みなさんこんにちは~ 東京在住の読書犬、パグのぐりです。今月は、面白そうな本にたくさん出合えて、幸せです。なんで読書ってこんなに楽しいんだろうなぁ? きっと自宅にいながらにして、いろんな世界に瞬時にワープできるからだろうな~。
近所の犬が気になる
Featured image credit kayo ya / Flickr
ところでみなさん、近所に大好きなワンちゃんはいますか?
僕の飼い主のNさんは、次女のSちゃんを幼稚園に送る時、ある一軒の家の前を、ちょっとワクワクしながら通ります。そのお家の庭には、2匹のきれいなスピッツがいるからなの。いつも庭にいるとは限らないから、運よく彼らに出会えると「なんか今日はいい事ありそうな気がする」なんて言ってるよ。かわいいから、会いたくなるんだね。この前は、しばらく1匹しか庭にいなくて、かなり心配していたNさんでしたが、昨日くらいに「ぐり! 二人ともいた! 元気だったよ!」って嬉しそうに話していました。
今回ご紹介する『庭の桜、隣の犬』(角田光代著 講談社 2004年)には、これと同じような光景が出てくるの。主人公の房子(30代既婚、子どもなし、専業主婦)は、近所の家の飼い犬が、いるかいないかをいつも確かめます。
“宗二母の三つの紙袋を持ってやり、房子はナンシング坂をあがる。木幡さんちを通りすぎるとき、犬がいるのをたしかめた。しかし定位置にあの置物めいた犬の姿はない。散歩に連れていかれたのか。おみくじで凶を引いてしまったような軽い失望を房子は味わう。(p.109)
「わかるーこの気持ち!」ってNさん言ってた(笑)。あ、ちなみに宗二というのは、房子の夫の名前です。
主人公の特殊能力
この物語は、何か大きな事件が起こるかというと、そういうことはあまりありません。房子の日常をたんたんと追っていくかんじかな。ただその中で、ちょっと面白い設定なのが、この房子は人並み外れた記憶力を持っていて、特に小さいころはその記憶力をかわれてテレビ出演をしたりしたほどだったらしい。だけど、大きくなってからは別に何か特別なことがあるわけでもなく、旅行先で出会った宗二と結婚し、両親の援助を得てマンションを買い、そこで暮らしているのです。
小さな事件はいくつも起こります。宗二の母が地元から東京に出て来て、房子たちの家に泊まるのですが、上京の理由がなんと、お見合い。宗二の父は、よくいえば自由に生きた人でしたが、宗二が高校生のときに病気で亡くなっています。今では2人の子ども(宗二とその兄)も独立し、自分だけの人生になった母は、お見合いに挑むのです。
一方宗二は、仕事で帰宅が遅くなるからという理由で、職場からそう遠くないところに安アパートを借ります。合鍵をもらったものの、当初房子はその家の場所を知りませんでした。が、ある理由からその家を探し当てます。そこに、宗二の会社にいる女子が登場して…と、まあそのあたりは本を読んでみてくださいね。よくありそうなことと想像して読んでいると、結構覆されますから。
料理の描写が天下一品
房子の家族は、房子とその弟も結婚して家を出ているのですが、家族の誰かの誕生日というと未だに全員で集まる習慣があります。そこで出てくる、房子母のつくる料理がおいしそうなんですよね。角田さんて料理ちゃんとする方だったと思います(何かの記事で読んだ)。だからかな、描写がリアルで、まるで目の前にその料理を出されたかのような錯覚に陥る。これはかなりの技量がないとできない表現だと思います。
僕の飼い主のNさんは、もともとあまり食に興味のない人でしたけれど、結婚して、料理せざるを得なくなって、毎日何かしら作り続けて11年。「ぐり、最近私、やっとレシピ本見ないでも作れる料理が増えてきたよー。10年かかった」とか言っています。角田さんの足元にも及ばない料理の腕だと思うけれど、そのNさんが読んで「料理したくなった」と言うのですから、魔力のある本です。
帯には「夫婦ってなんだろう? 愛でもなく嫉妬でもない、何かもっと厄介なものを抱えて、私たちはどこへ向かうのだろう?」と書かれています。この小説の内容をよーく表しています。その辺にいそうな人たちの、よくありそうな光景なのですが、ありそうでいて、最終的には「へえ」と読み手をうならせるストーリーに仕立てられているのが、やっぱりプロの仕事なんだなあと思います。
Featured image credit Martin Astley / Flickr
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