夏のお散歩は、犬にはとても過酷です。温度だけでなく湿度もチェックしておかなければ、熱中症の危険は回避できません。
高湿度はなぜ危険なのか
湿度(しつど、英: humidity)とは、大気中に水蒸気の形で含まれる水の量を比率で表した数値で、空気のしめり具合を表したものです。
湿度は、暑さの感覚においては非常に重要な要素です。湿度が高いと、体感の温度は気温より高く感じます。人の体は温度を一定に保つようにできており、血液の流れにより熱を肌から逃がしたり、汗をかいてこれを気化させることで体温を下げるようにできています。しかし、空気中に湿気がかなりある時は、洗濯物のかわきが悪いのと同じように、汗もすばやく蒸発してくれません。体温が下がりにくく熱が体にこもるため、一層「暑い!」と感じるのです。
犬も私たちと同様に、パンティングや汗をかくことにより、身体の熱を一定温度まで下げようとします。しかし湿気が高いと、どんなに一所懸命にハァハァしても、体温は下がってくれません。また、水気を多く含んだ熱い空気は、犬の喘ぎを困難にします。犬たちは身体に熱をため混んで、熱中症のリスクを増大させることになります。
「暑さ指数」を活用しよう
最近よく耳にするようになってきた気候の指標に、「暑さ指数」があります。暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は、環境省が2006年から提供する、熱中症の危険度を判断する数値です。
単位は気温と同じく「℃」で表されますので使い勝手は良いですが、数値の意味は気温のそれとは異なります。暑さ指数は温度基準に分けられ、それぞれ日常生活や運動に関する指針が示されています。
暑さ指数は、人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境」の3つを使って計算されます。それぞれの数値にウェイトをかけて計算するのですが、屋外での算出式が「WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度」となっていることからもわかるように、湿度はウェイトは7割を占めています。
温度ももちろん重要ですが、熱中症のなりやすさという意味では、湿度の影響は非常に大きいものなのです。たとえ気温が低くても、湿度の多い日は特に、気配り目配りが必要です。
環境省によれば暑さ指数が28℃をこえてくると、熱中症にかかる人が急激に増えるとのこと。犬たちは、人よりも熱中症のリスクは高くありますから、健康な犬でも25℃以上で十分に警戒し、28℃以上ではお散歩は控えた方が良いでしょう(老犬、幼犬、病気の犬ではさらに慎重に判断しましょう)。
犬の熱中症
熱中症は、身体の中で酸欠や脱水を引き起こして、めまいや意識障害、倦怠、嘔吐、頭痛などの症状を引き起こします。ひどいときは命を危険にさらすものであり、運がよく回復したとしても、内臓が侵されて後遺症を残すことがあるおそろしいものです。
熱中症はどの犬にとっても危険なものですが、とりわけ幼犬(生後6カ月未満の犬)、老犬、肥満の犬、病気の犬、投薬中の犬、短頭種に分類される犬、過激に運動する犬、閉塞の病歴を有する犬などがなりやすいものです。飼い主の注意により予防することができるものですし、早期に治療すれば早い回復も見込めます。とにかく保守的に判断し、いち早く病院に連れて行く決断が、暑い時期には大切です。
犬の熱中症の予防のためにできること
身体に熱をためない環境づくりや、脱水症状にならない工夫が必要です。
- 犬のいる環境の温度や湿度の管理
- 涼しい時間(午前中の早い時間か夜遅く)に散歩や運動をする
- 暑い日に外遊びを最小限にし、家での遊びを工夫する
- 車に犬を放置しない
- 新鮮な水をたくさん与える(複数箇所に水飲み場を用意する)
- 突然の気温の変化に注意(身体が暑さに慣れていないときは、涼しいときでも危険)
- 温暖な地域に旅行するときは、犬が気温に慣れるまで時間をかける
熱中症の兆候(心拍数の増加、パンティング、粘着性の高い唾液、青白い歯茎など)または症状(嘔吐、めまい、元気消失、食欲不振など)がみられたら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。症状が回復しているように見える場合でも、合併症を起こしていないか、本当に回復しているかを確認するために、検査をしておくことは非常に大切です。