人の指紋や掌紋は、人ごとに、そして指ごとに全て異なっており、しかも終生不変という特徴をもつと言われています。
犬も個体ごとに異なる「紋」がある部位があります。それは肉球…ではなく鼻!犬の鼻の紋様は個体ごとに異なっています。
肉球に個性はあるが、”肉球紋”はない
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犬の肉球は様々で、全く同じものを見つけるのは困難なほどに異なっていますが、人間の指紋のようにユニーク(一意)のものではありません。また、私たちが行う「指紋」パターンはありません。
人間の指紋のようにユニークなのは、鼻のシワです。このシワには「鼻紋(びもん)」という立派な名前がついています。
犬の鼻紋はユニークである
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1994年のVeterinary Quarterlyに掲載された『犬の個体識別方法としての鼻紋(Nose prints as a method of identification in dogs) 』には、犬の鼻には特有の紋様があることが記されています。研究を行ったColdea氏は、「犬の鼻を綿棒で拭いて乾かしたのち、皮膚に中国のインクを染み込ませ、これを白い紙に写し取った」のち、これをスキャンしてデータベースの他の鼻紋と重ね合わせることで個体識別に利用する方法が示されていました。
研究は、首輪に取り付けるIDや刺青だと無くなってしまう可能性があること、チップは抜き取ることができることなど、従来の個体認識方法には欠点があることを指摘し、鼻紋の有効性を主張するもののようです。報告書によれば「この方法は簡単に実行でき、結果は正確」なのだそうです。
カナダでは個体識別に鼻紋が使われている
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実際、鼻紋の信頼性はIDやタグ以上に高いと認識されています。カナディアン・ケネルクラブでは1938年より、個体識別に鼻紋が使われています[2]。ただし、現在はタトゥーやマイクロチップが主流で、鼻紋による識別が行われることは少なくなっているそうです。
鼻紋〜かわいい愛犬が特別である証
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日本では、鼻紋を使った個体識別は行われていません。ちなみに牛の鼻紋は、個体識別や証明として広く利用されているのだそうです[3]。
個体の識別には使えないようですが、ちょっとしたお楽しみとして犬の鼻紋をとってみるのは面白そうです。手順は次のとおりです。
- 古いタオルなどで鼻の水分を拭き取る
- 食用色素(ペロリと舐めるので、食用でない塗料やインクをつけてはダメ!)を浸したペーパータオルを犬の鼻に擦りつける(優しく!)
- 紙を鼻に押し付ける(ちょっと力を入れて…)
- 湿った布で犬の鼻を拭く
鼻紋は、スキャンするか写真を撮ってデジタルデータにしておきましょう。複数の犬と暮らしている人なら、違いを確認するのも楽しそうです(お子さんの自由研究にしても楽しい…かな?)。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] N. Coldea (1994) Nose prints as a method of identification in dogs, Veterinary Quarterly, 16:sup1, 60-60, DOI: 10.1080/01652176.1994.9694497
[2] Animal Facts, News, and Info: Cats and Dogs Have Unique Nose Prints
[3] 子牛の鼻紋採取 | 独立行政法人 家畜改良センター鳥取牧場
犬の鼻は知っている〜人の恐怖や幸福を、犬は匂いで察知する | the WOOF イヌメディア
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