読書犬”ぐり”はこれを読む!『君と一緒に生きよう』〜犬の命、まるごと引き受けられますか?

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みなさんこんにちは。東京在住の読書犬・ぐりです。5月。木々の緑もだいぶ濃くなってきましたね。

お散歩にもいい季節。緑の香りを感じながら歩くの、気持ちいいから大好きです。飼い主のNさんも「春っていいわ~」と言いながら、足取り軽く、散歩しているよ。

著者自身が里親になって生まれた連載

君と一緒に生きよう (文春文庫)

さて、こうやって毎日、朝夕、大好きな飼い主さんと散歩できるということが、どれだけ幸せな環境か、ということを再確認させられた本を、今回はご紹介しますね君と一緒に生きよう。

君と一緒に生きよう』(森絵都著 文春文庫 2012年)は、作家の森絵都さんが、毎日新聞に連載した原稿をまとめて、加筆修正したノンフィクション作品です。これは、さまざまな理由から、飼い主の手を離れ、ボランティアの方々の尽力で新しい里親さんと出会った犬たち物語集。そういえば、先だってご紹介した馳星周さんの『陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ』でも、譲渡犬がたくさん登場したけれど、今回はノンフィクションなので、より身に迫るものがありました。

著者の森さんご自身も、小さいころから犬を飼っていて、犬が大好き。でも、可愛がっていたシーズー犬のベルが16歳で亡くなった後は、激しい喪失感にみまわれて、金輪際犬は飼わないと決心します。ですが、知り合いから

「もしもいつかあなたが犬を飼うのならら、行き場のない犬の里親になってあげて」(p.13)

と言われ、何気なくインターネットの関連サイトなどを見るようになります。そしてある犬にくぎ付けになり…最終的にはその犬を家族として迎えるのです。そんな森さんが、その犬、スウとの出会いをきっかけにして、さまざまな境遇の犬とその飼い主たちを取材し、この連載が生まれたそうです。

苦労が多くてもみんな明るい

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image by tsik / Shutterstock

全く犬の飼育経験がなかった若い女性が、二頭の保護犬を家族として迎え入れる。捨てられていた母子犬7頭のその後の運命。猟犬として使い捨てされ、山の中を放浪していたセッター。ある土手でホームレスに保護され飼われていたたくさんの犬たち…。さまざまな運命をたどる犬たちの物語は、時に目を覆いたくなるような、辛い現実も映し出します。

中でも衝撃的だったのは、「オレオ」の章。ここに「回収車」という車が登場します。飼い主が、飼えなくなった犬や猫を、定期的に保健所の車が回収するのです。そんなことがあるなんて、知らなかった。僕の飼い主さんも言葉を失っていた。この回収車に同行して、犬を保護する活動をしているボランティアさんもいるんだ。その一人、大岩祥子さんが保護した仔犬の中に、大変な病気を背負ったオレオがいました。オレオは自分の口から食べ物を直接食べることができない難病で、ほうっておかれたら確実にすぐに亡くなってしまう運命だったのですが、大岩さんが保護し、連れて行った動物病院のスタッフの西川さんと出会い、多くの人の献身的なサポートによって、生きることができました。

保護犬を受け入れるということは、ペットショップで仔犬を買うのとはまた違った難しさがあります。ひどい虐待を受けて、人間を怖がる子も多いですし、おびえているために人を噛んでしまったり、また、病気を持っている子も少なくありません。でも、この本には、苦労しながらも、犬たちに無条件の愛情を注ぐ里親さん、そしてその愛情を全身に受けて、少しずつ傷を癒し、立ち直っていく犬たちがたくさん出てきます。

犬にだって命がある

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image by Adya / Shutterstock

犬だって、命を持っているんだ。おもちゃじゃないんだ、って、みんなわかっているようで、まだまだそうではない人も多いみたい。それは残念なこと。でも、あまり深く考えず、「かわいいから」「楽しそうだから」という理由で気軽に犬を飼いはじめ、手に負えなくなって捨ててしまった犬たちが、どんな運命をたどるのか。運よく保護されて新しい家族に出合える子もいるけれど、それはまだまだほんの一握りで、多くの犬は保健所へ連れて行かれてしまいます。

著者の森さんのすごいところは、こうした保護犬の取材をした後、保護されなかった犬たちがどういう運命をたどるのかを、しっかりと自分の目で見て、取材し、連載の最後に書いたことです。保健所で行われていることは、壮絶です。でもそこから目をそらしてはいけないんだと思います。犬を飼いたいと思っている人、飼っている人、それ以外の人もみんなが知っていなくてはいけなくて、そして、保健所に行かなくてはならない犬をゼロにしなくてはいけない。そんな決意が込められた作品だなと思いました。

なんだか最後に重くなっちゃってごめんなさいね。でも、いろんな意味で、沢山の人に読んでもらいたい本なので、紹介しました。


君と一緒に生きよう (文春文庫)
森 絵都
文藝春秋 (2012-09-04)
売り上げランキング: 147,562

Featured image from vvvita / Shutterstock

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