【犬語翻訳家】進化の視点から見る”ごめんね”行動〜尻尾を隠すのは仲直りの握手のようなもの?
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叱られた時に見せる犬たちの仕草は、「ごめんね」と言っているようにも見えるもの。頭を低くして上目遣いになる犬を見ると、「仕方ないなぁ」という気持ちにさせられてしまいます。
犬の一連の”ごめんね行動”は、「なぜこの行動をするのか?」という切り口で、よく取り上げられます。犬の中に罪悪感はあるか?というテーマで取り上げることも少なくありません。ちなみに多くの動物行動学者は、犬は罪悪感からでなく恐怖やストレスなどから、ごめんねと言っているような仕草や行動をすると主張しています。
【犬語翻訳家】犬の”ごめんね”行動を紐解く〜反省の表情は私たちに何を語るのか | the WOOF
さて今回ご紹介するのは、進化の視点からの解釈です。ジョン・ジェイ・カレッジの分離生物学者、レンツ博士(Professor Nathan Lents)はこれらの”ごめんね行動”を、オオカミの”謝罪のお辞儀(aplogy bow)”を継承したものであるとして、ブログに発表しました。
オオカミの’謝罪のお辞儀’を継承したもの
当記事及びthe WOOFの記事内で使う”ごめんね行動”という言葉は、犬たちが叱られた時に見せる表情、姿勢、行動、仕草などを総称するために私たちが作った造語です。英語の”guilty look”に対応させています。
叱られた犬たちが見せる頭を低くしてフリーズしたり、尻尾を脚の間に挟んだり、アイコンタクトを避けるといった表情や仕草は、’謝罪のお辞儀(apology bow)’とも呼ばれ動物行動学者のベコフ博士(Prof. Marc Bekoff)などによって研究されているものです。見逃しがちなこれらの行動は、実はかなり洗練された複数の社会的行動に関連しているとレンツ博士は言います。
オオカミたちは、社会的関係の中に身を置くようになると、かなり早い段階でこの’謝罪のお辞儀’を学びます。子オオカミは遊びを通じて社会と接し始めるのが普通で、彼らはレスリング遊びのようなものを通じて他者との関係や社会のルールを学ぶのです。強烈な噛みつきは禁じられ、これを破ると集団からの一時的な離脱を余儀なくされます。遠ざけられ、無視されるのです。罰せられた狼はこの罰を解くために、’謝罪のお辞儀’をして集団に許しを請わなければなりません。
犬はこの行為を継承したと、レンツ博士は言います。「調和のとれた統合を求める犬は無視され孤立することを嫌う」。犬たちは調和のために、オオカミの’謝罪のお辞儀’を継承したと言うのです。
謝罪か服従か?
前述のとおり動物行動学者たちによる意見の大半は、「犬は罪悪感から’ごめんね行動’をしているのではない」というものです。レンツ博士の’謝罪のお辞儀(apology bow)’の継承だとする主張は、言葉だけを見ると、これと対立するもののようにも見えますね。
謝罪か、それとも服従か?このことについて博士は、「まぁ、両方かな」と回答しています。両方か!
「異なるコンテクストでは異なる解釈がなされる。謝罪は、服従の一つとも言える」立場の弱いものが強いものに対してペコペコする一方、強いものが頭を下げることは滅多にない…というのは、人間の社会でもおんなじです。謝罪の中に服従の要素が含まれるとは、まぁ納得できるところですよね。
一方、謝罪はイコール服従ではないことも、ブログに記載されています。「霊長類では、謝罪は服従というより提携を意味するシグナル。言い方を変えれば、謝罪は挨拶のようなものとして使われる」
博士は例として米国での握手、欧州での両頬へのキス、アジアでのお辞儀をあげています。これらは戦いや論争の後に、元の鞘に戻ると言う最終的な目的のために使用されと言います。進化の過程や社会関係などから解釈すれば、犬の’ごめんね行動’は集団に戻りたい(所属への欲求)意思の表れで、彼らなりの紛争解決方法ということになります。
元のさやに戻りたいという気持ちが’ごめんね行動’として現れる…というのは、愛犬家としてはなかなかに納得のいくものかもしれません。一方で、動物行動学者のいう「ストレスや恐怖の反応」というのにも、もちろん耳を傾けなければなりません。
レンツ博士によれば、犬の行動の解釈の鍵は「コンテクストを含めて読むこと」だそう。行動の前に何があったか、犬たちが今どういう状況にいるのかなどを背景情報も勘案して、愛犬の気持ちをバッチリ受け止めてあげられるようにしましょう。
h/t to Borrowed Signals: A Discussion of the “Guilty Dog” Look – The Human Evolution Blog
Featured image credit Thomas H / Flickr
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