オオカミとイヌの進化と現在~『オオカミと野生のイヌ』

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皆さんこんにちは~。お元気ですか? この原稿が記事になるころには、もう梅雨入りしているのかな?

僕は3年前からこちら、WOOFOO天国出張所にいるのですが、地上にいたころは、梅雨が苦手でね。ジトジトに耐えられず、すぐにクーラーをつけてもらっていたよ。飼い主だったNさんも一年の中でいちばん梅雨が苦手だったみたい。まあでも、苦手とわかっていれば、対処法も考えられるから、それはそれでいいのかな? みなさんも湿気に負けずに楽しいワンワンライフをお送りくださいね。

図鑑でもあり読み物でもあり

オオカミと野生のイヌ

さて今回は、図鑑のような立派な本をご紹介します。『オオカミと野生のイヌ』(監修 菊水健史、本文 近藤雄生  2018 エクスナレッジ)は、遠吠えをする美しいオオカミの表紙が印象的。思わず手にとりました。

タイトル通り、この本は、オオカミと野生イヌについて、写真とわかりやすい文章で紹介しています。はて「野生イヌ」ってなんだ? と思われた方、僕もそうでしたよ。本文によれば、

「野生イヌ」とは、私たちに身近な、いわゆる「犬」(イエイヌ)を含め、すべてのイヌ科動物を指す言葉として本書では用いている。しかし決して、まずイヌがいて、それが野生化してイヌ科動物全体になったということではない。(p5)

だそうです。僕たちみたいに、人間と一緒におうちで暮らしている犬だけでなく、野生として生息しているイヌ科の動物もすべて含むということです。

人とオオカミ

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image by Eva Blue / unsplash

この本、読み始めたら一番最初にびっくり情報が。なんと、オオカミというのは、人間を除くすべての哺乳類の中で、かつて最も広い地域に生息していた動物なんだって! すごい適応力。普通はその土地にある食べ物で生きていける動物がそこに生息するけれど、オオカミはどこでもその土地に順応する能力がものすごく高かったんだね。

人間はかつて、オオカミを恐れ、迫害し、各地のオオカミを絶滅の危機に陥らせました。でも20世紀に入ってからその間違いに気づき、自然との共存に目覚め、オオカミの存在の大切さにも気づいたのです。これってどこかで聞いた話と似ているぞ。そうそう、前回ご紹介したDVD『狩人と犬、最後の旅』でも似たようなテーマが語られていたよね。実は何を隠そう、あの映画の中に、ある夜、野宿をする主人公ノーマンと犬たちの前に、大きなオオカミが何頭か姿を現し、それはそれは印象的な遠吠えをしたシーンがあったのです。そこで僕はすっかりオオカミのとりこになった。だから今回この本が目に飛び込んできたんです。

日本でオオカミといえば、絶滅したニホンオオカミのことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。現在ではもう、はく製しか残っていません。日本には昔、北海道に生息するエゾオオカミとそれ以外にいたニホンオオカミの2種類がいたとされています。びっくりするのは、まだ日本がユーラシア大陸と陸続きだったころに生息していたオオカミが、日本がその後分離していったときに本州その他にいたオオカミはニホンオオカミとなり、エサの理由などから、小型化していきます。一方で、北海道はまだ大陸と陸続きだったことから、大きなオオカミの流入があり、ニホンオオカミとは違う進化を遂げたそうなのです。面白い。地理の歴史に生き物の歴史が重なると、すごーく興味深いストーリーが見えてくるんだね!

柴犬の遺伝子は狼に一番近い!?

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image by ヤブイヌ(Bush dog) By Photograph by Mike Peel (www.mikepeel.net) / wikipedia

さて、一方野生イヌのほうは? 本書によれば、野生イヌは4系統にわかれるのですが、その中で種が一番多いのがアカギツネ型系統とのこと。そうなんです、キツネも野生イヌに分類されるのです。この本の最初のほうに出てくるホッキョクギツネは、真っ白。僕たちがキツネと言われて思い浮かべる黄色と白の毛並みのキツネとはだいぶ違っていて驚かされます。

日本犬といえば、柴犬を思い浮かべる方も多いと思います。実は柴犬、多種多様なイヌ科の動物の中で、オオカミの遺伝子に一番近い犬なんだって!!2002年にスウェーデン王立工科大学の研究者によって発表されているそうです。では秋田犬は? 秋田犬の遺伝子もかなりオオカミに近いという研究結果が出ているそうです。また、なぜ同じ日本にいながら、柴犬と秋田犬はこんなにも大きさが違うのか?についても解説されていますよ。

他にも、どう見てもクマにしか見えない「ヤブイヌ」、まさかイヌ科だとは思っていなかった「タヌキ」、オオカミなのに海沿いで暮らす「バンクーバーアイランドウルフ」、コヨーテ、ジャッカル、リカオンなど、動物園では見かけたことがあるけれど、その生態はあまり知らなかった動物たちについても丁寧に解説されています。

「イヌ」「オオカミ」と一言でいっても、実はかなり多様な生態であるということを思い知らされました。わかりやすい解説は、その動物の住む地域やエサ、家族の作り方、特徴的な習性について、最新の研究結果を取り入れながら書かれていて、学術的にも楽しめる一冊となっています。Nさんの小学生の子どもたちも、美しい写真にくぎ付けでした。幅広い年代の方に楽しんでいただけると思います。


オオカミと野生のイヌ
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Featured image creditYannick Menard/ unsplash

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