大きな音を怖がる愛犬のストレスを緩和する〜指圧マッサージ

お世話・グルーミング
この記事をシェアする

大きな音を怖がる愛犬のストレスを緩和する、騒音起因性不安症対策の第2弾!です。

第1弾では、ワンコにとっての騒音や、怖いときのボディランゲージ、騒音起因性不安症の新薬などを紹介させていただきました。今回は、お薬を使うほどではないけれど騒音は苦手、というワンコたちに、お家でできる簡単な対処法としての指圧マッサージをご紹介します。

指圧マッサージ(Acupressure plus massage)とその方法

1456 1 thewoof

image by Andrea Arden / Flickr

指圧には、マッサージやストレッチなどと組み合わせた指圧マッサージなど、いろいろなタイプがあります。基本的に指圧とは、身体の表面にある経穴に、主に指や手掌を使って圧をかけ、身体の状態を整えるという療法です。

私はオーストラリアでワンコをメインとした動物たちにレーザー鍼灸を施術しているのですが、初めて治療を受けるときに、ぶるぶると震えて怖がってしまうワンコが結構います。鍼灸はワンコが緊張した状態だと効果が得られにくくなってしまうので、まずは指圧マッサージでワンコをリラックスさせてからレーザー鍼灸を行っています。

指圧マッサージは、まず掌を使ってワンコの全身をゆっくりと軽くさするようにマッサージしてから、各経穴をマッサージしていきます。経穴が探しにくい場合には、マッサージだけでもワンコをリラックスさせることができます。花火が始まる直前もしくは雷が聞こえ始めたなというタイミングで、マッサージを始めてみましょう。

ただし、悪性腫瘍(癌)や感染症などに罹患しているワンコにマッサージは禁忌です。ご注意ください。

ワンコを落ち着かせる効果のある経穴

ワンコの体表面には、たくさんの経穴(およそ136穴)があります。その中で、ワンコを落ち着かせる効果があり、指圧マッサージしやすい経穴をご紹介します。


© WOOFOO, Inc. 、監修:ルール久枝 画像:Dora Zett/Shutterstock

・膻中(CV-17)

お腹の正中線(真ん中のライン)を胸の下からおへそに向かってゆっくりと指を動かしていくと、胸骨の始まり(胸の下)と終わりの部分(お腹の中心部)を触知することができます。この2点の中間部にCV-17(CVはConception Vesselの略) があります。この部位を指で円を描くようにマッサージします。ワンコが嫌がらないようであれば、CV-17を指でやさしく圧してみましょう。まず、やさしく5秒間圧します。ゆっくりと圧を緩め、これを5~10回繰り返します。ワンコが受け入れるようであれば、圧す時間を5秒から10秒、20秒、30秒まで少しづつ長くしてみましょう。このマッサージを数分間続けると、たいていのワンコはウトウト状態になります。


© WOOFOO, Inc. 、監修:ルール久枝 画像:Dora Zett/Shutterstock

・百会(頭部)(GV-20)

この経穴は、頭頂部にあります。掌を使って頭をゆっくりなでると、頭の後ろ部分に、頭骨の終わり部分が触知できます。(骨が少し出っ張っています。)ここから、真ん中のラインを前方へ辿ると、頭骨の終わり部分から大きな縦状の隆起が、若干平らになる部分があります。この境目にGV-20(GVはGoverning Vesselの略) があります。この部分は、骨の上なので、とてもやさしくマッサージしてください。そして、ワンコが嫌がらないようであれば、GV-20 をやさしく指で5秒間圧します。ゆっくりと圧を緩め、3~5回繰り返します。

・曲池(LI-11)

肘の外側にあります。肘の外側にポコッと小さい骨の出っ張りがあります。その前方、ちょっぴり上の部分にLI-11(LIはLarge Intestineの略)があります。わかりにくい場合には、ワンコの肘を曲げてみましょう。肘の外側で少し窪んでいる部分にLI-11があります。CV-17と同様に指圧マッサージしていきます。

・神門(HT-7)

手根部(手首)の裏側付近に小さな肉球、手根球が触知できます。このすぐ上に骨があり、この骨の上部、足の裏側の中心ライン上にHT-7(HTはHeartの略)があります。CV-17と同様に指圧マッサージしていきます。

・大陵(PC-7)

手根部(手首)の内側を触ると、いくつかの骨がごつごつとしています。このうち、後ろの骨と内側の真ん中の骨の間にPC-7(PCはPericardiumの略)があります。CV-17と同様に指圧マッサージしていきます。

指圧に関する疑問にお答え〜強さはどの位?間違えても大丈夫?


image by Wayne Silver / Flickr

さぁ、実際にやってみよう!という時に、飼い主さんが疑問に思いそうな点をピックアップしてまとめてみました。

・どのくらいの強さで押せばいい?

はじめに体全体をなでるマッサージは、普段ワンコの頭をなでる程度の強さで大丈夫です。今回ご紹介した経穴は、トリガーポイントがみられる部位ではないので、ワンコが痛みを全く感じない程度に行います。その経穴を押してワンコが振り向いたり、体をよじったりする場合は強すぎるサインです。圧の強さを表示するのは難しいのですが、今回ご紹介した経穴に対する圧の強さは、ミカンの皮をむくときに親指に入れる力よりも少々弱いくらいの強さです(よけいわかりにくいでしょうか???)。

・経穴を見つけられなかったら?違うところを押しても平気?

経穴には4つのタイプがあり、ほとんどの経穴は神経終末が分布している領域になります。この領域の大きさは明らかにされていませんが、このエリアに刺激を与えることにより、経穴刺激の効果が得られます。なので、おおよその経穴エリアを指圧マッサージすることで、効果は得られると思います。また、経穴以外の部位を指圧マッサージしても、それが強い圧でない限り、その部位にダメージを与えることはありません

・どのタイミングで始めればいい?

花火が始まる直前もしくは雷が聞こえ始めたなというタイミングが良いでしょう。ただし、効果的な指圧マッサージを行うには、恐怖症の症状がみられてから急いでツボを探すのではなく、普段からこのツボのマッサージを行っておくとよいと思います

・頻度はどれくらい?毎日やってもいいの?

ツボ刺激は、毎日行ってしまうと、脳がこれは刺激ではないんだと判断してしまうため、3日に一度程度で行います。


マッサージだけでも十分に鎮静効果は得られますので、経穴がわからないというときには、飼い主さんがゆったりとした気持ちでマッサージだけを行っても効果的だと思います。見つからない!!と焦る飼い主さんの気落ちはワンコに伝わってしまいます。余裕を持って、ゆったりと行いましょう!

Featured image credit Grisha Bruev / Shutterstock

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Allen M.Schoen,Veterinary Acupuncture,2nd ,Mosby
[2] L-Theanine For Dogs: Dosage, Side Effects & More – Veterinary Place

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを育てる > お世話・グルーミング > 大きな音を怖がる愛犬のストレスを緩和する〜指圧マッサージ

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ