皆さんこんにちは。僕は東京で暮らしているパグ犬の「ぐり」です。今日は、セラピー犬のことが書かれた1冊の本を紹介しますね。とっても感動的な本です。
本の題名は『ヘンリー、人を癒す』(山本央子著 ビイング・ネット・プレス 2007)。セラピー犬という言葉を聞いたことがありますか? 病院や老人ホームなどへ飼い主さんと一緒に出向き、そこにいる方々と交流する犬のこと。題名のヘンリーは、アメリカと日本で活躍したセラピー犬の名前です。著者の山本央子さんが、ヘンリーとの出会いから、彼と一緒にボランティア活動をした様子までを、とってもわかりやすく書いています。
山本さんは30代で単身渡米。ニューヨークで暮らし始めます。結婚や仕事のことをはじめ、いろいろな悩みをかかえていたある日、ひょんなきっかけから、雑種犬のヘンリーと出会います。出会いの場所はASPCというアニマル・シェルター。保健所から動物を引き取って犬の訓練などを行っているところです。
ニューヨークでの、1人の女性と1匹の犬の暮らしは、当初はとっても大変なものでした。ヘンリーは賢くて、食いしん坊で、遊ぶことが大好き。山本さんは必死でしつけようと頑張るのですが、ことごとく裏切られてしまいます。でも、彼女はあきらめませんでした。ヘンリーと、心を通わせて、お互い楽しく暮らしたい。そのためにはどうすればいいのだろうと、本屋で犬の訓練に関する本を読み漁ります。
そして、読んでは実行してみる中から、少しずつヘンリーとの信頼関係が築かれ、山本さんはヘンリーが言おうとしていることを、彼の表情やしぐさから読み取れるようになっていくのです。
何度も大きな壁にぶつかった彼女が、ヘンリーの訓練をあきらめなかったわけは、ASPCからヘンリーが自宅にやって来た日に、養育日誌に書いた次の言葉にあります。
一月二十六日、ASPCAからヘンリーが私のところにやって来た。教えなければならないことは山ほどあり、私も何も知らないけれど一緒に頑張ろうね。沢山の人に愛してもらえるようにちゃんと育ててあげるからね。母ちゃんの約束やからね(本書p.40)
彼女はどんなにくじけそうになっても、このヘンリーとの約束をしっかりと守ろうと、頑張ったのです。
そして飼い主と飼い犬という関係ではなく、お互いがパートナーとしてかけがえのない存在同士になった頃、山本さんはボランティアをしたいと考え始めます。様々な縁があって、デルタ・ソサエティという団体に出合い、講習会や技能試験を経て、ヘンリーはセラピー犬として正式に認められます。
施設訪問で出会った、たくさんの人たちとヘンリーの交流の中では、驚くようなことがたくさん起こります。本の後半の醍醐味は、読者の側が、まるで山本さんとその現場を見ているような気にさせるほど、具体的にそしてわかりやすく書かれたいくつもの交流の記録です。詳しい内容は本書へ譲ることにしますね。
この本は、ある一人の女性の人生録でもあり、僕たち犬が、どういう動物なのかがよくわかる解説書でもあり、そして、セラピー犬、ボランティア、福祉、という、様々なトピックがやさしい言葉で語られている、内容の濃い一冊です。少し堅そうだなって思いました? いえいえ、そんなことはありません。読みやすい文章ですし、随所に出てくる山本さんが考えていたことや、ヘンリーが考えていた(であろう)言葉が、みんななぜか関西弁なのが、クスッと笑えるの。
犬と暮らしている人、犬と暮らしたいなと思っている人、今の犬との暮らしに悩みを抱えている人、セラピー犬のことを知りたい人など、いろんな人に読んでもらいたいなと思っています。
また、心に留まる本があったら紹介しますね。では今日はこの辺で。
ビイング・ネット・プレス
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