それでも犬は分け合う〜親しい犬に美味しいものをあげられるよう頑張る(研究)
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犬は仲間の犬が得するような行動をするというのは、愛犬家なら頷ける話ではないでしょうか。
2016年12月に発表された論文[1]によれば、より複雑な実験設定の中でも、犬は仲間の犬のために作業をすることがあるそうです。さらに、仲間の犬の存在が、そうした利他的な行動を促進こともあるということです。
犬は仲間のために、複雑な課題にもチャレンジした
実験を行ったのは、オーストリアのUniversity of Veterinary Medicine Viennaの研究者たち。犬の向社会性に関するテーマを探求するこのチームは、2015年に今回より簡単な設定のもと、レバーを引くという単純な課題を犬に挑戦させるという実験を行っています[2]。この結果、犬は仲間の犬にオヤツが渡るようレバーを引く作業を行うこと、親しい仲間の犬のためにより多くの作業を行うということがわかっています。
犬はイヌ仲間と”分け合う”〜そして相手との関係によって行動を変える(研究) | the WOOF
前回の研究と比較して、今回は実験設定はより複雑なものとなり、タスクの難易度も上がっています。今回の課題に使われたのはトークン(上の写真右のようなオモチャ)で、これは霊長類を使った実験でも課題としてよく使われているものです。実験協力犬たちは、レバーを引く作業より難易度の高い課題をこなさなければなりません。タスクの難易度アップしたときも犬が他の犬のために作業をするかどうかが、研究者らがこの実験で明らかにしたいことの一つでした。
実験協力犬には、”作業する犬”と”仲間の犬”という役割が与えられます。”作業する犬”は3つのトークンを、その役割とともに記憶しなければなりません。1つのトークンは、それを鼻でタッチすると自分がオヤツをもらえます。2つ目にタッチすると別の犬にオヤツが渡り、3つ目は何も起こりません。実験では目の前にトークンが配置されたボードを差し出されたとき、犬がどのトークンを選択するのが観察されます。
”作業する犬”はこの「鼻でトークンにタッチする作業」を、様々な実験状況の中で行いました。実験状況とは例えば、(a)”仲間の犬”が同じ部屋にいる場合や(b)いない場合、(c)”仲間の犬”が親しい犬である場合と(d)見知らぬ犬である場合などです(他にもあるかもしれませんが、ここでは割愛します)。
結果、(1)”仲間の犬”が親しい犬である場合、”作業する犬”は相手に食べ物を与えるトークンを選ぶ確率が高くなった、(2)”仲間の犬”が同じ部屋にいる方がいない場合より、食べ物を共有する確率が高くなった、ということがわかりました。
犬も他の犬の目を気にしている
親しい犬に対してはより寛大になるというのは、同研究チームによる2015年の研究結果を引き継ぐ結果です。このため研究者たちは、課題が複雑になっても犬たちは社会的行動を続けること、そして”仲間の犬”との親しさが課題遂行に対して影響を与えることが確認できたとしています。”仲間の犬”が見知らぬ犬の場合、共有される回数は1/3にまで減少しました。
そして、”仲間の犬”が同じ部屋にいるときのほうが、食べ物を共有する確率は上がったそうです。そばに他者がいることでその作業や課題の成績が高まる減少を社会的促進と言いますが、この傾向が犬にもある可能性が示唆されたのです。犬も仲間の存在を励みにしたり、その目を気にするのかもしれないのです。
一連の研究は、実際にフードボウルで分け合うわけではなく、共有したところで作業する犬の食べ物が減るということはありません。ですからこの結果をもって、犬が”共有する”というのはちと厳しいものがあるかもしれません。とはいえ、犬たちが親しみを感じている存在と分け合う可能性があることや、仲間の存在で行動を変える可能性があるというのは、愛犬家としては嬉しいことですよね。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Dale, R., Quervel-Chaumette, M., Huber, L., Range, F., & Marshall-Pescini, S. (2016). Task Differences and Prosociality; Investigating Pet Dogs’ Prosocial Preferences in a Token Choice Paradigm. PloS one, 11(12), e0167750.
[2] Quervel-Chaumette, M., Dale, R., Marshall-Pescini, S., & Range, F. (2015). Familiarity affects other-regarding preferences in pet dogs. Scientific reports, 5.
Featured image credit Sean Dustman / Flickr
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