皆さんこんにちは。天国にいる読書犬・パグのぐりです。
暑さ、大丈夫ですか? こちらは激しい暑さというのはないので、地上の友だちたちは元気かなってちょっと気になります。お水、たくさん飲んでね。
ダサい!?
さてさて、ある日のことです。面白い犬本ないかな~とインターネットで検索していたら(あ、こちらにもネット環境、整っております・笑)、なんだかインパクトのある絵本の表紙が…。どう見ても、パグ。
そう、僕と同じ、パグ。それも毛色がブラックではなくフォーン。まさしく、僕。ということで、興奮してさっそく探してみました。ありましたよ。絵本ですよ。そこで初めてタイトルを見て、愕然としたのです。
『ダサいぬ』(ダン・ヤッカリーノ作 もとしたいづみ訳 講談社 2003年)。
え?!僕って、ダサいの!? うーん、悩ましいタイトルですが、とにかく読んでみました。
みんなにいろいろ言われて
主人公はパグのアルフレッド。名前はかっこいいねえ。アルフレッドはいつも周りにいる犬たちや鳥、金魚にまで「ダサいぬ」って言われちゃうの。
アルフレッドは悩みます。なんでみんな、自分のことを「ダサいぬ」って言うんだろう?
いびきを かくから?
がっついて たべるから?
この しっぽの せい?“(p.5-6)
ふむ。確かに僕も、いびきをかくし(パグのいびきって結構すごいよね)、ご飯大好きだから、バクバク食べるし、しっぽはくるんとしてる。でも、別にそれは「ダサいぬ」って言われるほどのことじゃないはずだよね。
そんな悩ましいある日のこと、アルフレッドの家の隣に新しい人が引っ越してきました。そしてどうもその家にも犬がいるみたい。
犬の声が聞こえたから、アルフレッドが「なにか?」と聞くと、向こうからも答えが! 犬のレックスでした。嬉しくなったんだけど、レックスと仲良しになりたいばかりに、アルフレッドはあるウソをついちゃうんだ。
その後、好きなものや嫌いなものが一緒で、会話がはずみます。でも、自分がついたウソが原因で、アルフレッドはレックスに会いに行けないのです。切ない…。
ほんとうの友だち
ある日、レックスがアルフレッドに会いたいと、家の塀の下を掘り始めます。急いで木の陰にかくれるアルフレッド。でも、二人はとうとう対面するのです。その後、アルフレッドはこう思うのです。
ほかの いぬや ねこたちの いうことなんか なんだって いうんだ。
だって、ぼくには ともだちが いるんだもん。
ありのままの ぼくを すきに なってくれた ともだちが。(p.28)
この一文、素敵だと思いません? 最初は心配になるストーリーだけど、最後は「よかった」と思える内容です。
今、人間の社会ではいじめにより自殺する子どもたちがいるって聞いています。とってもとっても辛いんだと思う。アルフレッドがほかの犬や動物たちに「ダサいぬ」って言われるシーンを見て僕は、きっと人間の中のいじめもこんな感じなのかなと思いました。まったくダサくないのに、相手の特徴をダサい、とバカにする。アルフレッドが「どうしてだろう?」と悩むように、人間も悩むんだと思います。でも答えは出ない。
アルフレッドは新しい友だちの前で、まだお互いに姿がわからなかったとき、きっと自分がパグだと知ったら、また「ダサい」といって友だちでいられなくなるかも、と思い、ウソをつきます。でも実際に会ってみたら、レックスはありのままのアルフレッドを受け入れてくれました。
人間の世界でも、きっと、ありのままの自分を受け入れて友だちになってくれる人がいるはずなんだよね。いじめって、何ひとつ生産性のない、本当にどうしようもない行為で、なくなるに越したことはないんだけど、なぜかいつも発生してしまう。その時に、みんながレックスみたいな最高の友だちに出会えますように、って祈りたくなりました。
絵本なんだけど、そこに込められたメッセージは深いなーと思った。幅広い年齢層の方に読んでいただきたい一冊です。
講談社
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