犬に警戒心を抱かせる洋服とは〜仲良くしたければストライプはNG?(研究)

サイエンス・リサーチ
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いつもはママパパにべったりなのに、今日はなんだか少しよそよそしいな…。その態度の違い、もしかしたらあなたの着ている洋服のせいかもしれませんよ。

そんなコラムを綴ったのは、犬に関する様々な著作を持つスタンレー・コレン博士(Stanley Coren, Dr.)。1997年に発表された論文を紐解き、『あなたの着ている服が犬の感情に影響するかも!?』というコラムを発表しました。

「毒持ってるよ!美味しくないよ」と告げる警戒色

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え、その服こわい image by bullcitydogs / Flickr

洋服で犬の態度が変わるって、服についた焼肉の匂いが犬たちの感情を逆なでするってこと?という質問が出てきそうですが、それ違う。洋服の柄が犬たちの影響を与えるかも、というお話です。

柄が影響するというと少しびっくりしてしまいますが、ヘビや蛾などを思い浮かべてみると感覚的にもスッと頭に入ってくるのではないでしょうか。毒を持つ生き物の多くは、目にも鮮やかなコントラストの高い色合いの模様である(擬態する)ことが少なくありません。捕食者からの攻撃を避けるために、警告色(aposematism, aposematic coloration)からなる見栄えをしている(あるいは擬態する)ということです。

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蛇が怖いのでカエルの例をひとつ image by Cloudtail the Snow Leopard / Flickr

捕食者が警告色を避ける理由には大きく二つの説があります。一つは遺伝的に警告色の物体を忌避するという説、そしてもう一つが視覚的手がかり(見栄え)と味覚の連合によってまずいものを避けるようになるという説です。後者は、古典的条件付けにる味覚の学習の結果ということで、目立つ色彩を持つことによって視覚的刺激を強め、学習を促進させようという”生き残りの術”というわけですね。

1990年代の後半に、「犬も刺激に反応するのかな?」という問いを立てたのが、Arnold S. Chamove博士。洋服の柄によって犬たちの反応が異なるのかを実験してみたのです。

細い横ストライプにネガティブ反応

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そ、その服、趣味悪っ! image by Larry Vincent / Flickr

Anthrozoös誌に発表された論文(1997)によれば、行われた実験は2回。1回目の協力犬は22匹。若い男性に(1)1cm幅の横ストライプ、(2)1cm幅の縦ストライプ、(3)4cm幅の横ストライプ、(4)幅の太さが異なるストライプ、(5)無地の5パターンの洋服を着せ、犬たちにゆっくりと近づいて囲いの前で8秒静止という動きを繰り返しました。この様子は全てビデオに収められており、分析の結果、最も反応が見られたのが(1)の細い横ストライプで、反応が薄かったのは(5)の無地を着用していたケースでした。

横縞と縦縞(2)は、ともに犬が顕著に反応をしたということで、横縞の方が反応は大きかったものの、その差はわずかだったそうです。犬達には”服従”の態度と、不安で落ち着かない様子が見られたということです。

2回目は、1回目の実験の追試という形で行われています。10匹の保護犬と、15匹の大学のブリーディングセクションにいる犬が協力しました。2回目は女性が(1)1cm幅の横ストライプ、(2)白地に直径1cmの黒い水玉柄、(3)無地という3種のシャツを着用しました。結果は1回目の実験と同様に、犬達は横縞に対しネガティブな反応を見せ、無地シャツにはほとんど反応しなかったそうです。


Chamove博士は論文要約に、「もし、保護施設などで犬の性質を見たいのなら、彼らの嫌う柄の服は着ない方がいい」と記述しています。実際に犬達がストライプを恐れるのかはわかりませんが、無地の洋服をお持ちならそちらを選択した方が無難かもしれませんね。

ところで、私自身はストライプの服をほとんど持っていないのでテストができないのですが、服によって態度が違みたいだよ!とか、ストライプにネガティブ反応見られたよ!なんていう情報をお持ちのかたがいらしたら、是非hello@woofoo.jpまでお知らせください。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Chamove, A. S. (1997). Dogs judge books by their covers. Anthrozoös, 10(1), 50-52.

Featured image credit Aneta Jungerova / Shutterstock

犬の「ごめんなさい」の姿勢は飼い主の態度に反応しているだけ? (英研究) | the WOOF

ワンコがイタズラをしでかし、声を荒げて叱ると、下からすくうような眼差しでこちらを見上げる顔が、「ごめんなさい。もうしません」と言っているようで、つい微笑んでしまうことがありませんか? しかし最近発表された研究では、犬にもある程度の感情があるにせよ、この「後ろめたそう」で「恥じている」と感じるのは、 飼い主が反省していると誤解しているだけである と示唆しています。

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