皆さんこんにちは！！ 僕はWOOFOO天国出張所勤務中の読書犬・パグのぐりです。
さくらんぼにスイカ、野菜はとうもろこしや枝豆と、夏の作物がお店に出始めたって聞いたよ。どれもおいしいよね～。
地上で飼い主だったNさんちの小学生2人は、とうもろこしが好きすぎて、毎日でも食べたい！と言っているらしい(笑)。案外消化悪いからお腹に相談しながら食べてね！
犬に中華!?
さて今回ご紹介するのは、おいしい丼物も登場する短編小説集『おしまいのデート』（瀬尾まいこ著 集英社 2011年）です。実は僕、最近瀬尾さんの作品にはまってるの。優しくて不思議な、特に家族について書かせたら右に出るものはいないのではないか、というくらい独特な瀬尾ワールドを展開される作家さんです。家族といってもそれは、いわゆる両親と血のつながった子ども、というような家族だけではなくて、血縁以外のつながりも丁寧に描き出せるところが魅力だと思います。
タイトル通り、いろんな「デート」を切り取って書いている本書。その中の一篇にワンコが登場します。タイトルは「ドッグシェア」。犬を介して出会ったOLと大学生のデートが描かれています。
主人公の「私」は、5年間結婚していた夫と離婚。30代で会社勤めをしています。ある日、いつも通り会社帰りに公園の中を歩いていると、段ボール箱に入っていた捨て犬のポチ（彼女の勝手な命名）と出会いました。それからは毎日、会社帰りにポチに会いに行く私。でも、ポチのところへ行くと、いつもなぜかホカホカの中華料理が置かれている。ある時はギョーザ、ある時はエビチリ（!?）。犬に中華？ 私はビスコをあげているのに（それもどうかとおもうけど）。
その後、中華料理をおいていた若い男性と私は出会います。そして少しだけ犬のことに詳しい彼から、子犬だと思っていたポチはもうかなりの老犬であることを聞かされるのでした。住宅諸事情によりこの二人はポチを家に連れて帰ることができず、互いにここで面倒をみることに。
男性は優しい気持ちの持主。なんだけど、ちょっと行動がトンチンカンなところがあって、私をいらつかせます。でもそれはお互い様で…
物語の結末は、本書でご確認を！人の恋愛はいろんな形があるのだろうけれど、なるほど、こういう始まりっていうのもありなんだなーって思いました。
元不良少年と恩師
photo : Dagny Gromer/ Flickr
この短編集は魅力的な小説がほかにも。特に僕が感動したのが「ランクアップ丼」です。就職2年目の三好青年は、毎月24日の給料日に必ず決まったうどん屋で玉子丼を食べます。お相手は62才の「じいさん」。あららら、ここにも面白そうなデートが(笑)。
実はこのじいさんは、三好の高校時代の恩師。いろいろと家庭の事情のあった彼のことを、大きくあったかく見守ってくれた人。このあたりの描写は、元教師で現場経験のある著者の力量が存分に発揮されています（瀬尾さんは元中学校の国語教師）。学校の情景を瀬尾さんに書かせたら、間違いなくぐっとくる。きっとリアリティがあるんでしょうね。
三好は高校時代にお世話になったお礼に、毎月この玉子丼をじいさんと一緒に食べています。そして、デートの21回目、この日は訳あって、三好は玉子丼ではなく天丼をじいさんと一緒に食べようと意気込んでいました。だけど、じいさんはなぜか、うどん屋に来ず…
その理由は物語の最後に明かされます。さて、この青年とじいさんのデートは最後どうなったのでしょうか。ぜひぜひ読んで確かめてください。
ある時、ある人と出会って
photo : Vincent van Zalinge/ unsplash
世の中にはたーくさんいろんな人がいて、その人たち一人ひとりにまったく違う人生があって、その一人ひとりがふとしたことで他の人と出会って、また新しい人生が拓けていく。瀬尾さんの小説にはそういう人生模様が描かれているものが多いなと感じます。その辺にいそうな市井の人を主人公にしているのに、時に涙が出そうなくらいジンワリと心にしみてくるストーリになっているのは、みんな大事な人なんだということが、物語の背景にいつも流れているからなような気がします。僕が瀬尾さんの小説に惹かれるのは、だからかなって。
ちなみに、瀬尾さんのエッセイも面白いよ。特に先生時代のことを生き生きとつづった初期のエッセイ集『見えない誰かと』（祥伝社 2006）はおすすめ。ぜひあわせてご一読ください。
集英社 (2014-05-20)
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Featured image : Laura Dewilde / unsplash
