遊ぶことは犬との絆を深めるだけでなく、犬の学習にも良い影響をもたらすようです。

イギリスの研究者たちは16匹のラブラドールを対象に実験を行い、トレーニング後のアクテビティが学びを保持する能力の向上に役立つ可能性があると発表しました。論文は”Physiology & Behavior”誌に掲載されています。

遊んだ犬の方が学習が定着していた

感情を揺り動かすような出来事が認知能力を向上させるというのは、感覚的にも納得がいくもの。日常の些細な出来事はすぐに忘れてしまうのに、友達と楽しく過ごした日のことは細部までよく記憶しているというのは、誰にでも覚えのあるところですよね。研究は、ヒト、ヒト以外の霊長類、そしてげっ歯類に見られる[1]この効果が犬にも見られるのかを確認する目的で行われました。

実験を行ったのは英国リンカーン大学の研究所に所属するAffenzeller氏ら。実験協力犬はラブラドール・レトリバーのみ16匹。品種間の違いが結果に影響しないように一品種のみを選んだということです。

まず犬たちには、「選択タスク（＝2つの物体から正しい方を選択する）」を学習してもらいます。床に置かれた見た目と匂いが異なる2つの物体（犬が慣れ親しんではいないもの）から一つを選択するというもので、正しい方を選択した場合はクリックと報酬が、間違った方を選択した時には「間違っている」と声で伝えられました。

「選択タスク」は10回のテストが1セット。連続して2回成功するの率が80％に到達するまでこの行われました。しっかりタスクを理解したところで犬を2つのグループに分けます。一つは30分間「遊び」をするグループ、もう一つは30分休息を取るというグループです。「遊び」とは具体的には、20分の散歩＋リードなしの遊び（犬が好むもの）でした。

そして翌日、再度「選択タスク」の学習を行います。このときの目的は、タスクの再学習にかかる回数をカウントすることにありました。2つのグループの違いは顕著で、「遊び」グループは平均26回、休息グループでは平均43回と、遊んだグループの方が圧倒的な好成績となったのです。

生理学的覚醒が学習の定着に影響か

また、1日目の「遊び」または休息の後には、唾液中のコルチゾールレベル及び心拍数がモニターされ、2グループ間の生理学的覚醒状態が異なることが観察されました。「遊び」グループは心拍数が高く、唾液中コレステロールは遊び後に有意な減少がみられたということです。研究者たちはこれらの結果をもって、「訓練後のアクティビティが犬の訓練成績に影響する可能性がある」としています。

何となく納得できる結果ですし、これまでにも人間を対象とした研究では、覚醒を誘発するホルモンや化学物質が学習・記憶力に肯定的な影響を及ぼし得ることを示すということが様々に示されてきています。ただ、今回の実験が非常に小規模だったこと（一品種16匹）などを考慮すると、訓練後の「遊び」が犬の学習の力を改善できるを結論づけるには尚早で、更なる調査が必要だということはわかります。もしかしたら、訓練前に遊びを入れた方がいいんじゃない？とか、訓練の最中に遊びを取り入れたらどうなの？とか更なる疑問も湧いてきますよね。

訓練は、楽しいかもしれないけど大変なものでもあります。ご褒美として、愛犬が本当に好きな「遊び」を一緒に楽しむというのは、とても素晴らしいことですよね。学習能力もアップするかどうかはさておき、訓練の後に遊ぶというのは、良い選択肢のように思います。

ぜひ、訓練後には楽しい遊びを取り入れてくださいね！

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Affenzeller, N., Palme, R., & Zulch, H. (2017). Playful activity post-learning improves training performance in Labrador Retriever dogs (Canis lupus familiaris). Physiology & Behavior, 168, 62-73.

Featured image credit Eselsmann™ / Flickr

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