読書犬「ぐり」はこれを読む!『医者が泣くということ』〜小児科医・細谷先生とナディア

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皆さんこんにちは。読書犬・ぐりです。

今日は忙しい人にも読みやすい、日記形式でつづられたエッセイ『医者が泣くということ』(細谷亮太著 角川書店 2007年)を紹介しますね。


小児科の先生の日常は?

著者の細谷先生は聖路加国際病院の小児科医。毎日たくさんの子どもたちと接し、時には患者さんとの別れにも直面します。このような大きな病院は、重篤な患者さんも多く、小児科病棟でも亡くなる子がいるのです。その度に医者が泣いていては仕事にならん、という人もいるかもしれませんが、細谷先生は涙します。本のタイトルはそんなところからつけられたのかもしれません。

医師として、また時には俳人として、忙しい毎日を送る細谷先生の日常が、ありのままにつづられた一冊です。

愛犬ナディアとの別れ

その内容の本のどこに犬? と思われた方。この本の中には所々に細谷先生の飼い犬、雑種犬のナディアが登場します。もともと飼っていたビーグル犬と野良犬の間に生まれた5匹の子犬のうちの1匹がナディア。そんな彼女ももう14歳。そして本の中で1歳年をとって15歳になります。お母さん犬は純血のビーグル犬で、外で飼われていたらしいのですが、ナディアは室内犬。時々一人留守番の腹いせでいたずらしては叱られたりもしているんだけれど、家族に囲まれて平穏に暮らしていたようです。

ただ、やっぱり犬の15歳ってかなり高齢。ちょっとずつ弱っていき、著者が山形の実家にいるときに様態が急変し、亡くなってしまいます。すでに社会人になっているお子さんもいて、それぞれが忙しく過ごしていた細谷家。それでもナディアのお通夜とお葬式には家族全員が揃って、彼女を見送りました。

細谷先生は数年前から四国のお遍路を歩いています。ナディアが亡くなった後の5月の連休に出かけた四国の知り合いのお宅で、16歳の雑種犬に出会います。

先日死んだうちのナディアとつい重なって、もうナディアとは会えないんだなあとしみじみする。(本書p201)

飼っていた動物との別れは本当につらいでしょう。僕たち犬だって、大事にしてくれた飼い主さんとは別れたくないもの。でもこうやって、思い出してもらえることは、天国にいるナディアにとっても嬉しいことだと思います。

小さき者へのまなざし

さて、この本には、もうひとつ、犬の話題が出てきます。それは、聖路加国際病院の小児病棟で行われている動物介在療法。以前ここに入院していた末期の小児がんの女の子の「犬と遊びたいなー」というひと言から始まったこの取り組みでは、隔週木曜日に資格を持つ訪問犬が飼い主さんと一緒にやってきて、子どもたちと交流します。以前ご紹介した『ヘンリー人を癒す』(山本央子著 ビイング・ネット・プレス 2007年)にも通じる内容で、ちょっと嬉しくなりました。

皇太子妃雅子様はご自身も犬を飼われていることもあり、この活動に興味を持たれ、細谷先生が勤める病院にも幾度も足を運ばれています。本書にはそのご様子も出てきますよ。


小児科医として、細谷先生はいつも患者さんの子どもたちから多くのことを学んでいます。生きている年数は違っても、子どものことを心から尊敬していることが、文章から伝わってくるのです。愛犬とのかかわりの記述はそれほど多くはないですが、子どもや犬といった小さき者への、温かいまなざしにあふれたこの本を、ぜひ多くの人に手に取ってもらえたらと思います。


医者が泣くということ
医者が泣くということ

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細谷 亮太
角川書店
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