「何度言ってもやってくれない」のは犬がおバカだからではない

しつけ・トレーニング
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犬との生活が始まって散歩に連れていくようになると、同じ犬種の飼い主さんや、同じ年ごろの犬を持つ飼い主さんと話す機会が増えてきます。すると、「同じ犬種なのにうちのコはできない」とか、「同じ年ごろなのに、うちのコはそんなことできない」といった不安がよぎる飼い主さんもいるようです。

「ウチの犬、もしかしたらおバカなの?」そんな不安に苛まれる飼い主さんも少なくはないかもしれません。

「そんなことはありませんよ。周りは気にしないでください」といっても、「そうは言ってもねぇ」となってしまいますが…。

私は言いたい。人間がみんな違っているように、犬だってみんな違うのです。

のんびり学習していく子がいれば、時間がかかってもちゃんと学べる子もいます。

そもそも、早くできるようになればいいというわけでもありません。

例えば、食べることに興味があまりない犬の場合、何か教えようとおもってもおやつなどが使えないので時間がかかることもあります。

周りが気になりすぎる場合は集中できずに学習が妨げられていることもあります。

また、一度覚えてしまったことを頑固に変えない犬もいます。

犬にだって個性があるのです。「できない犬」とか「おバカだから」と決めつけたり諦めたりせずに、まずは自分のコをよく観察して見守りしょう。そして、そのコにあった方法で教えてあげるようにするのです。

今回は、”おバカと言われがちな犬”の代表選手、「なんど言ってもやってくれない犬」のお話。彼らは”おバカ”ではありません。「なんど言ってもやってくれない」「ちゃんと教えたのにできない」のにはわけがあります。

ちゃんと教えた「はず」ではできない

「何度も言ってるのにやってくれない」と嘆く飼い主さんの犬は「おバカと言われがちな犬」

飼い主さんは「オスワリ。オスワリ!オスワリ!!!」と連呼しているのに、犬は求める行動をしてくれない。そうすると飼い主さんは焦ってしまう。言っても聞こえていないのか?聞こえているのにやらないのか?うーん、やっぱり”おバカ”だから?おバカさんだからできないの!?と。

いえいえ、そんなことはありません。犬にはそれぞれ、その犬のペースがあるのです。

犬は聞いたことを理解し行動に移すまでの時間が必要です。すでに覚えた動作であれば、一度のキュー(指示のことば)でも行動に移せますが、多くの犬は「きく」と「する」の間にタイムラグがあるのです。

この点を考慮せず普段からキューを連呼していると、連呼されて初めて行動に移すような犬になってしまいます。「きちんと教えたはずだから出来るはず」と思うなら、何度も連呼せず、犬が行動に移すのを待ってあげてください。

キューを出しているのに行動しない?

もしかしたら他のことに気を取られて最初のキューが耳に届いていなかったかもしれません。そんな時は、もう一度愛犬と目を合わせてから、キューを言って、しばらく待ってあげましょう。

待てど暮らせど全然動かない?ならば、キューの意味がちゃんと伝わっていない可能性が大です。もう一度教えなおしてあげる必要があります。

周りの環境が変われば犬の行動も変わってきます。例えば、いつも犬と向かい合い、人差し指を立てて少し前かがみになりながら「オスワリ」と言ってオスワリをしている犬に、散歩の信号待ちで並んでいるときに、「オスワリ」と言葉だけでキューを出しても犬がその場ですぐに座ってくれる確率は極めて低くなります。なぜなら、犬から見える「オスワリ」の景色が全然異なるからです。

飼い主は正面にいないし、人差し指も立てていない。そんな景色はいつもの「オスワリ」の景色と違うので、犬は混乱してしまいます。

どんな環境や位置関係にあっても「オスワリ」という行動をしてもらいたいのであれば、それぞれの位置関係や環境での練習も必要になります。

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image by 三井 惇 CPDT-KA, WanByWan

ちょっとしたテストをしてみましょう!

お散歩の途中で愛犬の方を向かずに「オスワリ」と言ってみてください。

もし、その場ですぐ座ってくれればあなたの愛犬は「オスワリ」の意味をきちんと理解しています。

もし、あなたの正面に回り込んで座るなら、”景色を変えた練習”が必要です。

もしも全く反応しなかったら、いろいろな場所で「オスワリ」をさせる練習からはじめてみましょう。

できないのは犬のせいではなく、きっちり教えられていなかったということがほどんどです。「すぐに出来たからオッケー」はちょっと危険で、なんども繰り返しが必要だった犬の方がしっかりできることもあるのです。

やって欲しい行動はなんどでも繰り返す

「オスワリ」や「フセ」などは日常いろいろな場所で使うことがあるので、犬は早く身につけやすいものです。しかし、たまにしか使わないキューは、犬も忘れてしまいがちです。
例えば、カフェに行くときに必要だからと、マットトレーニングをしたとしましょう。

トレーニング中は何度も「マット」というキューとともに、愛犬にマットの上に乗って伏せるように教えますが、一度覚えたら1日に何度もはやりませんよね。本番のカフェでしか使わないとなると、「マット」というキューを聞く頻度は極めて低くなります。

たまにしかやらないことはなかなか身に着きません。これは人も犬も同様です。

好ましい行動は日常の中に取り入れること。このためには、好ましい行動を指示するキューを頻繁に使ってあげることが必要です。そうするとそれは習慣になり、反射的に動いてくれるようになります。

習慣の力はある意味強大です。ときには目の前のお楽しみも投げ出して、キューに反応してくれます。

これは私が出会ったクライアントさんの犬のお話。お子さんの靴下を咥えて離さず、捕まえて取ろうとすると素早く逃げてしまう、まだ遊びたい盛りの子犬さんでした。「靴下を咥える→みんながかまってくれるから楽しい」と学習してしまっては困るとしばらく放っておきましたが一向にやめる気はなさそうです。

しかし私は知っていました。その子には完璧にできるキューを覚えていたことを…。刷り込みといって良いほど強力な行動は「ハウス」。ハウスに入るといいことがあると学んできたこの子犬は、「ハウス~♪」というキューに反応して咥えていた靴下を放し、一目散にハウスに飛び込んだのです。

要は習慣にしてあげること。

人間にとって好ましい行動はどんどん使って習慣にしてあげることが大切です。それも、困った行動に手を焼くようになる前に。そうすれば犬も人間もストレスは大きく減ります。

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image by 三井 惇 CPDT-KA, WanByWan

「伏せ」「待て」が完璧にできれば、目の前のあれやこれやに惑わされなくなります。

他の犬たちがいる中で「フセマテ」の練習をしている子たちは、周りに犬たちがいてもちゃんと待っていることができるようになります。たとえば人に飛びつきそうになったり猫を追いかけそうになったときでも、「フセ」の一言でその場で伏せることができれば、安全を確保することにもつながります。

犬はいくつになっても新しいことを学べます。「ウチの犬はおバカだから」「もういい年齢になっちゃったから」とあきらめる必要はありません。難しいことをする必要はありません。できること、簡単なことで大丈夫。楽しくトレーニングしながら、コミュニケーションを深めていってください。

生まれながらに「おバカ」な犬などいないのですから。

Featured image credit 三井 惇 CPDT-KA, WanByWan

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