皆さんこんにちは! 読書犬、パグのぐりです。ご機嫌いかがですか?
僕は昨日、なぜか焼き芋をたらふく食べる夢を見たんだよね。季節違うし、なんでだろうなあ。お芋の値段はこの季節はあがっちゃっているから、なかなか食べられないんだけど、ま、食いしん坊だから見た夢だね。きっと。
「不思議ハンターばな子」の日常
さて今回ご紹介する本は『お別れの色』(吉本ばなな著 幻冬舎 2018年)です。吉本さんの小説は『キッチン』『TUGUMI』と、昔よく読んだなあ。それまで読んだことのない世界観だったような記憶があります。ちょっと不思議なかんじ? その後は大橋あゆみさんが作っていた雑誌『Arne』の中のファッションページに登場されたのを見かけたりもしました。吉本さん独特のかわいらしいファッションに惹かれました。
この本は、吉本さんが執筆されている有料メールマガジン「どくだみちゃんとふしばな」をまとめたエッセイ集です。もとがメルマガだからか、普通のエッセイ集とはひと味違うような気が僕にはしました。なんというか、ものすごく日常的な感じというか。内容としては、
「ふしばな」は不思議ハンターばな子の略です。毎日の中で不思議に思うことや心動くことを、捕まえては観察し、自分なりに考えていきます。(p14)
ということだそうです。ネットが初出だからか、全体を通して、文章に臨場感があって、吉本さんの、今そこにある日常を切り取っている、という感じがします。
フレンチブルのオハナちゃん
さて、吉本さんは大の犬猫好き。家では犬も猫も一緒に暮らしています。ちなみに人間は吉本さん夫妻と息子さんの3人です。犬は2匹。この本にたくさん登場するのはそのうちの1匹、フレンチブルドッグのオハナちゃんです。オハナちゃんは生まれつき体が弱く、そう長生きできないかもと危ぶまれていたにもかかわらず13歳という年齢になりました。
オハナちゃんは、年をとるにつれてだんだん自分でできないことが増えていき、介護が必要になりました。毎日出る汚れ物の大量のタオル、お水やエサ…オハナちゃんが少しでも快適に暮らせるように、吉本さんは心を砕きます。でも、お別れの日はやってきます。
吉本さんは、ご自身が父親(評論家の故吉本隆明さん)とは親友のような関係を築けた一方、母親とはいっしょに暮らしていなかったこともあって、それほど緊密な関係は築けなかったそうです。こうした身近な人との別れを経験し、ばななさんは、たとえ親であっても、その人のことを100%自分が知っていることはあり得ない、その人自身にしかわからない世界があっただろうから、という結論に達します。でもその後、犬とのことをこう書いています。
でも犬には自分しかいなかった。そう思うと、どうしても悲しく思ってしまうのだ。応えることができないほどのものをもらってしまったから。
自分の子どものように育て、親のように見送る。
そんなふうに、動物を「飼って」共同生活をすることの意味深さと矛盾に毎日打たれるような気持ちでいる。(p76)
この文章は、13年間生きたオハナちゃんを天国に見送ったのちに書かれています。吉本さんのオハナちゃんへの愛は、「あふれんばかりの」ではなく、確実に「あふれていた」くらい大きなおおきなもので、一方オハナちゃんが吉本さんに寄せていた信頼も愛情も、もう計り知れないものだったのだろう、ということが、文章からわかるような気がしました。オハナちゃん、よかったね、吉本さんちの子になれて。
作家さんの日々の暮らし
作家っていう職業がどんな感じなのかは、結構未知だなと僕は思っていて。昔の文豪はそれこそタバコをくゆらせながら書斎で万年筆片手に執筆(!?)なんていう姿を勝手にイメージしてしまうけれど、まさかそんな方達ばかりではないよね。
この本では、吉本さんの日常から、そうか、作家も一人の生活者なんだなということがわかります。それは、掃除や炊事の家事全般のことや、子育てのこと、たまの息抜きや旅行のこと、はたまた家を購入することやローンについて、までが書かれているから。
この本を読んで、もう一度吉本さんの小説が読みたくなった。作家の日常を知ることで、作品の感じ方が違ってくるような気もします。オハナちゃんはじめ、動物たちとの日常だけでなく、作家さんの日常ものぞける一冊です。
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