皆さんこんにちは! 僕、読書犬、パグのぐり。WOOFOO天国出張所で働いているの。
今、地上は一年のうちで一番寒い季節かな? 雪が降っている地域が多いと思います。そして、冬と言えばインフルエンザ…。地上での飼い主だったNさんの子どもたちは小学生ですが、通っている小学校でも1月中旬からA型が流行りだしたらしいよ。皆さんお気を付けくださいね。
私たちから切り離せない「暮らし」
さて、こうして季節はめぐり、日々忙しく過ごしていても、僕たちから切っても切り離せないもの。それは「暮らし」です。朝起きて、ごはんを食べて、仕事をして、そして寝る。一見単調にも見えますが、必ず誰もがしていること。もちろん仕事ではなくてそれが家事だったり、育児だったりもするでしょう。もしかしたら病気を治すことが今の自分の仕事、という方もいるかもしれません。
そんな、誰もがしている「暮らし」。これをより楽しく、美しいものにできれば、という思いをもって書かれたのが『ご機嫌な習慣』(松浦弥太郎著 中央公論新社 2018年)です。著者の松浦弥太郎さんは文筆家で、以前雑誌『暮らしの手帖』の編集長もされていました。
この本は松浦さんのエッセイ集です。暮らしの中のほんの小さなこと、ともすれば気づかずに通り過ぎてしまいそうなことをピックアップして、文章にしています。それは、本を読むことだったり(「今もとばし読みの名人」)、シャツの裾はインかアウトか、だったり(「シャツの裾の「常識・非常識」」)、もちろん仕事のことだったり(「仕事とは感動を与えること」)。本を読んで文章を書いている僕に、ビビビと響いたのは「文章のこと」。文章を書く時に松浦さんが気を付けていることが出てきます。
文章を書くときにいつも意識しているのは、読んだ人が、その文章を読みながら、いかに書かれたものをビジュアル化できるかである。(中略)そのための下準備として、僕はこんなことを行っている。文章が短かろうと長かろうと関係なく、紙芝居を作るのだ。(p70)
なるほどー。やっぱりわかりやすい文章を書く人はみんな何かしら工夫をしているんだね。そしてこの章の最後には、『暮らしの手帖』の初代編集長である、花森安治の実用文十訓が書かれており、これの最後の項目もなるほどな、と思わせるので、ぜひぜひ確認してみてね。
あの時、傍らに犬がいた
僕はこの本を読みながら、「すごくいい本だな。皆さんに紹介したい。うーん、どこかにワンコが登場しないかな?」と思って読んでいました(笑)。そしたらなんと、その気持ちが通じたのか、登場したのです!犬が! それは第4章「回想は妙薬」の中の「ランドセル」。松浦少年のお父さんがランドセルを買ってきた日のことが書かれています。
松浦家には当時、ジョンとタロウという2匹の犬がいました。お父さんの帰りを待ち構えていたであろう2匹は、彼が帰宅するとワンワンと吠えて家族にそれを知らせます。そして、松浦少年はお父さんが持ち帰ったランドセルを受け取るのです。ジョンとタロウは大興奮。少年はなだめながら包みを開けるのでした。その後のお母さんとのやりとりは、こんな感じです。
「重くても大丈夫。これはいいランドセルなんだ、とお父さんが言ってたよ」そばで見ていたお母さんにそう言うと、お母さんは「背負って見せて…」と言った。(p141)
そして松浦少年がランドセルを背負って見せた時、お母さんは…。ぜひ、本書でご確認を。子どもの成長を間近で目にしたときの親の反応はいろいろだと思うけれど、このお母さんの反応と、それを見ての松浦少年の反応は、とりわけ素敵だなと思いました。そして、僕は目の前にその時の松浦家の情景が浮かびました。
たった2ページの小さな回想録なんだけれども、大きなドラマがある。日常は小さなことの積み重ね。でも受け取る側がどんな気持ちでその出来事を見るかによって、すべてはドラマになりうる、ということを教えてもらった気がします。
アナログから得られるもの
実はこの本、デジタル社会となった今、便利なものは利用するに越したことはないけれど、一方でアナログな部分も大事にすると、こんないいことがあるよ、ということに気づかせてくれる一冊でもあります。
特に最後の「マンハッタンの道すべてを歩いて作った地図」には、若き日の松浦さんがアメリカ・マンハッタンで、自分の足で歩いてこの町の本屋をすべて地図に記したときのことが書かれています。今となってはグーグルマップで探して、家に居ながらにしてこうした地図を作ることも可能でしょう。でも、自分の足で歩いて作る、という過程でどんなことが起こったかが面白いのです。
仕事も含めた「暮らし」全体を、ていねいに。それは松浦さんの生き方に一貫している姿勢です。それを柔らかく、誰にでもわかりやすい言葉で伝えてくれているのがこの本。ほかにも『今日もていねいに。』というエッセイ集も読みやすいです。合わせてどうぞ。
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