喘息になるリスクが低い(研究)

サイエンス・リサーチ
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犬と一緒に育った子供は、とくにメス犬と育った子供は、喘息になるリスクが低くなるとする研究が発表されました。

一方で、いわゆる”アレルギー持ちに優しい品種”と喘息リスクが低いこととの間のには関連性が見出せないことも明らかになりました。


2018年11月に発表された論文は、スウェーデンのKarolinska InstitutetとUppsala Universityの研究者らによるもので、2001年から2004年にスウェーデンで生まれた全ての子供(23,585人)の登録データを調査したものです。

小児喘息と犬に関するこれまでの研究では、幼児期の犬への曝露が喘息発生リスクを減少させることがわかっていました。犬がいる家の子供は、免疫系や呼吸器上皮を調節する可能性のあるエンドトキシンなどの微生物に晒されること、また屋外ですごす時間が長いなどが影響していると考えられています。

ただし、犬の存在以外の要因が作用している可能性があるうえ、品種と性別などの違いによる影響するなどは、あまりよくわかっていません。

また、最近では脱毛しにくい犬を”アレルギー持ちに優しい品種”などと記述されることが多くありますが、これらの犬がアレルゲンを排出しない(しにくい)という科学的証拠はほとんどなく、逸話的に語られてきただけでした。

本研究では、犬の特徴と喘息・アレルギー発生リスクとの関係を調査することが目的とされています。

研究者らは犬を、品種、性別、サイズ、および”低アレルギー性(hypoallergenic)”かどうかで分類し、これらと「6歳までの喘息・アレルギーとの診断」または「6歳までの喘息・アレルギー薬の処方」との関連を分析しました(分析は、親の喘息/アレルギー、地理的位置および兄弟の数など可能性があると考えられる交絡因子について制御された)。

分析によりわかったことには、以下のようなものがありました。

  • 6歳での喘息の有病率は5.4%
  • メス犬のみ飼っている家の子供は、オス飼いの家より喘息リスクが16%低い
  • 2匹以上の犬を飼う家の子供は、1匹の犬しか飼っていない家の子供よりも喘息リスクが21%低い
  • 親が喘息/アレルギーもちだと、”低アレルギー性(hypoallergenic)”を飼うケースが多い
  • ”低アレルギー性(hypoallergenic)”の犬を飼っている家の子供は、アレルギー発症リスクが27%高い
  • ”低アレルギー性(hypoallergenic)”の犬と喘息との関連は見出されなかった

最後から2番目の「”低アレルギー性(hypoallergenic)”の犬を飼っている家の子供は、アレルギー発症リスクが27%高い」という結果は、アレレと気になるところですよね。リスクが高くなるという結果についてCatarina Almqvist Malmros教授(Professor at the Department of Medical Epidemiology and Biostatistics, Karolinska Institutet and Consultant at Astrid Lindgren Children’s Hospital)は「毛皮を着たペットにアレルギーをもつ人のいる家庭は、いわゆる”アレルギー持ちに優しい品種”を選ぶことが多くありますが、実際にはアレルゲンの排出が少ないわけではない、という説明が成り立つのではないか」とコメントしています。

今回の結果についてはさらに「実際の因果関係について何も言えないので、この発見は慎重に扱うべき」と続けています。「バイオマーカーを用いたり微生物叢を考慮に入れたうえでアレルギーのリスクを測定するためには、より多くの研究が必要だ」

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Fall, T., Ekberg, S., Lundholm, C., Fang, F., & Almqvist, C. (2018). Dog characteristics and future risk of asthma in children growing up with dogs. Scientific reports, 8(1), 16899.

Featured image creditHannamaria/ shutterstock

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