みなさんこんにちは! WOOFOO天国主張所勤務の、パグ犬・ぐりです。
地上ではだんだん春が近づいてきたのか、曇ったり、少し雨が降ったりする日も出てきたみたいだね。この季節特有の気温の乱高下も続いているみたい。そして、花粉が‥‥。豪快なクシャミと赤い目をした方々を見かける季節。どうぞお大事になさってくださいね。
さあ、今回もとっておきの本をご紹介します!
保護されて、大事にされて…
えびぞうくんは、迷い犬。ある日神戸市の動物管理センターへ連れてこられます。オスの雑種、生後2か月。すごーく人を怖がって、いつもびくびくしていたそうです。
今日ご紹介するのは、このえびぞうくんが、新しい家族に出会うまで、そして出会ってからを追った写真本『ラスト・チャンス!~ぼくに家族ができた日』(児玉小枝著 WAVE出版 2013年)です。
飼い主もいず、町中を歩いていたえびぞうくんのような犬は、保健所へ連れて行かれ、新しい飼い主に出会えなければ殺処分されてしまうケースが多い中、神戸市では、保護犬と新しい家族をつなぐ譲渡事業に取り組んでいます。ボランティア団体が協力しているそう。えびぞうくんも、保護された後、このボランティアのお兄さんやお姉さんに優しくお世話してもらいます。
ここへ来るまでに、人間からひどい目にあわされたのか、特に男の人をこわがるえびぞうくん。でも、ボランティアスタッフが本当に温かく接することで、「この人は、ぼくの味方なのかも」と少しずつ心の氷を溶かしていきます。お兄さんにギュッとだっこされているえびぞうくんの目が印象的です。
前脚と手が語るもの
この施設には、時々お客さんがやってきます。そして、えびぞうくんの仲間たちは、1匹、また1匹と、そういったお客さんと一緒にどこかへ行ってしまうのです。仲間を見送っていたある日、えびぞうくんのところにも、一人の優しそうなおばさんがやって来ます。「よしよし、いいこね」と優しくなでてくれるんだけれど、何しろ人間不信のえびぞうくん、とまどってしまいます。おばさんに抱っこされたえびぞうくんの「どうしよう…」っていう表情が、その時の彼の心の中をよく表しているよ。
1か月後、またあの優しいおばさんが現れて、えびぞうくんに、一緒におうちに帰ろうって言うの。そして、おばさんの旦那さんが、えびぞうくんをボランティアのお姉さんの腕から抱き取ります。
新しいお家に帰ったえびぞうくんは、新しく「エル」っていう名前をもらって暮らし始めます。ボランティアのお兄さんお姉さんのおかげで少しずつ心の氷が溶け始めていたエル。でもまだまだ、初めてのことにはなかなかなじめない。そんなエルに「どうしてできないの!」なんてことは一度も言わず、根気強く、エルが楽しく暮らせるようにと手を差しのべるおばさんとおじさん。エルも少しずつ二人に心を開いていき、笑顔も見せるようになります。
僕、この本の中で、いっちばん好きな写真があってね。それは、おばさんの手のひらに、エルの前脚がのっている写真。ただそれだけの写真なんだけど、エルが安心して、おばさんに自分をゆだねていることが、すごく伝わってくる一枚なのです。こんな写真が撮れる児玉さんって、すごいなーって思った。犬と人の心を、その手の写真だけで伝えられているんだから。
著者と出版社の最強タッグ
命に向き合う人たちの目は、真剣でいて優しく、そして温かい。人間不信に陥ってしまったワンコは、そういう人たちに、ちょっとずつ癒されていくんだね。その過程が見事に描かれたノンフィクションです。
この本、WAVE出版という出版社から出ていますが、僕の飼い主のNさん、昔、ある高校で行われた授業の取材で、この会社の社長である、玉越直人さんに会ったことがあるんだって。その授業のテーマは「命」。そう、命の授業だったんだ。詳しい内容はもうあまり覚えていないらしいんだけれど、命に真摯に向き合っている玉越さんが、ガンにかかって生還した新聞記者さんと話していたって。そうか、だからこの本がこの会社から出たんだなって、なんか合点がいったよ、僕。
著者と、出版社の息がぴったり合った時、こういう素晴らしい一冊が生み出される。そんなことも考えながら、ページをめくってみてくださいね。
WAVE出版
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Featured image creditVictor Bezrukov/ Flickr