みなさーん、こんにちは。東京の読書犬ぐりです。最高気温が10度を下回る日も出てきて、いよいよ冬本番!という感じですね。
りんごがおいしくて、ついつい食べ過ぎちゃう僕。冬は太りやすいから気を付けないと(笑)。
「私にできることは?」
今日ご紹介するのは『犬に名前をつける日』(山田あかね著 キノブックス 2015年)です。山田あかねさんはテレビ番組や映画をつくる人。自分のかけがえのないパートナーだった、ゴールデンレトリーバーのミニがガンで亡くなったことをきっかけに、犬の命をテーマに取材を始めた山田さん。その中で彼女が経験した出来事が、ありのままに書かれたのが本書です。
これは、一頭の犬を亡くしたごく普通の犬好きが、犬のために人生を賭けた人たちと出会い、自分でも何かできると気づくまでのすべて、本当のお話です。(p.3)
と、ご本人も説明していますよ。
ミニは、著者の仕事がのりにのっていた2010年、突然病に倒れます。それまで、仕事で多くの獣医師や動物関連の仕事を取材したことがあった山田さんは、そうしたネットワークをつかってミニを助けようと奮闘します。しかし、病気の発覚から1カ月後に、ミニは天国へ旅立ちました。
ぼう然自失の山田さん。自分のとった行動は合っていたのだろうか。ミニにとってそれは最善だったのだろうか、と悩み、苦しみます。そうした中で、一度、ミニの先祖の故郷、イギリスへ行ってみようと思い立ち、旅に出るのです。そして、イギリスのアニマルシェルターや、ゴールデンレトリーバー発祥の地、そしてゴールデンのブリーダーを訪ねました。
特に印象的なのがブリーダーです。広い土地で、実にのびのびと暮らしている犬たち。そして、ゴールデンを飼いたいと希望してきた人と面談するブリーダーは、ひじょうに細かく、相手の暮らしや家族構成などを聞き、本当にゴールデンが飼えそうかどうか、犬が幸せな生活が送れそうかどうか、を調べていました。ペットショップで気に入った犬をひょいと買える日本とはだいぶ文化が違うようです。
犬の幸せが最優先
さまざまな刺激を受けて帰国した著者は、もう一度渡英します。一度訪ねて忘れられなかったアニマルシェルターでボランティアをするためです。そこで、飼い主を失った犬や猫たちが、新しい家族と一緒に新しい生活を始めることが、自然と行われている現実を見て、驚いて帰国します。
そして山田さんは考えます。
自分が撮らなくてはいけないのはここではなく、日々多くの犬猫が殺処分されている日本の現状ではないか。理想を語る前に見なくてはならないものがある。やっとそのテーマに気づいたのです。(p.94)
つまり、イギリスの素晴らしい現状を伝える映像を撮るのではなく、犬猫たちが過酷な環境におかれている、日本の現状から目をそらしてはいけないと。そして山田さんは、まず千葉県で、毎週動物愛護センターに通い、助け出せる犬を助け出しているNPO法人「ちばわん」の活動を取材します。ひじょうに効率的でよく考えられた「ちばわん」の細分化された活動。多くのボランティアたちは、自分たちができることを、できる範囲で一生懸命に続けていました。
「ちばわん」の活動場面で僕が一番印象的だったのは、犬の譲渡会での出来事です。ある女性が一匹の犬を引き取りたいと希望します。その犬の預かりをしているボランティアは、女性に住居環境や日常生活のことなど、細かく聞き取ります。そして、女性の年齢(少し高齢)についても率直に指摘します。そして最終的に「小型犬のほうが向いていると思う」と、申し出を断るのです。引き取ってもらえるなら誰でもよいわけではない。ここにいる犬たちは、一度飼い主との別れを経験している。そういう経験を二度としないためにも、確実な飼い主にお願いしたい、という思いからです。本当に犬の立場に立っての行動に、感動しました。
行動力が犬を救う
さて、「ちばわん」の取材がきっかけで、山田さんはもうひとつの活動に出合います。東日本大震災で爆発した東京電力福島第一原発。その半径20キロは立ち入り禁止区域となりましたが、多くの人がすぐに戻れると思い、ペットをはじめとした動物たちをそのままにして避難しました。しかし実際には迎えに行くことはできず、体力がもたずに死んでしまう子、放浪している子など、悲惨な状況となっていました。そこで多くの動物の命を救い、栃木県のシェルターへ保護したのが、「犬猫みなしご救援隊」。代表はパワフル女性、中谷由里さんです。山田さんは中谷さんの活動を取材して、またあらたな気づきを得るのです。それは、犬や猫を救うために、自分ができることをする、という行動力。中谷さんの行動力はずば抜けていて、スケールも半端じゃありません。詳細は本で確認してくださいね。
いろいろな出会いから、山田さんは自分にできること、として映画をつくりました。それが、この本と同名の作品です。もうDVDにもなっているって。早く観なきゃ!
愛犬ミニとのお別れから、これだけ多くのことを成し遂げた山田さん。そして、出会った人、動物たちに刺激を受けて、山田さん自身も自分ができることを模索し、行動に移します。すごいなあと思います。きっとミニも天国で、よろこんでいるのではないかなあ。ぜひ皆さんも、読んでみてくださいね。
Featured image credit localpups / Flickr
読書犬”ぐり”はこれを読む!『犬部!』〜北里大学獣医学部、全力動物保護の記録 | the WOOF
みなさんこんにちは! もう初夏といっても良い季節。お弁当持ってピクニックなんて、いいですね~。 最近はキャンプもはやっているみたいですが、僕は未経験。いつか行ってみたいな。自然の中で、ゆったりするのって、いいんだろうなあ…(遠い目)。もちろん本を持って行って、ゆったり読むんだ。至福の時間になりそう。