犬はみんな賢くイイコですが、飼い主が「ウチの犬は特別!」と思うほどには、特別に賢くはないようです。
エクセター大学の研究者は、300以上の論文をレビューし、イヌ以外の家畜、社会的ハンター、肉食動物とイヌの認知能力を比較し、イヌが他の動物と比較して特別に賢くはないと結論づけました。
論文はLearning&Behavior誌に掲載されています。
イヌと他の動物の認知能力を比べるこのプロジェクトは、本研究の筆頭著者であるステファン・リー名誉教授のかねてからの疑問からスタートしました。
かねてからの疑問とは、「イヌの認知能力は実際より高く評価されているのではないか?」というものです。Journal Animal Cognitionのエディターをしていたリー教授は、投稿論文がイヌの認知に関係するものに集中していることに気がつきました。
キジやマングース、ハエなどの知力に関する論文ももちろん存在していましたが、大半はイヌに関するものだったそうです。「エディターとして働き、すべての研究に目をとおす中で、私たちがイヌの知性について過大評価をしているのではないかという感覚をもつに至りました」
イヌは、1800年代には認知に関する研究の対象となっていましたが、20世紀に入ると霊長類の研究が主流となり、長く注目されない時代を過ごしていました。1990年代、科学者たちは再びイヌへと回帰し、多くの研究が発表されたのです。イヌに関する研究が多く発表される中で、「イヌは特別に賢い」と褒めそやす風潮ができあがりつつあるのではないかと思ったのだそう。「イヌはしばしばチンパンジーと比較され、イヌが勝つたびに”非凡な才能がある”とする声があがっていきました」
そこでリー教授はこの疑念を明らかにするためブリッタ・オストハウス博士と協力し、イヌと他の動物種の比較を行ったのです。
比較対象となったのは、イヌと同じ特徴をもっている動物たちです。論文によれば、イヌは肉食動物、社会的ハンター(群れで狩をし食べ物を見つける)、家畜という3つのカテゴリーに属しています。これらの1つまたは複数に属する動物が、比較の対象となりました。すなわち、先祖とみられる近親動物であるオオカミ、肉食動物で社会的ハンターの野生のイヌやハイエナ、肉食動物で家畜の猫、その他イルカやチンパンジー、馬や鳩などなどです。
集められた論文は300超。感覚刺激から情報を得る能力や社会的知能、問題解決などの多岐にわたる認知能力についてイヌの研究とを比較したところ、リー教授らは、「イヌが他の動物と比べて、際立って賢いと言うことはない」という結論に達しました。カテゴリごとに他の動物種と比較したとき、イヌと同等か上回る結果を出す動物もいたからです。
オストハウス博士はこう語っています。「イヌは特別な存在ですが、並外れてはいません」
論文によれば、すべての動物種には独自の知性があり、それぞれに能力を発揮するところも異なります。たとえばハイエナは群れの仲間が示す手がかりを参考にするのが得意だし、イルカは自己意識の課題でより良い成績をあげています。アライグマは物理的パズルで優れた結果を出し、ブタ、ハト、チンパンジーは何がいつどこで起こったのかを記憶する能力があり、これはイヌの能力を超えています。
イヌは人間を声から認識することができますが、これは猫でもできることです。イルカ、チンパンジー、ジャイアントパンダは、イヌと同様にツールを使用することができます。
特別賢くはないにもかかわらず、イヌが評価されてきた理由についてオストハウス博士は「私たちは犬が非常に賢いと思っており、犬が高く評価されることが大好きだから」と分析しています。認知能力に関してゲタをはかされているというのです。
しかし、それでもイヌが特別である可能性は残されています。イヌは、本研究で使用された「肉食動物、社会的ハンター、家畜」という3つのカテゴリのすべてに属していますが、そんな動物は他にはいないのだそう。オストハウス博士によれば「イヌという種は、3つのカテゴリのど真ん中に位置する唯一の種。そうした意味において彼らは特別」。能力の組み合わせが、イヌをユニークな存在なものにしている可能性はあるのかもしれませんね。
犬は確かに賢いのですが、その能力を過大評価し期待しすぎるのは良くないそうです。研究者は、「犬は犬。彼らのニーズや能力を正しく見積もったうえで、世話をしなければならない」と言います。「彼らには限界があることをわかってあげなければなりません。期待しすぎるのは良くありません」
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Lea, S. E., & Osthaus, B. (2018). In what sense are dogs special? Canine cognition in comparative context. Learning & behavior, 1-29.
[2] Your Dog Is Probably Dumber Than You Think, a New Study Says | Time
Featured image credityan/ unsplash
悪い犬は早死にする〜「望ましくない行動」は犬を死に近づける(研究) | the WOOF イヌメディア
攻撃性、逃走、喧嘩、過剰な興奮または吠えなどの「望ましくない行動」がある犬は、より若い年齢で死ぬ可能性が高いことが、研究により明らかになりました。 これらの行動は、飼い主による不十分なトレーニングや、治療されていない病気などに起因する可能性があり、犬の訓練と飼い主教育により救うことができると研究者らは主張しています。