犬の性格は年齢によって変わる そして飼い主の特性に似ることがある(研究)

サイエンス・リサーチ
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ミシガン州立大学の研究者は、犬の性格(パーソナリティ)も人間のように、時間とともに変化する可能性があると発表しました。

論文の筆頭著者であるWilliam Chopik教授は、「人生で大きな変化を経験すると、その人の人格特性が変化することがある。我々はこの変化が犬にも起こることを発見しました」とコメントしています。

犬の性格も変化する

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image by Bell nipon / Shutterstock

『三つ子の魂百まで』とは、「幼い頃の性格は、年をとっても変わらないということ[3]」を意味することば。しかし実際のところ人のパーソナリティは、変わるとも変わらないとも言えないようです。

2018年の発表された研究[4]では、50年にわたり収集された40万人以上のパーソナリティデータのリポジトリを分析し、「時間が経過しても変わらない人格要素もあれば、変化する要素もある。パーソナリティは、比較的安定していると同時に変化をするものでもあり、変化の程度は各人によって異なる」という結果が示されています。

犬にも今回ご紹介するのは、犬の”パーソナリティ”に関する研究です。現在までに犬の”パーソナリティ”についての研究は少なく、時間の経過にともなう変化についての調査はほとんどありませんでした。研究を行ったのはミシガン州立大学の心理学部教授のWilliam Chopik。50犬種、1,681匹の飼い犬について調査を行いました。

さて、研究の内容に触れる前に言葉の定義について整理しておきます。今回調査されたのは、パーソナリティ(personality)は心理学辞典では「人の、広い意味での行動に時間的・空間的一貫性を与えているもの」と定義されています。似た意味をもつ「気質」は遺伝的な影響の大きいものを想定する言葉で、「人格」は良い悪いの価値判断を含む意味合いが強い言葉とされています。

この記事では対象が”パーソン”ではなく犬ですので、personalityおよびpersonality traitsの訳語に「性格」という言葉を使っていきます。

犬の性格はむしろ「大きく変化する」

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image by Benedicto de Jesus / Flickr

前段が長くなりましたが、結論からいえば性格変化は犬にも起こるのだそう。しかも、「驚くほど大きく変わる」とChopik教授は語っています。「当初は、犬の性格は安定していると予想していました。人間のライフスタイルにみられるような大きな変化がないからです。しかし、実際には(犬の性格の)変化はとても大きくみられました」

研究は、生後数週間から15歳の犬の飼い主からのアンケートの回答を分析する形で行われました。犬の性格の評価、犬の行動歴、飼い主自身の性格などについての回答を分析した結果、(1)年齢と性格、(2)人間と犬の性格の類似性、(3)犬の性格が飼い主との関係の質に与える影響という3つの項目について相関関係がみつかったそうです。

以下は、研究で示されたことの要約です。

  • 年齢を重ねた犬は若い犬に比べて、興奮しにくく落ち着いている(less active/excitable)
  • 人に対する攻撃性、訓練に対する反応、および他の動物に対する攻撃性は6〜8歳の犬でもっとも高い
  • 犬のパーソナリティは、健康状態、噛みつき歴、および人間との関係に関連していた
  • 年を重ねた犬は訓練が困難。”スイートスポット”は、興奮しやすい時期は過ぎたが性格が固まりきっていない6歳前後
  • 時間がたっても変わることは滅多にないという特徴は「恐怖と不安」
  • 犬は飼い主の特定の性格特性を共有する。外交的な飼い主は自分の犬を「興奮しやすい」「アクティブ」と評価し、否定的感情の強い飼い主は犬を「ビクビクしている」「訓練に対する反応が悪い」と評価。自身を「前向き(agreeable)」とした飼い主は、犬を「恐れや攻撃性が低い」と評価した
  • 犬との関係について「幸せを感じた」と答えた飼い主は、犬を「アクティブ」「興奮しやすい」「トレーニングに反応する」と評価した
  • 服従訓練クラスに参加することは、前向きな性格特性と関連

氏も育ちも性格形成に影響する

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Featured image creditJob Narinnate/ Flickr

この結果は、わたしたちが性格ととらえるものは犬の年齢によって大きく変化するものであること、および飼い主のパーソナリティや飼育環境が犬の性格に影響する可能性を示すものです。

古典的な心理学では「nature versus nurture(氏か育ちか)」という議論がされてきました。議論の中では、nature(気質)とnurture(養育)は対立構造ではなく、どちらも人をかたちづくるものだという考えがあります。犬についても変わらない点もあれば、環境により変わっていく点もあるのかもしれません。

Chopik教授は今後、犬の家庭環境が行動に及ぼす影響について焦点をあてた研究をすすめるとしています。犬の性格に変化がある可能性がわかったので、次は「なぜその行動をするのか」、「なぜ行動を変えたのか」をひもといていきたいと述べています。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Chopik, W. J., & Weaver, J. R. (2019). Old dog, new tricks: Age differences in dog personality traits, associations with human personality traits, and links to important outcomes. Journal of Research in Personality.
[2] Good dog? Bad dog? Their personalities can change: Like humans, dogs’ personalities likely change over time — ScienceDaily
[3] 故事ことわざ辞典
[4] Damian, R. I., Spengler, M., Sutu, A., & Roberts, B. W. (2018). Sixteen going on sixty-six: A longitudinal study of personality stability and change across 50 years. Journal of personality and social psychology.

Featured image creditSerge Velychko/ shutterstock

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