愛犬の”問題行動”に対処する〜困った行動を好ましい行動に置き換えるアプローチ

しつけ・トレーニング
この記事をシェアする

犬の”問題行動”のお悩みは、どこのお宅にもあるようです。

「引っ張りグセが直らない」「チャイムに吠える」「お客さんに飛びついてしまう」などなどなど。解決したい問題のひとつやふたつ、ありますよね?

今回は犬の”問題行動”についてのお話です。”問題行動”の中でも、概ね正常範囲の行動を取り上げます。

犬の問題行動とはなにか

犬の問題行動とは、それをされては飼い主が困るという行動です。周りの人が困るから、結果として飼い主が困るという行動も含まれます。


代表的な例には、散歩中リードを引っ張る、人に飛びつく、吠える、咬むなどでしょうか。確かに、程度の違いこそあれ、どの行動も”困った行動”ですよね。

問題行動は程度によってざっくりと、(1)犬の正常範囲内の行動、(2)範囲を少し逸脱した行動、(3)異常な行動に分けることができます。(1)および(2)は、犬にとっては概ね正常な行動ではあるけれど、人間にとって迷惑なものだから問題とされる行動です。一方で(3)は、犬としても病的で異常と判断するしかないような行動です。

異常な行動は、遺伝的素因や脳や神経の異常、神経症や不安症など様々な原因が影響します。今回ここで扱うのは(1)および(2)で、行動障害ともいえる(3)については扱いません。


また、飼い主さんが態度を変えることで犬の行動に影響を良い与えられる可能性があるものを取り上げています。どれも家庭で実践しようとすると、タイミングを逃してしまったり、一貫性を保てなかったりと躓いてしまうことも少なくありません。できれば一度はドッグトレーナーに相談し、共に問題に取り組んでいただければと思います。

愛犬の”問題行動”に対処する

まずは愛犬に行動の問題がみられた場合の対処について、基本的な心構えや覚えておいて欲しいことを以下にまとめておきます。

・問題行動をする犬は”悪い犬”ではない

”問題行動”といっても、犬にとっての正常な行動だったり、正常の範囲を少々逸脱した程度の行動であれば、「犬の気質が悪いから」「拗ねているから」起こすものではありません。

行動の問題は、環境によっても年齢によっても起こり得ます。どんなにイイコでも、歯の生え変わりの時期には不快感から家具を噛むかもしれません。ハウスが窓から外がよく見える場所にあれば、、警戒心から吠え続けるかもしれません。


特に犬に落ち度があったり、特別その犬が悪いわけではないということは心に留めておきましょう。

・行動の原因を探ろう

犬の行動にはそれぞれ理由があります。飼い主を困らせる行動の裏にも、なんらかの原因が潜んでいます。その原因を特定し取り除くことができれば、行動の問題が発現する確率は極めて低くなるはずです。

原因の特定は極めて困難な作業です。直接的な原因ではなく隠れた原因が影響していることもありますし、複数要因が絡み合ってトリガーとなっているのかもしれません。原因に近づくために、以下のことを実践してみてください。

  • 愛犬の行動を観察し仮説を立てる
  • 愛犬の行動を予測し、原因となるモノ・コトを回避する
  • 犬(犬そのものの生態や犬種の特徴)について学ぶ
  • ボディランゲージを学び、愛犬が出しているサインに敏感になる

難しいかもしれませんが、じっくり学び観察すれば原因が見えてくることもあります。また、専門家に相談するときの良いインフォメーションにもなるでしょう。大事な家族である「犬」の生態を勉強し、回避する方法もあるということを学びましょう。

・環境をつくり、好ましい行動を教えよう

面倒だと思われるかもしれませんが、十数年に渡るであろう愛犬との暮らしをできるだけ快適にするためには、犬の行動を理解し、予測し、やってほしくない行動が出にくい環境を作ってあげるとともに、やってほしい行動を教えてあげるようにしましょう。

・一貫性をもとう

どんなトレーニングでもそうですが、一貫性をもって犬に接することを忘れないようにしましょう。「昨日はよかったけど、今日はダメよ。」や「この人はいいけど、あの人はダメよ。」といったランダムな状況を犬に教えることは難しく、犬は混乱してしまいます。。

年齢を重ねて犬が飼い主の行動を観ながら状況を判断するようになることはありますが、犬に行動を教える段階で一貫性がないと、犬は自分の判断で勝手に行動するようになってしまいます。


それでは以下の項から、代表的な”問題行動”の解決策をご紹介します。

問題1:引っ張り

2594 2 thewoof

image by 三井 惇 CPDT-KA, WanByWan

お散歩のときにリードを引っ張られるというお悩みをお持ちの飼い主さん、実はとってもたくさんいらっしゃいます。

落ち着いて散歩ができないだけでなく、中・大型犬になると飼い主が怪我をしないとも限りません。知人の大型犬の飼い主さんは腱鞘炎になってしまったそうです。

好奇心や自立心にあふれた元気で活発な犬が、「あっちに行きたい」「ここでニオイを嗅ぎたい」「早く行きたい」など意思を主張すれば、当然飼い主と繋がっているリードは張ってしまいます。自由に行動しても良い場所を除いては、飼い主さん自身や周囲の安全のためにも、引っ張らずに歩いて欲しいものです。

引っ張り歩きは、出来るだけ早いうちに対処するようにしましょう。子犬時代なら多少引っ張られても問題はないかもしれませんが、身体が大きくなった犬に引っ張られるのは(たとえ小型犬であっても)飼い主に結構なダメージを与えるものです。引っ張ることに慣れてしまった犬に、体が大きくなって力が強くなったから急に引っ張るなと言っても犬には理解できません。

リードを引っ張る犬には、「引っ張ったら先に進めないが、引っ張らなければ進める」ことを教えましょう。引っ張ったら立ち止まり、リードが緩む程度のスピードで歩けるなら前に進むようにします。ダメではなく望ましい行動をする方向へ誘導するのです。


問題2:飛びつき

2594 1 thewoof

image by 三井 惇 CPDT-KA, WanByWan

「飛びつき」もよく聞かれる問題行動のひとつです。
家の中でぴょんぴょん飛びついてくる小型犬はかわいいかもしれませんが、雨上がりに泥まみれの足でご近所の奥様に飛びついたら、かわいいでは済まされませんし、大型犬では後ろに倒れてしまうかもしれません。

ただこれも犬にとっては自然な行動といえます。犬は体高が低いため、飼い主さんに近づきたいと思ったらおのずと二本足で立ちあがったり飛びついたりしてしまうものです。自分の要求をアピールするでしょう。

飛びつきの問題は、飼い主さんの対処により犬の行動を大きく変えられる可能性があるものです。


抱っこしてほしくて足の周りでピョンピョン飛びついている小型犬を反射的に抱きあげてしまったりしていませんか?
帰宅を待ちわびていた犬たちに大歓迎されて、ついつい「会いたかったよう!」と抱きついてくる犬撫でまわしていいませんか?


こうした対応が、愛犬の飛びつきを助長しているのかもしれません。できれば人間側がOKを出したところで、抱っこするよう行動を変えて欲しいものです。


飛びつく犬には「オスワリ」を教え、座ったことを褒めてご褒美をあげましょう。日常的にも、飛びつかないで座ってこちらを見ていたら「いい子ね」と褒めてあげましょう。飛びつくのではなく「オスワリ」することが、ご褒美をもらえる行動だということを教え、習慣付けてももらいましょう。

問題3:吠え

「吠え」は多くのご家庭で頭を痛める問題です。日本の都会ように密集した住環境で犬を飼う場合、どうしてもご近所との距離が近くなります。


吠えることは犬にとってはコミュニケーションのひとつ。まさに自然な行動といえるものですが、インターフォンが鳴るたびに愛犬が吠えたり、留守にするたびに吠えていたり、散歩中よその犬と出会うたびに吠えかかったりといった行動はどれをとっても飼い主にとって心安らかなものではありません。

「吠え」は、環境を変えることである程度抑えることが可能です。家の中すべての警護を任せることはやめましょう。犬は常に神経を張り詰めていなくてはならず、ストレスを与えることにつながります。

  • 家の外を人が通るたびに吠えて大騒ぎをする犬の場合、窓から外の様子が見えないようにしてみましょう。犬に与える無用な刺激を減らすことができます。
  • ハウスなどの安心できるスペースを用意し、留守中にゆっくり快適に寝て待ってもらいましょう

また、「吠えないでいる」という好ましい行動を強化してみましょう。吠える対象物が見えて緊張しているようであれば、そばに呼び寄せて「吠えないでいること」を褒めましょう。これを繰り返して吠えない習慣をつけていくことで、「吠え」のスイッチは入りづらくなります。

問題4:咬み


「咬み」は、実はなかなか表に出てこない問題行動のひとつです。一時的なものだと思おうとしたり、かわいい愛犬が自分に噛みつくなんて考えたくないという気持が飼い主側にあるからではないかと思います。

「咬み」の問題は深刻度の判断がつけがたく、対処が遅れると周囲を危険にさらすことにもつながりかねません。問題を認識したら、すぐに専門家に相談してください。

健康で健全な犬が普段と同じ状況にあれば、攻撃のために咬むことはほとんどありません。しかし犬にとって咬むことは、自分の身を守る最後の手段。最後の手段を取らなければならないほどに追い詰められれば咬むことだってあり得ます。また、どんな犬でも限界をこえるほどのストレスにさらされれば、「攻撃」行動を取ることもあります。

犬がストレスサインを出しているにも関わらず、それを無視して放置していると、犬は嫌な状況から逃げるために自分で「咬む」という解決策を講じてしまいます。

最終兵器の「咬む」ことを選択させないためには、犬の状態をよく観察し、咬まないことを選択したときは褒めてあげることが大事です。

恐怖を感じて尻込みしている犬に「大丈夫だから」とリードを引っ張って近寄せるのではなく、リードを緩めて犬のペースで怖いものかどうかを確認させ、自分で大丈夫だと納得させましょう。



わかりやすく伝えて、正しく学習してもらうことで、あなたのドッグライフはより楽しいものになるはずです。


面倒がらずに愛犬のことをよく観察して、好ましい行動に導いてあげましょう。

Featured image credit 三井 惇 CPDT-KA, WanByWan

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを育てる > しつけ・トレーニング > 愛犬の”問題行動”に対処する〜困った行動を好ましい行動に置き換えるアプローチ

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ