犬は赤と緑の区別に苦労する〜猫型色覚検査で実際にテスト

サイエンス・リサーチ
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もしあなたが、フリスビーやボールを買おうとしているのなら、赤は避けたほうが良いでしょう。芝生に落ちたその赤のオモチャを、犬は見つけられないかもしれません。
イタリアの研究者らは犬に色覚検査を行い、彼らが赤緑色盲であると結論づけました。

犬は赤緑色盲である


image by toby / Flickr

研究を行ったのはイタリア バリ大学(the University of Bari)のSiniscalchi教授らの研究チーム。16匹の犬について、独自に開発した色覚テストを用いて検査を行いました。

かつては犬の目は、白と黒しか識別できないと考えられていました。犬の視細胞の光受容体細胞の研究が進んでいなかったためです。しかし1989年、犬の網膜には黄色と青色に感受性のある2種類の錐体(cone)あることが発見され、犬が黄色、青色およびそれらを組み合わせた色を識別できることが示されました。

それでも犬の目の色の認識は、私たちのそれとは異なります。人間は3種類の錐体をもち、それぞれ赤、緑、青の波長に敏感です。科学者たちは犬の視力に関する事実を総合し、犬は赤緑色盲ではないかと推測していました。

赤緑色盲とは赤や緑の区別に困難が生じる状態で、日本人では男性の約5%、女性の0.2%が先天赤緑色覚異常とされています[2]

今回の研究は、「犬は赤緑色盲だろう」という推測を検証するために、実際に犬に色覚検査を受けてもらったというものです。

犬が受けた色覚検査とは、どのようなものなのでしょうか?

猫アニメーションの犬用色覚テスト


image by Ishihara plate no. 22 (Ishihara 38 plates for colour vision deficiency (CVD) test) and single frames used to edit, respectively, RG-Cat-2, RG-Cat-6 and B-Cat animations.

石原式の色覚テスト(を、みなさん覚えていらっしゃるでしょうか。様々なサイズの丸や斑点などで構成された数字や記号が、緑や青、黄色や橙色などの背景に描かれている小さな本(またはカード。石原式色覚異常検査表)を使ったテストのことです。色覚に問題のない人なら、数字や記号が浮かび上がって見えますが、赤緑色盲には数字や記号が背景と区別することができません。

人間のバージョンでは緑色に赤の点で作られた数字や記号が描かれていますが、犬のテストではこれが走る猫のアニメーションに変更されました。

オーストラリアン・シェパード3匹、ブリタニースパニエル1匹、ワイマラナー1匹、ラブラドール・レトリバー1匹、ミックス10匹の計16匹が、この”猫模様の石原式”テストを受け他のです。

結果、犬たちが赤と緑の区別に苦労していることが判明しました。緑斑点の背景に明るい赤の猫が示されたときは、犬はすぐに反応を見せました。しかし、色の違いが明確でないものについては、ほとんどの犬は猫に気づくことはありませんでした[3]

研究者らはこの結果を、実際の生活や訓練に活かすことを願っているといいます。犬の安全に配慮しなければならない場所なら赤と緑の使用を避けるとか、緑の背景を使って訓練する場合は、訓練士は赤い服を着ないとか、そういったことのようです。「公園の芝生で、犬に上手にフリスビーやボールをキャッチさせたいなら、赤いものより青を選んだほうが良いでしょう」


今回の研究は、実際に犬に検査を受けさせたところにあります。ユニークなテストツールを開発するのも、動物を対象にした研究の醍醐味なのかもしれませんね。Siniscalchi教授らのチームは今後、さらにたくさんの犬をテストして、結果を確認したいと語っています

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Siniscalchi, M., d’Ingeo, S., Fornelli, S., & Quaranta, A. (2017). Are dogs red–green colour blind?. Royal Society Open Science, 4(11), 170869.
[2] 色覚異常 – Wikipedia
[3] Yes, Dogs Can See Colors — But Only Some

Featured image credit localpups / Flickr

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