傍で眠る可愛い犬。身体はしっかり休んでいても、脳はその働きを止めてはいないようなのです。

ハンガリーの研究者らは、睡眠中に犬たちが学んでいる可能性があること、そしてその学習においてはメスの方がオスよりも優れている可能性があることを示しました。

犬は睡眠時に記憶を定着させている可能性

研究に参加したのは、ハンガリーで暮らす15匹の犬。彼らはすでにハンガリー語で訓練を受けていましたが、改めて英語のフレーズを使って訓練を受けることになりました。

訓練の期間、犬たちは睡眠中の脳活動を記録するために、小さな電極をつけることが義務づけられました。そこから得られた脳波図（Electroencephalograms、EEGs）は、3時間の昼寝をした犬の脳に、数分間の徐波が出現することを示していました。また、ヒトやラットと同様に犬の紡錘体は、9ヘルツから16ヘルツの範囲で短周期で発生することもわかりました。

睡眠中の記憶促進現象は、1990年代半ばから研究が進む注目の分野です。「場所や単語の意味、出来事の記憶は宣言的記憶と呼ばれるが、睡眠脳波の徐波（0.5-2Hz）と遅い周波 数の紡錘波（10-13Hz）の活動が活発であるほど、成績の向上率が高い[2]」ということがわかっています。

これまで、ヒトやラットは睡眠中に遅い脳波が出現することは確認されていましたが、犬で確認されたのは初めてのことです。

犬も睡眠中に、場所や単語などの記憶を定着させている可能性があるのです。

メスの方がより良く学ぶ

この研究ではもう一つ、メスの方が紡錘波密度（紡錘波出現の回数）が高く、学習しやすいことが示されています。

研究者らは今回、英語コマンドをたくさん学んだ犬は、紡錘波が出現する回数が多いという関係を見出していますが、紡錘波出現が多いのはオスより犬。メス犬はオス犬に比べ、より容易に英語コマンドを学んぶことができたそうです。新しいコマンドを学ぶことができたのは、メスは参加犬の約30％だったのに対し、オスは約10％に止まりました。

お昼の楽しい記憶や、新しいコマンドは、睡眠時間を通じて定着するのかもしれませんね。

寝ている犬が可愛らしくて、ついつい邪魔をしたくなる気持ちはよくわかりますが、「出来る犬」を育てるためには、眠りを妨げてはならないのです。起きている時にたっぷりと遊びと学びの時間をとって、豊かな睡眠により記憶を定着させていただいましょう。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] EEG Transients in the Sigma Range During non-REM Sleep Predict Learning in Dogs (2017), Ivaylo Borislavov Iotchev, Anna Kis, Róbert Bódizs, Gilles van Luijtelaar & Enikő Kubinyi, Scientific Reports 7, Article number: 12936
[2] 睡眠研究の動向 (2011), 栗山健一, 日本生物学的精神医学会誌 22（3）： 151-157, 2011
[3] Brain scans show dogs learn when sleeping—just like people | Science | AAAS
[4] Let Sleeping Dogs Lie: EEGs Show They Learn When Z’ing | Psychology Today

Featured image credit Andrew Roberts / Flickr

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