「出かける前や帰宅後すぐは、犬を無視しましょう」とアドバイスされることがあります。「家族がいないことは大した問題ではない」ということを教えることが目的で、分離不安を防ぐためとも説明されます。
しかし、新たに発表された研究は、犬を無視することがさようならを告げるうえでの理想的な方法ではないことを示唆しています。やさしいナデナデ(petting)が犬の別離ストレスを和らげる効果があるというのです。
論文は、Journal of Veterinary Behaviorに掲載されました。
研究を行ったのは、イタリア ピサ大学のChiara Mariti博士ら。研究について留意すべきは、これが予備的研究で対象は10匹(飼い主は7人)と極めて小規模であるということ、および分離不安を発症していない家庭犬であったという点です。
結果はすべての犬に適用されるわけではなく、個別の犬の問題は専門家のアドバイスを優先するべきことには注意してくださいね。
10匹を対象とした実験は、以下のように行われました。
- 実施は家ではない中立的な場所で行われた
- 犬のリードは研究者が持っていた
- 10匹全てはリードにつながれた状態で、2つの条件で別れの儀式を行った。2つの条件とは、①飼い主に1分間穏やかにナデナデされる(the gentle petting condition)、②飼い主に無視される(the neutral condition)
- 別れの儀式後、犬は3分間、飼い主の不在を経験する。この間飼い主は、犬から見えない場所に隠れており、研究者は犬のリードを持っていた(この時犬が飼い主の匂いに気づいていた可能性は完全には排除されていない)
研究者らは、飼い主がいない3分間の犬の行動、前後の心拍数、そして不在を経験したあとの唾液中のコルチゾール値を調べました。結果、以下のことがわかりました。
- 10匹の犬のストレスレベルは、それほど高くなかった(唾液中のコルチゾールレベルや犬の行動から判断)
- ①と②の条件のどちらにおいても、犬は飼い主探しに長い時間を費やした(ナデナデ時は84.5秒、無視のときは87.5秒)
- ナデナデ後の飼い主不在では、犬はより長い時間穏やかに行動していた。
- ナデナデ後は無視されたときに比べて、心拍数は低かった
論文は、「本予備研究は、少しの時間飼い主から離れる場合において、離別前の犬の愛撫(petting a dog)が良い効果をもたらす可能性を示唆しています。分離不安に罹患している犬において有効であるかは、さらなる研究が必要です」と結ばれています。
大げさに別れを悲しむ必要はありませんが、無理に完全無視を決めこむ必要もないのかもしれません。穏やかなナデナデがあなたと愛犬を別離の寂しさを和らげてくれるのなら、飼い主としては気持ちが楽になりますよね。
最後にもう一度繰り返しますが、分離不安に苦しんでいる場合はやはり専門家の助けが必要です。獣医師さんに相談してくださいね。
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