いつも脇にはポメラニアン~『犬に埋もれて』

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皆さんこんにちは! WOOFOO天国出張所勤務、読書犬パグのぐりです。

この記事がアップされる頃は、そろそろ新緑の季節になっているのかな? そういえば、春の山菜っておいしいんだってね。地上での飼い主だったNさんは、なぜか無類の「苦い物好き」。だから、ふきのとうが大好物でね。ふき味噌をあったかいご飯と一緒に食べるのが大好きってうっとりしてた。春にしか味わえない貴重なものだから、よけいにおいしく感じるんだろうね~。

あの名演出家とポメラニアン

犬に埋もれて

今回ご紹介するのは、日本を代表する名演出家、久世光彦さんの著書『犬に埋もれて』(久世光彦著 なかやまあきこ写真 小学館 2006年)です。久世さんは2006年に急逝されたのですが、その直後に出版されたのがこの本。久世さんの愛犬であるポメラニアン、アッちゃん、コタロー、ムー、ポーたちの写真がふんだんに納められています。

みんな柴犬カットにされていて、丸々、コロコロしていてね。くまちゃんみたいでかわいいの。現に、散歩に連れて行くと、子ども達が寄ってきて、「くまさんみたーい!」と言ったそうです。このカットは久世さんのお好みだったそうで、どのポメさんも、みんなオールシーズンサマーカットだったそうです。

犬好きの二人の話は尽きず


image by Edwin Lee / Flickr

文章は、絶筆となった『夕すげ物語』をはじめ、さまざまな雑誌に掲載された生前の久世さんによる犬に関する文章が掲載されています。

どれも犬と久世さんがいる情景が目に浮かぶような、素敵な文章ですが、中でも捧腹絶倒なのが作家・檀ふみさんとの対談「犬は子ども、猫は恋人」です。

壇さんといえば、お父様の作家・壇一雄さんが犬好きで(といっても、飼い始めるのは一雄さんだが、結局世話は家族がする)、秋田犬を飼っていたことでも有名です。ふみさんはそんなお父さんのもとで、常に犬のいる暮しをしていましたが、独立されてからは二人のお兄さんが飼っている犬のうち、「バジル」というゴードン・セッターの世話を任されています。これが元気な猟犬で、力も強い。散歩では怪我をさせられたこともあるとか。なかなか大変ですね。

バジルは立派な「妄動犬」で、熱烈なキッスを浴びせて私の前歯を折ったり、六年前にはバジルに引きずられての散歩中、暴走してきた自転車にはねられて頭を五針縫い、新聞紙上をお騒がせしたり…(p53)

ね、かなり、はげしいでしょ…。

他にも、飼うならオスがいいか、メスがいいかとか(ちなみに壇さんは完全に「メス」派)、犬がいいかとか猫がいいかとか、いろんなことが語られるのですが、なるほどなあと思わせられたのは、犬はべつに何か芸ができなくていもいい、ただただ、家路に向かう車の中で「犬が待っていてくれるな」と思わせてくれるだけでいいんじゃないか、という久世さんの言葉でした。

確かに僕たち犬は、いつも、飼い主さんと一緒にいたい、近くにいたいと思っている。留守番するときもあるけれど、帰ってくるとほんっとに嬉しくて、それを表現しないといられないんだよね。檀さんも久世さんもそれが犬の特徴であり、犬を飼う醍醐味であると思っているようです。

健康のバロメーター


image by Edwin Lee / Flickr

もう一つ興味深かったのは、僕たち犬のうんちのこと。先だってご紹介した中野孝次さんの『犬のいる暮し』にもあったのですが、犬のうんちというのは、飼い主にとってひじょうに大きな関心ごとである、ということが、壇さんたちの対談にも出てきます。そこから犬の健康がわかるし、ちょっとでもやわらかければ心配になり、しっかりしたのが出れば「よし」と思うと。まったく違う本で同じような話題が出たことにちょっと笑ってしまいました。でも確かに、健康のバロメーターの一つだからね。きっとどの飼い主さんも散歩中にしっかりチェックしてくれているんだと思います。

久世さんの絶筆となった作品「夕すげ物語」は、飼い主のおばあさんが亡くなって、家に取り残された3匹の犬たちの物語。久世さんは犬版の「ロビンソンクルーソー」のような作品を作ろうとされていたそうです。無人島ではないけれど、人のいない家の中でどう生き延びていくのか。3匹のモデルになったのはもちろん久世家のポメラニアンさんたちでしょう。それぞれに個性があり、役回りも違う。この3匹がどうやって暮らしていこうとしていたのか、それは久世さんの頭の中にあったけれど、残念ながら作品として完結はすることはありませんでした。

久世さんこっちの世界にいらっしゃるのであれば、聴いてみたいな。どんな結末にしようとしていたんですかって。あんな素敵なドラマをいくつもつくられた方なんだもの。きっと犬好きにはたまらない作品になっていたのではないかなと思います。そんなことにも思いを馳せながら、読んでみてくださいね。


犬に埋もれて
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Featured image creditEdwin Lee/ Flickr

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