犬の表情のお話〜笑顔と恐怖は紙一重!?

生態・行動
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犬も笑顔のような表情を見せることがあります。口を少し開き、舌をチロリと覗かせるような表情です。

これは犬が慣れ親しんだ家族と遊んだりくつろいでいるときに見られることが多く、私たちがいう”笑顔”に相当しそうです。

犬も笑うのか〜笑顔の意味はヒトと同じ? | the WOOF イヌメディア

犬も笑顔を見せることがあるのか?

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笑顔とは、心の状態の顔面において表出のこと。大頰骨筋の収縮させたり、眼輪筋を収縮させてつくられるものです。筋肉が動くことで口角が上がったり、目尻にシワができたりして、私たちが笑顔と認識する表情が作られるというわけです。

犬も顔筋を動かして笑顔のような表情をつくることはできるでしょう。しかしそれが人間のように、様々な感情と結びついているのかはよくわかっていません。人は太古の昔から、口角が上がった表情の犬を”笑う犬”と捉えてきましたし、動物行動学者のローレンツ博士は「犬も笑うことができる」と主張していますが、そうなのかどうなのかは犬に聞くしかありません。

ただし上述のとおり、犬はリラックスしているときや遊びのときに、笑顔のような表情をのぞかせることがあります。目尻をあげ口元が緩み、舌がちょっと出てしまう可愛らしい表情です。屈託のないこの表情こそ笑顔だと推測するのは、あまり罪はなさそうです。

一方、明らかに感情と結びついた”笑顔”もあります。Submissive Grin(従順を示すためのニヤニヤ笑い)と呼ばれる、口が引きつらせて歯を露出させる表情です。これは、大きい犬や強い犬に遭遇したときや、どうして良いかわからないときに出現する表情で、多くは尻尾を下げる、足を持ち上げる、低い姿勢をとる、唇を舐めるなどの従順さを表す他のシグナルと共に見られます。犬は、「私はあなたの脅威ではありません」とか「すごくストレスを感じています」というメッセージを発しています。

なんとなく真逆の意味を表すように思えるヒトの笑顔と犬の笑顔ですが、根底にあるものは同じであると生物学者は語ります。

笑顔の起源は恐怖にある!?

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犬の笑顔の話はひとやすみして、ヒトの笑顔についてみてみましょう。PetHelpfulには、微笑みの起源が恐怖に由来するという霊長類学者の話が紹介されています。サルや類人猿が緊急事態におちいると、優位にある相手に対して静かに歯を見せる表情が観察されるのだそうです。心理学者のマクアンドリュー教授は、歯を見せることは霊長類の世界では服従の意味を示し、人間の笑顔はそれから進化している可能性があるのだといいます。

私たちが「嬉しい、楽しい、大好き」だから見せると考える笑顔は、もともとは無害で従順であると示すために発生したもので、その後に他の感情を巻き込んで現在のような洗練されたコミュニケーション・ツールに進化したのかもしれません。

そういえば私たちは、偉いヒトと対峙するときにニコニコと愛想笑いを浮かべることもあります。その部分においては、犬の笑顔を共通するところもあるように思えます。

犬の”笑顔”の種類

犬が口角をあげ歯をみせるのは、以下の2ケースです。犬に慣れている人なら「笑っていない」とわかるでしょうが、子供の多くはこれらの表情を「喜んでいる」「嬉しくて笑っている」などと誤って解釈することがありますので注意が必要です。

【犬と子供】子供は犬の”ストレス表情”を誤って読み取る | the WOOF イヌメディア

・Submissive Grin〜従順な笑顔

上唇の前部を持ち上げ、前歯を持ち上げる表情です。服従の意思(転じては親密さを示すこともある)のほか、恐怖や不安、社会的に厄介な状況におちいり混乱しているときにみられます。

犬がこの”ニヤニヤ笑い”を見せたときは、ちょっと注意が必要です。「私はあなたの脅威ではありませんよ」という従順さや親しみを表す場合もありますが、同時に「ストレスを感じている」とする気持ちも表しているからです。子供や他の犬と一緒にいるときにこの”Submissive Grin”がみられたら、嚙む直前の段階に移行する可能性を考えて引き離すようにした方が良いでしょう。

一方、飼い主と一緒に遊んでいるときなどにニヤニヤ笑いを、見せる犬もいます。彼らは意思表示や警告ではなく、飼い主とのコミュニケーションとしてこの表情を使っていると考えられます。この表情をすれば飼い主さんが褒めたり笑ってくれたりすると学んだ犬は、その報酬欲しさに歯をむき出して”笑顔”をみせるというわけです。

・Snarl〜唸る

笑顔じゃないじゃん、唸ってるじゃんという声が聞こえてきそうですが、歯をみせるという点では共通しているのでそこは許して。唇を上げ前歯をみせ、鼻の上にシワを寄せ、息遣いが荒くなり低音の唸り声が出ているとき、犬は「嬉しい」とは真逆の方向にいます。身体が緊張し縮こまっているようなら、大きなストレスに押しつぶされそうになっている可能性が考えられますし、食べ物やオモチャを守りたいのかもしれません。


犬は気持ちを全身を使って表現します。ドッグランから帰ってきた後のオヤツの時間にみせてくれる表情はきっと笑顔でしょうし、大きな犬に遭遇したときに小さくなって歯をみせたら、ちょっと混乱しているのでしょう。顔の表情だけでなく、前後の文脈と他のボディランゲージを読み解いて、犬の気持ちに迫ってみましょう。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] チンパンジーに学ぶヒトの笑顔の意味 | 京都大学霊長類研究所 – チンパンジーアイ
[2] 笑う(ワラウ)とは – コトバンク
[3] My Dog Smiles When She Greets People – Is This Normal?
[4] Do Dogs Smile? | PetHelpful

Featured image creditGrisha Bruev/ shutterstock

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