オススメ犬本2017〜今年も集めました!犬小説をあなたに

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皆さんこんにちは!読書犬パグのぐりです。犬の本の紹介を始めてからはや3年。それにしても犬の本て、たーっくさんあるんですねえ。

僕もこのお仕事をいただいてから、犬の本を意識して読み始めましたが、出てくる出てくる。新刊はもちろん、古いものでもやっぱりいいものはたくさんあって、どれだけ犬が人に愛してもらっているのかを実感しています。

今年も僕の本紹介にお付き合いくださりありがとうございました。今年一年の感謝を込めて、年末スペシャルをお届けします。今回は大人向け。いろんなテイストのものを揃えてみました。帰省のおともに、大掃除の休憩時間に、正月休みに、ぜひどうぞ!

『つるかめ助産院』〜南の島の、助産院に、大型犬

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先日読んだエッセイ『犬とペンギンと私』があんまりに面白かったので、今度は小川さんの小説が読んでみたいと手に取ったのがこの本。つるかめ助産院って、ネーミングからしてえらくめでたい感じがする。ワクワクしてページをめくっていったら、なんと、犬が登場するじゃないですか! 「チュプ」という真っ黒の大型犬。犬種は書いていないからわからないんだけれど、愛嬌のあるワンコです。

そのチュプが住むのは、南の島にあるつるかめ助産院の庭。ここは、鶴田亀子という中年の助産師さんが院長をしている助産院です。主人公小野寺まりあは、旅行者の1人としてこの島を訪れます。そこでこの亀子(島のみんなからはつるかめ先生と呼ばれている)とひょんなきっかけで出会い、助産院を訪れるのです。

さて、まりあがなぜこの島を訪れたかというと、理由は夫の失踪。ある日忽然と消えてしまった夫を探して、以前二人で旅行に来たこの島を再び訪れたのです。でも、夫はいませんでした。が、つるかめ先生から予期せぬ妊娠を告げられて… そしてまりあはある決意をします。

島に住んでいる人たちが皆魅力的です。誰をもあたたかく包み込んでしまう懐の深いつるかめ先生をはじめ、真面目で、いつでも一生懸命な助産院のスタッフのパクチー嬢(もちろん本名ではありません)。世界一周をするつもりと豪語しつつ、ちょいちょい助産院を手伝うサミー。島に昔から住み、いろいろなことを教えてくれる長老。そして、人の気持ちがよくわかるのか、絶妙なタイミングで寄り添ってくれるチュプ。

この小説は、そんな島の人や犬たちに囲まれて、妊娠期間を重ねていくまりあの物語です。幸せな物語のところどころに、胸が苦しくなるようなストーリーも挟み込まれています。そのギャップがまた味わいを深くしているの。読んでみてください。

『つるかめ助産院』小川糸著 集英社 2010年

『犬の人生』〜詩人が描く犬の世界

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ちょっと古い本だけど、翻訳本で面白かったからご紹介しますね。『犬の人生』は、カナダ生まれの詩人、マーク・ストランドが書いた短編集。それを、あの有名な日本人小説家・村上春樹さんが翻訳した作品です。実は僕、翻訳本で「これは!」と心に留まる本てそんなに多くないの。なんというか、「訳しています」という香りが出ちゃっている本は、とっつきにくくて。だけどこの本はちがった。訳している、ということを感じさせない文章の運びでした。

グラヴァー・バーレットはある日、ベッドの隣にいる妻が驚くようなことを話し始めます。自分の前世は犬だったんだ、と。あれ?それって最近どこかで読んだことがあるような…あ!そうだ、町田康さんだ。『スピンク日記』にありましたねえ。町田さんの前世が犬だったと。

この物語の主人公もそうなのです。町田さんと違うのは、自分が犬だった時のことを実によく覚えているっていうこと。妻に、自分がコリーだったころの話をとうとうと語るのです。

妻はびっくりしながらも、時々に質問をし、夫の話を引き出します。バカにしたり、相手にしない、なんてことは全くなくて、ただただ、聞き役にまわる。素晴らしいなあ。

そんなに長い物語ではないのですが、主人公が犬だったときに出会った仲間、見た風景、接した人間、それぞれが目に浮かぶように書かれています。なるほど、詩人が書いたというのはうなずけるかも。小説家が書く小説とはちょっと違った物語を、ぜひ味わってみてください。

『犬の人生』マーク・ストランド著 村上春樹訳 中央公論社 1998年

『オイアウエ漂流記』〜アイウエオ、じゃないよ!

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僕、この本が欲しくてネット検索したんだけれど、最初ずっと『アイウエオ漂流記』って書いていて、実際に本を手にして初めて正式タイトルが『オイアウエ漂流記』であることに気づいたの。ドジでしょう(笑)

南太平洋上で雷雲に巻き込まれた飛行機が墜落。機長が行方不明になり、日本人9人と外国人1人が無人島に漂着します。あ、あと機長の犬・セントバーナードも。10人と1匹がたどり着いた島は無人島であるだけではなく、国と国とのいさかいのもとになっている場所で、近くを船も飛行機も通らない。正真正銘の無人島です。

その島で、彼らがどんな暮らしをしていくのか。それを描いた物語です。そういえば昔、『ロビンソン・クルーソー』という漂流記を読んだことがあるけれど、それを思い出したなあ。

なにしろ無人島なので、店もない、自動販売機もホテルもない。そうした中で彼らが立ち向かう第一の敵は「空腹」。そう、お腹を満たさなければどうしようもないのです。あとは「喉の渇き」。食糧と水の確保をどうするのか。便利な現代社会に慣れた人間が知恵を絞る様は圧巻です。そして「道具」。まさか遭難するなんて思っていないので、皆道具など持ち合わせていません。ポータブルの裁縫道具やゴルフクラブ。これらをどうやって使っていくのか? もちろん、食料をとるために、ね。あとは「火」。そう、調理をするために、また安全を確保するためには火がとても大事。最初はライターがあったのですが、とあるきっかけでそれが使えなくなり…

と、次々と難問がふりかかるのですが、登場人物たちは頭をよせあい何とか危機を一つひとつ脱していきます。子ども、大人、老人、男女、外国人。いろいろな属性の人たちがどうやって生きていくのか。と書くと、深刻な物語のように感じるかもしれませんが、この本、最初から最後までずーっとユーモアがちりばめられています。だから悲惨な現場なのに、クスッと笑ってしまうこと度々。読み始めると止まらないこと間違いなし。「オイアウエ」の意味も文中にありますよ。

『オイアウエ漂流記』萩原浩 新潮文庫 2012年

『アンハッピードッグズ』〜パリの街に弁慶

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フランス、パリに住むカップルの話。現地で働く日本人のガクと、恋人のマオ。マオはガクが飼っている雑種犬「弁慶」の世話をするためにパリにやってきました。

物語は、この二人のアパルトマンに、空港で荷物をすられた日本人の新婚夫妻がガクに連れられてやってくるところから始まります。夫の浩之と妻の睦美。困った人たちをほっておけない(その割に自分のパートナーには結構勝手なことをする)ガクが、なにかと世話をやき、それほど世話やきでないマオも結局は巻き込まれます。

新婚夫妻はパスポートから財布まで全てを持って行かれてしまったので、どうにも動けないのですが、せっかくパリにきたのだから、名所を案内しようというガクの提案により、ベルサイユ宮殿を4人で訪れます。そしてその時から、この2組のカップル間の関係がぎくしゃくしはじめるのです。

弁慶はわりと自由気ままな性格のワンコみたい。それほど人に寄り添う感じではないんだけれど、マオは時々自分の思っていることを弁慶に語りかけます。だから、大事なパートナーなんだよね。

ぎくしゃくした4人の関係はどうなるのか? この小説は、著者の近藤さんの初めての恋愛小説だそうです。タイトルからは犬が不幸せになるの?と思ってしまうかもですが、それはありません。どちらかというと人間たちにいろいろ起こります。会話が多い読みやすい本です。

『アンハッピードッグズ』近藤史恵著 中央公論新社 1999年

『約束の森』〜孤独な男とドーベルマン

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これは、なんという分野の小説なのかな。推理小説であり、ハードボイルド小説でもある。今まであまり読んだことがない、警察がたくさん出てくる物語でした。

主人公の奥野は元警視庁公安部の隊員。妻が殺害されたことがきっかけで退職しました。ある時、旧知の人間から、とある作戦の仕込みに協力してほしいと頼まれ、森の奥深くにあるモーターモウテル光芒に就職します。そこには、以前、客に置き去りにされたドーベルマンのマクナイトがいました。前職で職業犬と接したこともあった奥野はマクナイトに興味をもちますが、このドーベルマンはとある理由から人を信頼できなくなったのです。

そんな一人と一匹が、共に暮らし、徐々にマクナイトの心の氷が溶けていくのがこの小説のひとつの読みどころです。そして、もう一つは、こちらが物語の本筋なのですが、実は奥野が協力している作戦とは別のおとり作戦が動いているようで、二重の作戦が重なり合い、物語を複雑化させていきます。本当の敵は誰なのか? そもそもおとり作戦と言っているが、捕まえようとしているグループは実在するのか? 前半は「?」の多い展開ですが、後半はすべてが一気に動き出し、読み手に息つく暇を与えません。

警察ものではありますが、もう一つ僕が印象に残ったのは、無戸籍問題のこと。ある事情により戸籍のない女性がおとりとして配置されるのですが、彼女が無戸籍であるがゆえに背負わされた苦難はリアル。現実社会でも問題になっていることなので、興味深かったです。

かなり分厚い本ですが、厚さを感じさせません。大型犬好きな人にはおすすめ。なにしろ、ドーベルマン以外に、シベリアンハスキーも出てきますから。必読です。

『約束の森』沢木冬吾著 角川文庫 2014年

オススメ犬本2016〜小説、エッセイ、漫画、実用書、どこにでも犬! | the WOOF イヌメディア

この原稿を書いている今日は、東京で初雪! 今年は雪、早かったですね~ ”犬は喜び庭駆け回り♪”という歌の通り、ぞんぶんに遊んだ友だちも多かったのではないかなあ。僕はね、寒いの、ちょっと苦手なので、どっちかというとこたつで丸くなる派かな。あ、猫じゃないですけど(笑)。 …

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