シニア犬によくみられる病気

健康管理
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シニア世代に突入しても、見た目はまだまだ元気なワンコ。

しかし残念ながら、ワンコの体の中では、ひしひしと老いは進んでいます。そして体の老化に伴い、いろいろな病気を発生することがあります。今回は、シニア犬によくみられる病気についてお話しします。

腫瘍(悪性腫瘍と良性腫瘍)

腫瘍には、悪性腫瘍(がん)良性腫瘍があります。私たち同様、ワンコにも、いろいろなタイプの腫瘍が発生します。ワンコの腫瘍については、次回、詳しくお話しさせていただきます。

心臓の病気(特に僧帽弁閉鎖不全症)


image by Andrew Spencer / unsplash

ワンコ、特に小型犬に多くみられる心臓病は僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)です。動物病院で診察を受けるワンコのおよそ10%に心臓病がみられ、そのうち、75%以上は僧帽弁閉鎖不全症だといわれています。

僧帽弁閉鎖不全症は、5~6歳から発生することが多く、発生率は年齢と共に増加していきます。僧帽弁閉鎖不全症の発生率は、6歳のワンコでは約10%、12歳では60%という報告があります。

では、僧帽弁閉鎖不全症とは、どんな病気なのでしょうか?

心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室と4つの部屋に分かれています。左心房と左心室の間には、僧帽弁と呼ばれる弁が、また、右心房と右心室の間には三尖弁という弁があり、血液がお隣の部屋に流れる際、弁が閉じて、血液の逆流を防止しています。血液は、肺から左心房、左心室、全身へと流れ、全身から帰ってきた血液は右心房、右心室を通り、肺へと送られていきます。僧帽弁閉鎖不全とは、僧帽弁がきちんと閉まらないため、左心室から全身へ送られるはずの血液が左心房へと逆流してしまう病気です。

僧帽弁閉鎖不全症の発生には、弁の老化や遺伝などが関与していると考えられていますが、明確にはわかっていません。

僧帽弁閉鎖不全症の初期には、何の症状もみられないことがほとんどです。病気が進行してくると、朝晩に咳をするようになったり、運動するとすぐに疲れてしまうという症状がみられはじめます。病気が進行すると、心不全となり、呼吸が苦しくなったり、失神を起こすこともあります。

動物病院で健康診断や予防注射などを受ける際に、心雑音が聴取されて発覚することが多いようです。

僧帽弁閉鎖不全症の治療は、薬で病気の進行を抑える方法が選択されます。症例によっては、手術が適用されることもあります。

腎臓の病気(慢性腎不全)


image by Mark Robinson / Flickr

腎臓の病気はいろいろありますが、シニアワンコによくみられる腎臓病は慢性腎不全です。慢性腎不全は、5歳以上から発生することが多く、10頭に1頭のワンコに発生するといわれています。
 
腎臓には、血液中の老廃物などを濾過して尿を作り、体外に排泄するという働きがあります。この濾過する機能は、年齢と共に徐々に低下し、慢性腎不全という病気を起こすことがあります。腎臓の濾過機能が75%以上働かなくなると、腎不全の症状を示すようになります。慢性腎不全の症状は、飲水量や排尿量の変化(病気のステージにより、飲水量が増えたリ、排尿量が増減したりします。)が主で、病気が進行すると、体内に老廃物が貯まり、尿毒症を起こすことがあります。

慢性腎不全は病気がかなり進行してから症状を示すようになるため、早期に発見することはとても難しい病気です。しかし、できる限り早めに診断することで、病気の進行を遅らせることができます。

肝臓の病気(慢性肝炎)


image by Naomi Suzuki / unsplash

肝臓は胃のお隣にある、体の中で一番大きな臓器で、たくさんの働きを担っています。例えば、薬物や老廃物など、身体に有害な物質を分解する機能や、食べたものをエネルギーに変える代謝機能、脂肪の消化などに大切な胆汁を生成・分泌する機能などがあります。

犬に多くみられる肝臓病は慢性肝炎です。この病気は、感染や中毒、遺伝的素因により発生する他、これまでに罹った病気や摂取した薬物による肝細胞へのダメージ、加齢などが関与するといわれています。
 
慢性肝炎では、肝細胞の約80%以上にダメージが及ばないと明確な症状を示しません。つまり、初期に診断することがとても難しい病気なのです。言い換えると、症状を示した段階では、かなり病気が進行した状態である場合が多いのです。

慢性肝炎でまずみられる症状は、食欲の低下や、下痢・嘔吐、体重減少、元気がなくなるなどです。病気が進行すると、腹水が貯まったり、黄疸を示すようになります。そして、肝硬変や肝性脳症などを起こし、命に関わることもあります。

この病気を早期発見するには、動物病院で定期的な健康診断を受ける方法が一番効果的でしょう。 

内分泌系の病気(甲状腺機能低下症)


image by Jazz Guy / Flickr

甲状腺は、喉にある内分泌腺で、主に甲状腺ホルモンを合成・放出する働きを担っています。甲状腺ホルモンは、細胞の新陳代謝を活発にして、エネルギーを調節する大切なホルモンです。

犬に一番多くみられる内分泌疾患は甲状腺機能低下症です。この病気は、甲状腺の萎縮や、自己免疫が関与していると考えられていますが、明確な原因は判明されていません。飼い主さんが一番早く気付く症状は、元気がなくなる、もしくは被毛の変化(脱毛や被毛が薄くなる、フケがでるなど)です。特に、シニア犬では、老化のために元気がなくなってきたのかなと思っていたら、実は甲状腺機能が低下していたということもあります。

甲状腺機能低下症を診断するには、血液検査が必要です。この病気では、他の病気を併発していることもあるため、検査で他の病気についても調べてみるとよいと思います。

その他

関節炎白内障核硬化症などもシニア犬によくみられる病気です。これらの病気については、『犬の白内障〜目が白くなったら白内障?どんな病気でどんな治療法があるの?』や、『関節炎とサプリメント(1)〜関節炎ってどんなもの?変形性関節炎になる要因は?』の記事に詳しく記しているので参考にしてみてください。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。 
[1] Senior Pet Care (FAQ) | The American Veterinary Medical Association (AVMA),
[2] Renal Dysfunction in Small Animals – Urinary System – Merck Veterinary Manual
[3] Allen M. Schoen DVM MS, Veterinary Acupuncture: Ancient Art to Modern Medicine, 2e (2001) Mosby
[4] illiam D.Fortney, 犬と猫の老齢医学 (サンダース ベテリナリー クリニクスシリーズ 1-3) (2005) インターズー
[5] Liver Disease in Dogs: Symptoms and Causes | WebMD

Featured image credit Ken Reid / unsplash

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