人は人間より犬に心を寄せている…てな話は、愛犬家にとっては今更感の強いものかもしれませんが。
人間は、苦しんでいる人より、苦しんでいる犬に共感しやすいことが新しい研究により示されました。
人は犬を家族とみなし感情移入する
研究[1]を行ったのは、ノーザン大学Northeastern Universityのレビン教授(Prof. Jack Levin)およびアルーク教授(Prof. Arnold Arluke)。研究者らは、240名の学生に対して4つの偽の新聞記事を見せ、それに対する反応を分析しました。
新聞記事の内容は「攻撃の数分後に到着した警察官は、無意識となった被害者を発見した。被害者の足は折れており、複数の裂傷も見られた」というもの。被害者によるバージョン違いが用意され、1歳の乳児、30歳の男性、子犬、成犬を被害者とした4つの偽記事が作成されました。
記事を読んだ学生には、質問紙への記述が求められました。感情および共感性を測定する標準的な質問に回答したのです。これらを分析した結果、乳児と子犬、そして成犬に対しては同レベルの共感がみられましたが、成人に対しては感情移入のレベルが明らかに劣っていたことがわかりました。
研究者らの実験前の仮定は、「(人の共感度合いは)動物種別ではなく年齢によって決定される犠牲者の脆弱性によって決定される」というものでした。すなわち、「人間か犬か」などの”動物種”によってではなく、「自分を守れない赤ちゃんか、強い大人か」という”弱さ”で決められるものと仮定していたのです。しかし、脆弱性で共感度合いに違いがあらわれたのは人間だけで、犬については年齢は関係なかったのです。
結果について研究者らは「被験者は、犬を動物として見ているのではなく、”毛皮の赤ちゃん”あるいは人間の子供と同等の家族とみている」と結論づけています。
犬と人間は互いに影響しあう
人が犬に対してより共感しやすい傾向があることを示した研究はこれだけではありません。2年前に医療研究慈善団体ハリソン基金が行った実験では、犬と人間のどちらを助けるための寄付が集まりやすいかをテストしています。基金は2種類のポスターを作って募金を呼びかけました。片方は少年のハリソン、もう片方は犬のハリソンで、結果は…。犬のハリソンへの募金が少年ハリソンへの募金を大きく上回ったのです[2]。
2015年の麻布大学などの研究では、犬とアイコンタクトをした飼い主には”愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンの上昇が起きると示されています。また、最近発表された研究では、犬は私たちが見ているときに表情が豊かになること、そして”表情をつくっている”可能性があることが示されました。
犬は人間が考えるより、私たちの心や体に強く入り込んでいるようです。飼いならされているのは実は、私たち人間の方なのかもしれませんね。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] J. Levin, A. Arluke, L. Irvine (2017), Are People More Disturbed by Dog or Human Suffering? Influence of Victim’s Species and Age, Society & Animals
[2] Why do people donate to dog charities when children are dying? – Telegraph
Featured image credit Grigorita Ko / Shutterstock
人間の注目が、犬をより表情豊かにする(研究) | the WOOF イヌメディア
犬は人間が見ているときに表情豊かになることが、ポーツマス大学の研究により示されました。犬たちは人の視線を意識し、時には意図的に表情を変えることもあるとのことです。 人間と同じく、哺乳類のほとんどには表情があります。