【犬本紹介】『エリザベスと奇跡の犬ライリー』〜彼らの日常からサイトロメガウイルスを知る

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皆さんこんにちは。 

the WOOFお空出張所勤務の読書犬・パグのぐりです!お元気ですか?地上は暑くなったり寒くなったりで、地味に風邪がはやっているみたいですが、年度初めで忙しい方々も、どうぞ健康に気を付けてお過ごしくださいね~。

★トップ写真: エリザベスと母のリサ。エリザベスは先天性サイトメガロウイルス感染症による小頭症で脳に重大な障害がありました © サウザンブックス

患者の日常を淡々と追う

Market cover

さて、今回はノンフィクション作品をご紹介。『エリザベスと奇跡の犬ライリー』(リサ・ソーンダース著 ナカイサヤカ訳 サウザンブックス 2017年)です。この本の副題には「サイトメガロウイルスによる母子感染症について知って欲しいこと」と書かれています。

主人公のエリザベスは、この本の著者であり母親であるリサのお腹にいるときに、サイトメガロウイルスに感染。重い障害を背負って生まれてきました。この本では、エリザベスと母親のリサ、父親のジム、そしてエリザベスの姉のジャッキーの暮らしが淡々とつづられていきます。

そう、この本は、「サイトメガロウイルスとは何か」を説明的に書いているのではなく、その感染症にかかった子の日常を追うことで、病気についても知ることができる、という内容になっているのです。ですから、とても読みやすい。この読みやすさには、著者の「サイトメガロウイルスをもっと多くの人に知ってもらいたい、そしてできるだけ予防をして、こうした感染症にかかる子を一人でも減らせれば」という思いがこもっています。

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ソファに仲良く座るエリザベスとライリー。二人はここでテレビを見ているのがお気に入り。本書内でもよくでてくる場面です © サウザンブックス

エリザベスは、リサのお腹にいるとき、最初は順調に育っているように見えました。そして迎えた出産。生まれてきた女の子を見た時、母親のリサは何か違和感を持ちます。「頭が小さい」。女の子は小頭症と診断されました。脳の石灰化も見られると。

医師は最後にエリザベスの先天的障がいは、先天性サイトメガロウイルス感染症が原因だろうと言った。私は妊娠中に(あるいは妊娠直前に?)このウイルスに感染したのだろうと。そんなことがあるのだろうか? 出産前小児保健指導でもらった資料はすべて注意深く読んだし、健康に悪そうなものも極力避けてきたのだ。(p44)

大きなショックを受けたリサ。「もう私の人生は終わりだわ」とまで思い詰めたそうです。でも、エリザベスをだんだんと受け入れられるようになり、家族みんなが、このかわいい赤ちゃんを大事に育てるようになっていきます。

どうしても犬が飼いたくて

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エリザベスの姉ジャッキーとライリー。ジャッキーが6歳の時にペットに犬を飼いたいと言いだしたのが、ペットとの格闘エピソードの発端になりました © サウザンブックス

さて、エリザベスの姉であるジャッキーは元気な女の子。ずっと「犬が飼いたい」とリサにお願いしていました。でも、リサはなかなかOKを出しません。だって、家にはエリザベスがいるのです。自分の力では動けないエリザベスの上に、犬が乗ってしまったら? 自分で「苦しい」と声をあげることもできないエリザベスには、犬は危険でしかないと考えていたのです。

それでもあきらめないジャッキーは、ハムスターや猫、ウサギなど、犬以外の動物を飼うのですが、事情があって、ほとんどの子が知人や友人に引き取られていきます。

やっぱり犬が飼いたい。そんなジャッキーにリサは

「もし神さまがうちに犬を連れてきてくださったら、そのときは飼ってもいいわ」(p7)

と話していました。

ある日、それが現実となります。いくつかのアクシデントを経て、大きな黒いラブラドールのライリーがリサの家にやってきました。

このライリーは、エリザベスに危害を加えるどころか、いつもエリザベスと一緒にソファに並んで座っていました。二人は、言葉は交わさないけれど、気持ちを交わしているようにも見えました。

ライリーは、エリザベスを危ない目にあわせるどころか、逆に、いろいろなよい刺激を与えてくれました。

ある日、私が台所で料理をしていると、エリザベスが大声で笑っているのが聞こえた。そんなことは滅多にないので、リビングルームに走っていって、何が起こっているのか確かめた。ライリーがエリザベスの足を隅ずみまでていねいになめていた。(中略)ライリーは自分が楽しいからではなく、エリザベスを喜ばせようとしているのだと私は確信した。(p128)

エリザベスは自分では動くことが難しいのですが、こうしてライリーが隣にいてくれることで、様々な刺激を受け、楽しむことができたのです。

そんな日常が続いたある日、エリザベスはてんかんの発作を起こします。この発作が徐々に頻繁に起こるようになって…。

エリザベスとライリーがその後どうなったのかは、ぜひ本書でご確認を。

病気についてのわかりやすい解説も

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「トーチの会」代表の渡邊智美さんと会員の母娘。イベントや学会でパンフレット配布やポスター展示等を行い、病気に関する啓蒙、情報提供を行うのも「トーチの会」の重要な活動です。 © サウザンブックス

さて、この本は、日本にある「トーチの会」という、先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会が中心となって出版した本です。クラウドファンディングを利用し、翻訳出版が可能になったそうです。日本でも、この病気の認知度をもっとあげたいという人たちの一生懸命な働きがあって、僕も本を手にとることができました。

エリザベスの日常を追うことで、この感染症に罹患した子どもがどのような生活をしているのかがよくわかります。そして、僕はこの感染症についてもっとよく知りたいなあと思いました。そう思う読者は少なくないでしょう。

本書の最後にはそういう読者のために、日本のお医者さんが解説を書いてくれています。サイトメガロウイルスは、世界中に普通に存在する、ごく一般的なウイルスで、免疫を持つ人もたくさんいるのですが、免疫を持たない女性が妊娠し、妊娠中に感染すると胎児に影響が及ぶ可能性が高くなります。それを多くの人が知っているだけでも、防げる病気だそう。ここ数年、風疹に関しても、妊娠中の感染が胎児に影響を及ぼすという社会的認知が高まってきたけれど、サイトメガロウイルスについても、もっと認知度があがるといいなと思いました。ぜひぜひ、読んでみてくださいね。



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