皆さんこんにちは。この原稿が掲載される頃は、秋の風が吹いているかな? それともまだ、残暑が厳しいのかな? 暑さに弱い僕は、秋のあの、さわやかな風を切望しながらこの原稿を書いています。
10人の住人が揃ったら…
さて、風、といえば、この映画!『風が強く吹いている』(脚本・監督:大森寿美男、主演:小出恵介、林遣都、松竹、2009年)です。僕、夏の甲子園と並んで好きなのが、正月の箱根駅伝。そう、この作品は、箱根駅伝を目指す大学生たちの、青春映画です。
都内にある私立寛政大学、その陸上部の寮が竹青荘です。住人はこの建物のことを、愛情をこめて「アオタケ」と呼んでいます。9人が入居しているこの寮に、4年の清瀬灰二(ハイジ)に誘われて1年の蔵原走(カケル)が入ってきます。全部でメンバーが10人になったところで、ハイジはある計画を発表します。その計画は、「この10人で箱根駅伝を走る」。え?! 4月、つまり春ですよ? 今から? というスタートです(陸上未経験の僕でさえ、無謀とわかるくらいですから、かなりめちゃくちゃな目標だよね)。
物語の意外性もさることながら、この10人のメンバーがそれぞれかなり個性的。たとえば、2浪して留年もしている平田彰宏。25歳で最年長だが、まったく偉ぶりません。ヘビースモーカーのため、ニコチンから、ニコチャンというあだ名をつけられています。それから柏崎茜。彼の部屋は漫画だらけ、つまりオタク。端正な顔立ちから王子とあだ名が付けられています。運動は苦手。他にもクイズ大好きなキング、在学中に司法試験に合格しているユキ、双子の兄弟、ジョータとジョージ、アフリカからの国費留学生のムサ、田舎育ちで、小学校通学で10キロ歩いていた神童など、個性豊かなメンズ揃いです。
無謀なことは承知の上で
ハイジは高校まで、陸上の有名な選手でした。しかし、ある理由から一線を退き、弱小陸上部のある寛政大学へ入学したのです。彼は4年になった春にカケルと出会い、とうとう自分の計画が実行に移せる、と動き出します。それにしてもですよ。箱根駅伝? えっと、箱根駅伝は、全10区ですよね? ということは、補欠も何もなしで、この10人が走るということ?! と、観ている僕は、しょっぱなからボーゼンとしました。だって、普通、箱根大学に出る大学というのは、ものすごくたくさんの陸上部員を抱えた大学で、部員の中でもエース中のエース10人が出場するものでしょう?
そんなことは、ハイジもカケルも承知しています。カケルも高校までは陸上部で活躍していたのですが、あることがきっかけで暴力事件を起こし、退部。両親ともうまくいかなくなり、家出同然で上京しました。カケルは当初、このハイジの無謀な計画に猛反対しますが、ハイジの決意は固く、トレーニングが始まります。予選の前に記録会で結果を出さなくてはならず、かなり走り込む10人の男子たち。さて、そこにワンコもいるのです。「ニラ」という、映画の中ではたぶん豆柴ちゃん。竹青荘前の犬小屋で飼われていて、みんなに可愛がられているの。トレーニングのときは一緒に走るし。この子、本当に可愛いんだ~。走る姿はきゅんとくるよ。
さまざまな苦労の末に、10人は箱根への切符を手にします。となると、さあ、誰が何区を走るのか? その配役には、ハイジが仲間たちを本当に大事にしてきたこと、そして彼らの特徴を知り尽くしていることがよく現れています。
箱根、本番はどうなるのか? そこは、観てからのお楽しみです。
原作本を読んでみた
「走るってどういうことなんだろう?」「長距離選手の褒め言葉って、早い、じゃないよね」など。印象的なセリフが散りばめられているこの作品。見応えあるなあと思ったら、なんと、原作者はあの、三浦しをんさんではありませんか。うわあああ、先に本を読んでおけばよかった!とも思いましたが、たまには逆もありだよね、ということで、DVDを観たあとに、原作を読みましたよ。
原作もよかった。やっぱり細かい点は、ディテールが丁寧に書き込まれてる本のほうが上手。でもね、全体的には、かなり原作に忠実に作られた映画だなという印象を持ちました。気持ちの描写も、丁寧に描かれている原作に近いと感じました。まあ、登場人物がすべて映画で見たままの顔しか浮かんでこないのは、先に映画を見た宿命ではありますが、それはそれでまたいいのかなとも。本にはいろんな楽しみ方があっていいもんね。というわけで皆さん、原作を知りたい方はまず本から、イケメンが気になる(!!)方はDVDからどうぞ~。
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Featured image credit Jussi / Flickr