犬が震える理由は寒さ、興奮や恐怖、中毒や発熱、加齢や病気など様々です。
なぜ私の犬は震えているの?怯えか、寒さか、それとも病気? | the WOOF イヌメディア
本記事では、震えの原因の中でも重大な病気に焦点を当て説明します。震えが特徴の一つである深刻な病気には、以下のものがあります。
上記は震えを引き起こす病気の代表的なものですが、すべてを網羅しているわけではありません。震えが突然に始まったとき、長時間続くとき、他に嘔吐・下痢・跛行などの症状がみられるときは、すぐに獣医師に相談しましょう。
犬ジステンパー(Canine distemper)
ジステンパーウイルスが体内に侵入して、高熱、食欲不振、下痢、嘔吐、目やにや鼻汁などの症状を起こし、最終的には神経系が冒されて行動の異常やけいれんなどが見られます。
ワクチン未接種の子犬や適切に接種していない犬、または他の病気や加齢などで免疫力が低下している場合に発症することがあります。ウィルスに対する薬はなく、有効な治療もありません。ワクチンによる予防が重要です。
てんかん(Epilepsy)
てんかんは、多くの犬種にみられる遺伝性の疾患で、症状に虚脱、痙攣、硬直、筋収縮、意識喪失などがあります。四肢が伸びきった状態でよだれ、排尿、排便、舌などを垂れ流しなどを伴う痙攣ののち、足をバタバタさせたり、咬み運動などが起こります。発作を制御する薬剤による治療が一般的で、多くの場合、生涯薬を飲ませ続ける必要があります。
特定の犬種に限らず発生の可能性があり、多くの場合、最初の発作は1〜5歳までの間に起こります。
全身性振戦症候群
全身性振戦症候群(GTS)は、ステロイド応答性振戦症候群(steroid responsive tremor syndrome)、またはホワイト・ドッグ・シェイカー・シンドローム(white shaker dog syndrome)とも呼ばれる、原因不明の全身の震えを主な特徴とする疾患です。以前は小型白色犬種(マルチーズ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア)に多く見られるとされていましたが、近年、白色犬種以外でも報告されています。最初の発作が起こるのは9ヶ月齢〜2歳が多く、体重が15kg程度の犬によくみられます。
震えの他の神経症状を示さない軽度な場合が多いものの、一部には他の神経学的問題を伴うことがあります。発作は活動や興奮で悪化し、休息ののちに改善します。治療にはベンゾジアゼピンやステロイドの投与が行われ、反応がよければ改善しますが、生涯を通じて投薬が必要になることもあります。
シェイキングパピー症候群
シェイキングパピー症候群(Shaker Syndrome)は、正式にはSpongiform LeucoEncephaloMyelopathy (SLEM)という神経疾患で、立って歩きはじめた頃(2週齢ごろ)の子犬に見られる、後肢の制御不能な揺れが主な症状である病気です。揺れに加えて、歩行困難や四肢の協調に問題を抱えていることが多く、興奮により症状が悪化します。
petMDは以下の犬種に発症の傾向があるとしていますが、他の犬種やミックス犬もこの症状に苦しむことがあるそうです。
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- チャウ・チャウ
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- サモエド
- ワイマラナー
- ゴールデン・レトリバー
- ダルメシアン
- ビズラ
オスはメスより発症しやすく、オスの方が重篤になることが多く、震えが重度である場合は安楽死が選択されます。
治療法はなく、正確な診断も死亡後に罹患した動物の脊髄を顕微鏡で検査することにより行われます。重症化しなかった子犬は3〜4ヶ月齢までに正常に戻ることがありますが、ほとんどはその後も震えの症状がみられます。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Dog Shivering or Trembling: Causes and Treatments
[2] Shaking Puppy Syndrome | petMD
[3] 江畑健二, 長井新, 石原直子, 瀬戸林政宜, 藤岡荘一郎, 濱岡将司, … & 藤岡透. (2008). 全身性振戦症候群の犬の 1 例. 動物臨床医学, 17(4), 123-126.
[4] Shaking Puppy Syndrome | petMD
Featured image creditdezy/ shutterstock