Perth Royal Dog Show in 2015レポート PART2 ~シープドッグショー編〜

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前回に続き、パースロイヤルドッグショーのレポートです。今回は、ショーの中で私が最も感動したイベント、シープドッグショーをご紹介します。

日本やオーストラリアで何度か見たことがあるシープドッグショーですが、今回は格別に楽しめました。出場していたワンコたち、特にレッドケルピーのベン君(Ben、8歳)の働きぶりには本当に感動させられました。彼らに活躍についてお伝えするまえに、シープドッグやワーキングドッグについて、少しお話をさせてください。

シープドッグショーとは

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シープドッグショーとは、牧場で羊の群れを集めて誘導するシープドッグのスキルを観客に披露するショーですが、審査員がジャッジメントを行い、順位を決める競技でもあります。

オーストラリアにはシープドッグワーカーズ協会シドニーシープドッグクラブなどがあり、各地でシープドッグの大会が行われています。せっかく磨き上げたスキルを仕事に生かすだけではなく、競技にも活躍させているようです。牧場で働いているシープドッグのもう一つの仕事は、ワーキングドッグとしてよい血統の犬の子孫を残すことで、生まれた子犬は販売されることもあるため、競技などでタイトルを獲得していると子犬の価値は上がるのかもしれません。

主要産業を支えるワーキングドッグたち

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Sheep on the Highway – Albany, Western Australia. image by Aneta Waberska / Shutterstock

羊追いや牛追い犬というと、日本では現実味がないかもしれませんが、オーストラリアでの牛や羊の飼養には今も欠かせない存在です。何百という牛や羊が広大な牧草地に放牧されていることが多いオーストラリアでは、予防注射や治療、毛刈り、売買の際に枠場や囲いの中まで追い込まなくてはなりません。州によっては水が乏しいため、放牧地にいる牛や羊たちを水のある場所まで移動させることも必要です。何キロ、ときには何十キロも移動させる必要があり、さらに放牧地は平坦ではないため、車と馬に乗った人だけで牛や羊を追うことは難しいのです。

以前、親戚の牧場に牛追い(マスタリング)のお手伝いに行ったことがあります。私を含め5人は馬にまたがり、2台の車と3頭のワーキングドッグ(全頭がケルピーでした)で何百頭もの牛を二つの丘を越えて移動させました。牛の動きは意外と早く、群れから離れてしまう牛たちも少なくありません。ワーキングワンコたちは、そんな彼らを見逃さず、素早く群れに戻してくれました。

その牧場では、2人の息子が働いており、それぞれが数頭のワーキングドッグを所有しています。ワーキングドッグのトレーニングは自らで行い、牛追いの規模に合わせて連れていく犬を決めていました。オーナーである二人は馬にまたがり、自らも牛追いをしながらワンコに指示をだします。すごいなあと思ったのは、3頭は自分のオーナーの口笛の指示にだけ正確に反応していたことです。似通った口笛の音なのに、ワンコにはわかるんですね。人とワンコとの共同作業のおかげで無事に牛たちを枠場まで追い込むことができました。オーストラリアでは、ワンコはペットとしてだけでなく、人々が生活をするうえで大切なワーキングパートナーでもあるんだなあと感動したことを覚えています。

競技で大活躍のシープドッグたち

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ちょっと話が逸れてしまいましたね。今回のシープドッグショーは、そんな体験を思い出しながらの観戦となりました。

エントリーしていたのは、実際に牧場で仕事をしているワーキングドッグたち。これまでにみたオーストラリアのショーでも実際の仕事をこなす犬ばかりだったので、日々仕事をしていないとスキルを磨いて維持することは難しいのかもしれません。

今回のショーの主人公、ベン君と同僚犬2頭(この2頭はボーダーコリーでした。名前は公表されませんでした)も実際に牧場でシープドッグとして活躍しているワンコたちです。牧場では何百頭もの羊を追っているベン君たち。ショーでは20頭ほどの羊を追う仕事だったので、“今日はずいぶん楽だな!”と思っていたのかもしれません。

まず初めはベン君が登場です。のんびり休んでいた羊たちを囲いの中に追い込み、さらに枠場の中に追い込んでいきます。オーナーから指示を受けると、ベン君は素早く羊たちを囲いの中、そして枠場へと追い込んでいきました。それから、坂道を登らせたり、下らせたり、羊たちをてきぱきと追っていきます。オーナーがいちいち指示しなくても、無駄な動きをすることなく、素早く羊たちをコントロールしていました。

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2頭目に登場したのはボーダーコリー氏です。このボーダーコリー氏、かなりの羊追い経験者(犬)だそうなのですが、ベン君ほど上手く羊の動きをコントロールすることができません。オーナーの細かい指示で、なんとか羊たちを最後まで追うところまで漕ぎ着けました。そして最後に登場したのは、12ヶ月齢のボーダーコリーちゃんです。このワンコはまだトレーニング途中だそうで、なかなか上手に羊を追うことができません。そして羊を追うことに夢中になってしまい、オーナーの指示が聞こえなくなってしまうこともたびたび。やっと羊を追いこんだ後も、まだ追い足りないらしく、羊のそばから離れようとせず、オーナーが呼んでも戻ってきません。仕方なくオーナーが捕まえようと近づくと逃げだし、羊を追う時間よりも、このワンコを捕まえる時間のほうが長かったような気がするほどです。そんなアクシデントもアナウンサーを務めるオーナーが面白トークにしてしまい、会場は笑いの渦となっていました。

競技を見終えて、改めてベン君の仕事っぷりに感動です。オーナーからの指示はほんの少しだったにもかかわらず、一度もミスすることなく、完璧に細やかな仕事をこなしていたベン君。まるで、自分の意志だけで仕事をしているように見えました。そして、競技の間じゅう、羊全頭が群れから離れることは少しもありませんでした。ボーダーコリーたちも素晴らしい活躍でしたが、やはりベン君のスキルは卓越していたように思います。

それもそのはず、ベン君はこれまでにいくつもの賞を獲得しているスーパードッグ。牧場でも素晴らしい働きぶりを見せてくれるそうです。ベン君のように優秀なシープドッグを育てることはたやすくないこと、今回、3頭のシープドッグの働きぶりを見て納得しました。ところで、オーナーによれば優秀なシープドッグは約400万円の価値(それだけの仕事をしてくれるという意味らしい)があるのだとか。どのように計算したのかは定かではありませんが、非常に価値があるということは理解できます。

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日本では、観光牧場などでシープドッグショーを見ることができると思います。もし、そんな機会がありましたら、ワンコの持つ、素晴らしい運動能力と従順さを堪能してください。そして、遠いオーストラリアの地で、毎日羊や牛を追って頑張っているワンコがたくさんいることを思い出していただければ幸いです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] History / About The Show / Perth Royal Show
[2] Sydney Royal Easter Show || Sydney Royal Easter Show
[3] Royal Melbourne Show – 17 – 27 September 2016 | Royal Melbourne Show
[4] Royal Queensland Show
[5] Home :: The Show 2015
[6] About Us – Claremont Showground
[7] 2015_Perth_Royal_Dog_Show_-_Conformation_Dog_Schedule_V2_LR.pdf
[8] 2015_Perth_Royal_Dog_Show_-_Performance_Dogs_Schedule_LR.pdf

トップおよび文中の画像は一部を除きルール久枝さんが撮影 ©ルール久枝

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