犬とワクチン(2)〜ワクチンの種類や犬のサイズによって、接種頻度は異なるものか?

健康管理
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さて、今回はワクチンに関するサブテーマをいくつかご紹介させていただきます。

なぜ成犬のコアワクチンは3年毎の接種で良いのか

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なぜなの? image by Allan Foster / Flickr

前回、『犬と猫のワクチネーションガイドライン』(世界小動物獣医師会)によりコアワクチンは成犬では「1年後にブースター、その後は3年毎よりも頻回には接種しない」と推奨されていることをお話しました。

犬とワクチン(1)〜WSAVAガイドラインに沿ったワクチン接種の頻度 | the WOOF

春の足音が聞こえてくると、ワクチン接種についての悩みが深くなる飼い主さんは多いかと思います。「どんなワクチンを、どのくらいの頻度で受けるのが良いのか」は、悩ましいところですよね。 今回はこの悩ましきワクチン接種についてお話します。


「3年ごとよりも短い間隔で接種すべきではない」のは、コアワクチンの免疫持続期間は長く、頻繁にワクチン接種を行うとワクチン接種後有害事象を起こしてしまう可能性が高くなるからだと、ガイドラインでは説明しています。

ワクチンは、治療することが難しい重篤な病気の発生を予防したり、たとえ発症しても軽症にとどめたリ、そのような病気の蔓延を防止したりと犬社会、そして人社会に絶大な効果を与えます。しかし、ワクチンの接種により、ワクチン接種後有害事象(VAAEs)を起こすことがあります。VAAEsと考えられている病状として、アレルギーや蕁麻疹などがあり、免疫疾患や自己免疫性疾患、アレルギー疾患、腫瘍性疾患などを発症させる原因になる可能性もあると考えられています。また、とても重度の副作用が起きてしまうと死を招いてしまうこともあるのです。

「免疫の賦与が得られる条件でワクチンの接種回数を可能なかぎり減らす[2]」というポリシーのもと、コアワクチンは3年という目安期間が設定されているのです。

有害事象はどんなワンコも等しく起こる?

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割とワイルドなライフスタイルです! image by TheGiantVermin / Flickr

ワクチン接種後有害事象(VAAEs)は、どの犬も同等に発生するわけではありません。

最近の研究によると、体重の大きいワンコのほうがVAAEs発症率は低く、避妊もしくは去勢したワンコのほうが、していないワンコよりもVAAEs発症率が27~38%高くなることが明らかにされています。また、1~3歳のワンコのほうが2~9ヶ月齢のワンコよりもVAAEs発症率は高く、1回に複数のワクチンを接種した場合、10kgのワンコでは27%、10kgより大きいワンコは12%VAAEs発症率が高くなったという報告もあります。

このような研究結果などから、大型犬も小型犬も、子犬も高齢犬も同じという現在のワクチン投与量に疑問を呈する声が浮上してきました。

ワクチン投与量は犬のサイズによって変えるべき?

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大きいコと小さいコ、同じでいいの? image by George Thomas / Flickr

ワクチン1回投与量は、平均サイズのワンコに十分な抗原を投与できる量に設定されています。しかし、現在のところワクチンのサイズは1種類しかないため、大型犬にも小型犬にも、子犬にも高齢犬にも同量のワクチンが接種されているのです。
 
近年の研究で、小型犬、特にトイ犬種のワクチン接種後有害事象(VAAEs)発生率は、大型犬や中型犬よりも高いことが明らかになったため、ワクチンのサイズを1種類以上にすべきではないかという考えが提起されています

お馴染みの統合獣医療ケアジャーナルに発表された研究[4]によると、コアワクチンである犬ジステンパーウイルスと犬パルボウイルスのワクチンの半量を小型犬に投与したところ、十分な免疫効果がみられたと報告されています。

3年以上ワクチン接種を受けていない小型犬13頭に、犬ジステンパーウイルスと犬パルボウイルスのワクチンを接種し、4週間後に13頭の、6ヶ月後に8頭の抗体価(※1)を測定したところ、全頭において十分な抗体価が認められました。つまり、犬ジステンパーウイルスと犬パルボウイルスのワクチンについては、小型犬には半量でも効果があったことになります。

今後、さらに多くの研究が進めば、いろいろなサイズのワクチンが開発される日は近いかもしれません。そして、ワクチン接種後有害事象(VAAEs)の発生が多い小型犬、特にトイ犬種には朗報となるかもしれませんね。

※ 抗体価:犬がウイルスに感染すると、ウイルスは抗原と認識され、それに対抗する抗体が犬の体内で作られます。血中の抗体量を測定し、どの程度の抗体を持っているのかを表したのが抗体価です。各ウイルスに対する抗体価が高ければ高いほど、そのウイルスに対して免疫を持つ(感染しても抗体が対処してくれる)といえます。

今後、ワクチンプログラムは年に1回から3年に1回へと変わっていくかもしれません。が、病気や加齢に伴う変化などを早期に発見するためにも、年に1回の健康診断は大切だと思います。ワクチン接種時期や健康状態などについては、思い悩むよりも、まずは動物病院にご相談されることをおすすめします。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 日本獣医学会のQ&A- 犬猫のワクチンについて
[2] 世界小動物獣医師協会WSAVA、犬と猫のワクチネーションガイドライン
[3] MVM 2014年 150号ワクチネーションガイドライン概要と提言
[4] 統合獣医ケアジャーナル “Study using a half-dose canine parvovirus and distemper vaccine in small breed adult dogs.”
[5] Adverse events diagnosed within three days of vaccine administration in dogs.
[6] Vaccine side effects: Fact and fiction

Featured image credit PROphilhearing / Flickr

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