犬の白内障〜目が白くなったら白内障?どんな病気でどんな治療法があるの?

健康管理
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ワンコの眼をじーっと、よーく見てみてください。少しの陰りもない、澄んだ眼をしていますか?なんだか、薄くもやがかかってきた気がする、もしくは少し白くなってきた気がする、と感じたら要注意です。

昼間は元気に走り回っているけれど、夕方、薄暗くなると動作が少し鈍くなる。もしくは物にぶつかったりする。そんな変化が出始めたら、眼に何らかの異常が起きているかもしれません。

今回は、お馴染みとなってきたアメリカの統合獣医ケアジャーナルから、“Can canine cataracts be dissolved or “unfried”?” をもとに、ワンコの眼の病気、特に白内障についてお話しさせていただきます。

目が白くなったら白内障?

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image by Ares Hsu / Flickr

お年を召して、眼が白くなってたら白内障?と思われるかもしれませんが、白内障以外にも目が白くなる病気はいくつかあります。

眼をしょぼしょぼさせたり、痒がったり、涙が出たりという症状を伴う場合には、角膜炎などの病気かもしれません。年齢増加中のワンコで、ただ眼が白くなってきたという場合は、白内障もしくは核硬化症の病気がまず疑われます。

核硬化症は、眼の水晶体の中心部(核)が加齢により硬くなり、濁ってみえる病気です。この病気は、ゆっくりと進行し、通常は視力に影響を及ぼすことはあまりありませんが、病気がかなり進行してしまうと、視力(特に暗い場所での視力)が低下してしまうことがあります。白内障については、ここから少し詳しくお話ししていきます。

白内障ってどんな病気?

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image by Eric E Castro / Flickr

白内障は、眼球の前方にある水晶体の一部もしくは全体が白濁してしまう病気です。水晶体の機能が低下すると、視力が悪くなったり、完全に見えなくなってしまうこともあります。

白内障と聞くと’老化’を思い浮かべる方が多いかもしれません。白内障は加齢によっても発症しますが、生後から若いうちに発症する先天性白内障若年性白内障、代謝性疾患などに併発する後天性白内障などもあります。

白内障は、トイプードルやミニチュアシュナウザー、ゴールデン・レトリーバー、シベリアンハスキー、ボストンテリア、シルキーテリア、ビション・フリーゼなどの犬種に多くみられます。

老年性白内障と糖尿病性白内障

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image by Mariposa Veterinary Wellness Center in Lenexa, KS / Flickr

今回は、ワンコによくみられる老年性白内障糖尿病性白内障に注目します。

・老年性白内障

白内障は加齢により発症することが多いのですが、どのようにして白内障は起きるのでしょうか?まずは、白内障の病態が発生する水晶体についてお話しします。

水晶体はレンズの役割を果たしており、外界からの光を通すために、いつでも透明でなければなりません。水晶体は、クリスタリンという蛋白質と水分から構成されており、クリスタリンが特別な構造を保つことにより、透明性が維持されています。しかし、紫外線照射や酸化的ストレスなどにより、クリスタリンが変性してしまうと、水晶体は混濁してしまいます。

若く、健康な水晶体には抗酸化物質が存在しており、このような変性を防御することができます。また、水晶体にはシャペロン機能という変性したクリスタリンを正常に戻す機能が備わっています。しかし、加齢により水晶体の抗酸化物質が減少してしまうと、クリスタリンの変性を防止することができなくなり、水晶体は白濁してしまいます。これまでの研究によると、白内障を発症したワンコは、白内障を患っていないワンコに比べ、アスコルビン酸やグルタチオンなど抗酸化作用を持つ物質の水晶体内含有量は少ないことが明らかにされています。

では、いつごろから水晶体の抗酸化物質は減少してしまうのでしょうか?人では、およそ40歳までに水晶体内の抗酸化物質は完全に枯渇してしまうといわれていますが、ワンコでは、約5~6歳(犬種により年齢は若干異なります)に、そのような状態になってしまうのではないかと考えられています

水晶体が白濁してしまうと、レンズとしての役割を果たせなくなり、視力は低下し、進行すると視力を完全に失ってしまうこともあります。

・糖尿病性白内障

最近、ワンコに多くみられる糖尿病。アメリカでは、3頭中1頭のワンコに発生するといわれており、その主要因は肥満です。そして、糖尿病に罹ってしまったワンコの半数以上が糖尿病性白内障を併発してしまうという報告があるのです

では、万が一、我が家のワンコが糖尿病と診断されたら、どうすればよいのでしょうか?獣医師の指示に従い、体重コントロールやエクササイズ、インスリン投与など、糖尿病の治療を行うことは大切です。その他に、糖尿病性白内障の発生を予防もしくは遅延させるために、抗酸化サプリメントの投与やホメオパシー、統合医療(TCVM)、アルドース還元酵素抑制剤が効果的だと考えられています。

アメリカのTherapeutic Vision社により開発されたアルドース還元酵素抑制剤を含む目薬、Kinostatは、ワンコの糖尿病性白内障の進行を遅らせる効果があると実証されていますが、まだ市販はされていません。その他、アルドース還元酵素の活性を抑制することのできるナチュラルサプリメントが紹介されており、アルファリポ酸、ケルセチン、ルチンなどがあります。

また、ワンコの糖尿病性白内障の発生を遅らせる効果があると実証された抗酸化物質ブレンドサプリメントOcu-GLO™がアメリカのAnimal Health Quest社から販売されています。

白内障の治療にはどんなものがあるの?

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image by nathanmac87 / Flickr

眼の水晶体が真っ白になってしまったら、もとに戻すことはできず、手術で除去することしかできません。しかし、白内障を早期に発見して早期に治療すれば、進行を遅らせることは可能です。

早期白内障の一般治療には、点眼薬や内服薬が使用されていますが、ホリスティック治療では、ホメオパシーや統合医療、抗酸化サプリメントなどが効果的といわれています。

■ 白内障の発生や進行を遅延させる抗酸化サプリメント

・ビタミンC

ワンコは、自分たちの体内でビタミンCを作り出すことができます。しかし、加齢により産生量が減ってしまったり、ストレスが多くなってビタミンC必要量が増加することがあります。

サプリメントとしてよく市販されているのは、アスコルビン酸ですが、ワンコのおなかにやさしいのはアスコルビン酸ナトリウムです。ビタミンCは、初めから推奨投与量をあげはじめるとおなかを壊してしまうワンコもいるので、少しづつあげはじめ、2週間くらいで推奨投与量になるようお勧めしています。

・ビタミンE

ビタミンEは脂溶性ビタミンで、体内に蓄積することがあるので過剰に投与しないよう注意が必要です。また、抗凝固剤との併用は禁忌ですし、手術前の投与は避けなくてはなりません。

・セレニウム

セレニウムは抗酸化効果が高いのですが、過剰投与により中毒を起こしてしまうので、投与には注意が必要です。

・ビオフラボノイド(バイオフラボノイド)

ビオフラボノイドは、いろいろな植物に含まれる色素で、抗酸化作用があることが認められています。グレープシードエクストラクトに含まれるプロアントシアニジン、緑茶エクストラクトに含まれるポリフェノール、ウコン(ターメリック)に含まれるクルクミンというポリフェノールは、白内障の進行予防に効果があるといわれています。

・コエンザイムQ10 (ユビキノン)

コエンザイムQ10は、肉類や魚介類など様々な食物に含まれる脂溶性物質で、抗酸化作用や免疫賦活作用など、いろいろな効能を持つビタミン様物質です。特に、加齢に伴う変化に効果があるといわれています。

・アルファリポ酸

アルファリポ酸は細胞内のミトコンドリアに含まれる栄養素で、抗酸化作用の高い物質です。特にワンコの糖尿病性白内障の発生遅延に効果的だといわれています。

■ 白内障用目薬―ネットで購入できるけれどー

日本では、農林水産省の指示通り、しかるべき手続きを行えば、海外から個人輸入した動物医薬品を自らのペットに使用することは違法ではありません。そして、最近では、日本のペットオーナーさんを対象にした、海外の動物医薬品個人輸入サイトをみかけるようになりました。

各ワンコに適切なお薬が正しく使用されていれば問題はないのですが、そうではないこともあるようです。

人の老年性白内障に効果があるといわれているNアセチルカルノシンの目薬が、ワンコの白内障治療薬として販売されているようですが、この薬は進行したワンコの白内障にはあまり効果がないことが明らかにされています。そして、わんこの病態によっては、合併症を起こすことがあり、白内障の手術ができなくなってしまったという報告があります。

このような事態を未然に防ぐため、海外から個人輸入した動物医薬品を使用する際には、まずは動物病院でご相談されることをおすすめします


いつでも元気そうなワンコたち。でも、加齢に伴って体の中では確実に変化が訪れています。5~6歳にはなったけれど、我が家のワンコはまだ大丈夫!と過信せず、まずはお家でできるサプリメントなどのケアから始めてみるのはいかがでしょう?

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 統合獣医ケアジャーナル Can canine cataracts be dissolved or “unfried”? 
[2] 日本白内障学会
[3]Small Animal Internal Medicine. 3th ed. Mosby. 2003
[4] Therapeutic Vision社 KnostatTM
[5] Animal Health Quest社 OcuGLOTM
[6] The Pet Lover’s Guide to Natural Healing For Cats and Dogs
[7] 農林水産省、動物医薬品等輸入手続き
 
Featured image credit David Goehring / Flickr

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