生の鶏肉を犬に与えることは、思った以上に危険なのかもしれません。
メルボルン大学の研究者らは、犬に生の鶏肉(特に首の部分)を食べさせることが、麻痺の発症につながる可能性があると発表しました。
そもそも、生の鶏肉はサルモネラ菌や他の細菌に汚染されているリスクが高いため、愛犬に与えない方が良いものです。これらは犬たちを下痢や嘔吐のリスクにさらすものですが、どうやら他にもリスクはあるようなのです。
メルボルン大学の研究チームは、生の鶏肉が急性多発性根神経炎の発症リスクを高める危険因子であることを発見しました[1]。生の鶏肉を食べることにより高まるリスクは、70倍以上とのことです。
犬の急性多発性根神経炎(acute canine polyradiculoneuritis)は、 人間にみられるギラン・バレー症候群のイヌ版で、麻痺の症状がみられる病気です。発症自体は非常に珍しいものですが、麻痺が胸に起きた場合は死に至ることもある深刻な病です。
犬でこの病気の発生は珍しく、原因はアライグマの唾液への曝露やワクチンへの反応、免疫性疾患、あるいは感染などが取り沙汰されていましたが、はっきりとはわかっていません[2]。
病気が発症すると、まず後脚に麻痺が現れ、前脚部、頸部、頭部、顔面に影響が広がることもあります。治療なしで回復する犬もいれば、回復に6ヶ月以上かかる犬もいるし、前述のとおり死に至ることもあるそうです。
研究チームは今回、「未調理の鶏肉がカンピロバクターの源であり、これが急性多発性根神経炎のトリガーとなる」との仮説を立て、症状のある47匹と症状のない27匹を調査しました。身体検査や症状について調べると共に、犬の行動や食生活について飼い主へのインタビュー調査、ならびに便の調査を行いました。
結果、症状のある犬の便に含まれるカンピロバクター属菌は、症状のない犬の便に比べ、9.4倍高多いことがわかりました。
論文の筆頭著者であるLorena Martinez-Anton博士は、「カンピロバクター属菌は、犬の免疫不全や麻痺の原因である可能性が高い」と述べています。
人の場合、カンピロバクターとギラン・バレー症候群との関連は研究されており、感染による麻痺の発生も報告されています。カンピロバクターには神経細胞の一部と構造が類似した分子を含んでおり、これが免疫系を混乱させ麻痺をもたらすとも言われています[3]。
なお、研究では、小型犬と急性多発性根神経炎の発症にも関連がみられています。しかし、小型犬だから発症リスクが高いという訳ではなく、食べた部位が問題だろうと研究者は推測しています。小さな犬に与えやすい首の部位(せせり)は、リスクが高い可能性があるというのです。
そもそも鶏肉を生で与える飼い主は多くないでしょうし、しかも首の肉(せせり)という希少部位を与えるというのは考え難いのですが、とにもかくにも鶏肉を与える場合はしっかり調理をしましょうということです。研究者は「生の肉よりドッグフードを選ぶよう勧めます」とコメントしています。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Martinez‐Anton, L., Marenda, M., Firestone, S. M., Bushell, R. N., Child, G., Hamilton, A. I., … & Le Chevoir, M. A. R. (2018). Investigation of the Role of Campylobacter Infection in Suspected Acute Polyradiculoneuritis in Dogs. Journal of veterinary internal medicine.
[3] Acute Canine Polyradiculoneuritis in Dogs – Symptoms, Causes, Diagnosis, Treatment, Recovery, Management, Cost
[3] Dog paralysis condition linked to eating chicken necks
Featured image credit Michael Pettigrew / Shutterstock
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