Learning and Behaviorに掲載された新たな研究によれば、犬は他の動物と比べて特別に賢くはないそうです。

エクセター大学の研究者らは、犬とライオン、シール、イルカ、チンパンジーなどの他の動物と比較し、「犬の認知は並外れて素晴らしいわけではない」と結論づけました。

「犬は並外れて優れているわけではない」

心理学者であるStephen LeaとBritta Osthausによって行われた本研究は、犬の知性に関する既出論文300超を分析したもの。すでに9月にアブストラクトが発表されていたもので、このたび全文が公開されました。

全ての犬は賢いが、並外れて優れているわけではない（研究） | the WOOF イヌメディア

分析により研究者らは、犬、オオカミ、ネコ、イルカ、チンパンジー、ハトおよびその他の種について、知覚、身体的、空間的および社会的認知ならびに自己認識を含む犬の知能の様々な側面を分析しました。結果、他の種とくらべて犬の認知能力が特別に優れているわけではないことを発見したのです。

たとえば、連合学習（2つの刺激やイベントについてその関連を学習するプロセス）において犬は、他の種と比べて特別に優れてはいません。犬は優れた嗅覚を持ってはいますが、豚の嗅覚も犬に負けず劣らず優れています（豚の方が優れているという人もいます）。

さらに犬は、人間からの伝達信号を知覚し使用する能力においても抜きん出てはいないようです。犬は人が発するシグナルに敏感だと言われますが、先行研究はこの点についても犬だけが特別なのではなく、バンドウイルカとハイイロアザラシの方が優秀な成績をおさめていることを示しています。

研究では、他の動物も以下の領域で犬と同様の能力を示すことが整理されています；

• 人間の指し示すところをフォローする：ヤギ、ブタ、イルカ、アザラシ、シーライオン
• 匂いでヒトを特定する：ブタ
• 顔でヒトを特定する：羊、ハト、チンパンジー
• 声でヒトを特定する：猫
• 食べ物を得るためにヒモを引っ張る：オオカミ、アライグマ、ハイエナ
• 道具の使用：イルカ、チンパンジー、ジャイアントパンダ、アメリカン・アナグマ、クマ、カワウソ
• 鏡像認知（鏡に映った像を自己像だと認識すること）：チンパンジー、イルカ
• エピソード記憶（イベントの場所、場所、時間を覚えておく能力）：豚、ハト、チンパンジー

研究者らはこの結果について、「犬の認知は並外れてはいない」「犬は犬。彼らのニーズや能力を正しく見積もったうえで、世話をしなければならない」とコメントしています。

犬の飼い主はTwitterで反発「一番賢くないのは科学だ」

…という研究に関する記事を科学誌Scientific Americanがツイートしたところ、犬の飼い主は猛反発。研究は間違っているか、猫によって書かれたものだと主張する人がコメントを寄せています。

「こういうク＊があるから、人が科学を信用しなくなるんだ」とか「科学よ、お前になんか聞いてね〜よ」とかボロクソ。

7百万フォロワンを擁するWeRateDogsは一言、「撤回せよ（take it back）」

猫が書いたという証拠の提出もありました。

辞書サイトDictionary.comも参戦。「”may”という言葉は、可能性を表現するために使用される。例文：Scientific Americanは、『犬は天才ではないかもしれない』という。これはすなわち、犬は天才であるという可能性があることを意味する」

思わぬ形で注目を浴びたこの研究。研究者もScientific Americanも、喜んでいいのか嘆いていいのかわからないところかもしれません。まぁ、もしかしたら本当に、猫が書いたのかもしれないけれど。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Lea, S. E., & Osthaus, B. (2018). In what sense are dogs special? Canine cognition in comparative context. Learning & behavior, 1-29.
[2] Your Dog May Not Be a Genius, after All – Scientific American

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