犬ぞりで北極点を目指す~『ホワイトアウトの世界で』

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皆さんこんにちは! 読書犬・パグのぐりです。今月も楽しい本にたくさん出合えてほくほくしている僕。だって、読書の秋ですからね。その中から犬の登場する本をいくつかピックアップ。今回も選りすぐりの一冊をご紹介します!

北極を目指す女性冒険家

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image by ホワイトアウトの世界で―北極海横断・犬ぞりの旅 (Pimple note) | 高野 孝子 Amazon

ホワイトアウトの世界で』(高野孝子著 国土社 1998年)の著者の高野さんは冒険家。アマゾン川をカヌーで下ったり、極地への到達を試みたり。この本は彼女が所属したチームが、ロシアから出発して北極点を通り、カナダへ向かう冒険の一部始終を記録しています。

この本は、私が北極と出会う「どきどきわくわく」です。自分にとっては新しいことばかりで、びっくりの連続でした。(p2)

「はじめに」で高野さんはこう書いています。ではどんな「びっくり」がつ待っていたのでしょう?

時は1993年。この年に高野さんは、その後北極横断チームのリーダーとなるアメリカ人のウィルと出会います。そしてその後、以前から友人であった同じくアメリカ人のジュリーと再会。北極から世界の子どもたちとインターネット通信でつながるという教育プログラムを動かすことを決めます。

従順なだけではない犬たち

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image by Tambako The Jaguar / Flickr

1994年、北極遠征を目指すチームが結成されました。全部で6人。出身国は5つという多国籍チームです。犬ぞりの事前訓練をしてから出発した高野さん。犬ぞりは初経験だったそう。

犬たちは雪原の上でも、すべての人のかけ声に、機械のように反応するわけではないことも知った。たいへんなときに犬ががんばるか、思いどおりの方向へ進むか、集中しているかなどは、すべて犬たちとマッシャーの信頼関係にかかっている。(p33)

そうなんだー。たしかに犬にも個性があることは僕だって自分が犬だから重々承知しているけれども、そりを引く犬たちというのは、特に人間の命令に従順に従うのかなって思い違いしていた。

実際に、北極を目指しての犬ぞりでの旅の様子をこの本で読んでいくと、上の言葉の意味がよーくわかったよ。けっこう気分屋さんの犬だっているし、リーダー犬が不在になるととたんにそれぞれが自分勝手な行動をとってしまい、収拾がつかなくなることも知りました。どこか人間社会とも似ているかもね(笑)。

それにしても、氷点下40度の世界ってどんななんだろう。僕は寒いの苦手だから、そりを引く犬たちを本当に尊敬する。何百キロという荷物の載ったそりを引くんだから。

そうやって犬たちと一生懸命コミュニケーションをとりながら、そりを進めていく高野さんたちのチーム。犬とのコミュニケーションも大事でしたが、この多国籍チームは、チームを維持していくために、人間同士のコミュニケーションもとても大事でした。それは当たり前だよね。北極という過酷な場所で、チーム一丸となって目的を達成するためには、その人たちの協力が欠かせない。誰かひとりでも自分勝手な行動をとってしまったら、とても達成することは不可能な場所にいるからね。

当初はうまく動いていたこのチームも、途中でほころびがでてきます。ロシア人の隊員ビクターが「女性との旅は自分には無理」と言い始めたり、いよいよ本番の北極点を目指す旅の途中で「僕はおりる」と言うチームメイトが出てきたり。
その都度チーム内で話し合いをして、なんとか解決しつつ進んでいく様子は、読み手をドキドキハラハラさせます。

北極点は海の上

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image by Ali Inay / unsplash

もう一つ、なるほど、と思ったのは北極点への到達の仕方。北極点は海にあるから、実際には氷の上がその場所となります。だから冒険家たちは磁石を頼りに、「ここが北極点だ」と自分で判断するのです。氷が動けば離れていくし、まあ大変なんだなとわかりました。

氷の割れ目に犬ともども落っこちたり、進んでも進んでも氷の割れ目に行く手を阻まれたり。想像を絶する環境のはずなんだけれども、髙野さんの文章はどこかいつも楽しげで、挫折しそうになりながらもどうやって進んでいったのか、が詳しく描かれているところが圧巻でした。

実は、先だってご紹介した凍える牙』(乃南アサ著 新潮文庫 1996年)を読んだ後に、なぜか僕、犬ぞりの話がすごく読みたくなったんだよね。それでアラスカとか北極とかの関連本を読み漁ったわけ。いろんな本があったけれども、中でもこの高野さんの著作は写真やイラストも入っていてわかりやすく、読みやすかったです。子どもでも読める工夫がされているから、ぜひ親子でも楽しんでみてくださいね。


ホワイトアウトの世界で―北極海横断・犬ぞりの旅 (Pimple note)
高野 孝子
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Featured image creditMarkus Trienke/ Flickr

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