複数メディアが、細菌感染からの敗血症により手足の切断を余儀なくされたオハイオ州の女性について報じています。
担当医は、飼い犬が彼女の腕の小さな擦り傷を舐めたことが原因であろうと推定しています。
ニューヨークタイムズ紙は、感染が疑われているカプノサイトファガ細菌について、ヒトの免疫系にかなりの打撃を与える可能性はあるものの、極端な反応をすることは非常にまれだとする専門家のコメントを掲載しています。
オハイオ州に住むマリー・トレイナーがカリブ海での休暇から戻ったのは、5月10日のことでした。夫妻の2匹の犬はペロペロの嵐で彼らを大歓迎しました。
しかしその後、マリーの健康状態は急速に悪化します。吐き気やかゆみなどのインフルエンザのような症状に加え、体温は上昇後に34度近くまで低下したのです。夫のマシューはその時点で危険を感じ、マリーを病院に運び込みました。
マリーは敗血症(感染に対する免疫反応)の様相を呈しており、昏睡状態に陥ります。さらに血栓が形成されたことで血液が供給不足に陥り、手足が壊疽してしまったのです。
残された選択肢は、四肢の全てを切断することだけでした。
家族によればマリーの変化は非常に急速で、家族にも医師にもできることは一つもなかったそう。10日間の昏睡状態の間、8回の手術を受けたマリー。病院で過ごした期間は80日間に及びました。
医師は血液検査の結果から、今回の不幸はカプノサイトファーガ(capnocytophaga)が引き起こしたものであろう推定しています。カプノサイトファーガはイヌやネコの口腔内に錠剤している細菌の一つで、カプノサイトファーガ感染症を引き起こします。人への感染経路は、犬猫による咬傷・引っかき傷からの感染が主ですが、傷口を舐められて感染した例も報告されています。
潜伏期間は、1~14日。発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などの臨床症状が報告されています。重症化した例では敗血症を示すことがもっとも多く、それ以外に髄膜炎を起こすこともあります。敗血症例の約26%が死に至るとされています。
国内のイヌの74~82%、ネコの57~64%が保菌しているというデータがある一方、感染報告は非常に少ないことから、感染しても稀にしか発症しないと考えられています。
ペットと接触する人の大多数は病気をうつされることはありません。しかし、免疫システムが低下した人、幼児や高齢者などは、感染の可能性が高くなります。また、傷口や皮膚のただれ、または目、鼻、口などに唾液が触れる場合も感染の可能性が高くなります。
愛するワンニャンからキスの歓迎を受けるときは、そのことに十分に留意しましょう。ペットたちに触った後は手を洗うことが基本ですが、特に傷がある場合はキスをお断りするようにしましょう。舐められてしまったときは患部をきれいに洗うよう心がけましょう。
カプノサイトファーガ感染症の重症化は、実際には滅多に起こりません。しかし2018年にはウィスコンシン州の男性も、この感染症から手足の切断を余儀なくされています。
マリーは現在、新しい暮らしに慣れるべく、努力を続けています。2匹の犬への愛は変わらず、彼らを手放すことは考えていないそうです。
家族であるワンニャンを愛していても、彼らのお口の中の菌まで受け止める必要はありません。できるだけ上手に唾液との接触を回避し、彼らと交流した後にはしっかりと手洗いをしましょうね。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Dog saliva can cause serious bacterial infections, but it’s rare – Business Insider
Featured image : Feel So Young / Flickr