夏になるとたびたび聞かれるこの質問…「犬って汗かくの?」
犬も汗をかきます。でも、お口のよだれが目立つ犬は見たことがあっても、脇汗をダラダラさせている犬は見たことがありませんよね。犬の汗腺はその殆どが肉球周辺に位置していて、汗腺機能が低いのです。
汗腺が発達しているのは肉球周辺のみ
人間は、体温を37度付近の一定域に保つために汗を使います。温度の情報は、視床下部にある体温調節中枢に集められ、体温が高いと判断されたら熱放散反応を駆動させます。興奮が全身にある汗腺に伝えられて発汗が起こり、汗が皮膚表面で蒸発することで熱が放散されるのです。
発汗による体温調節はとても優秀な冷却機能ですが、この機能を可能にするのが人間の体表のほぼ全体に分布する汗腺です。約230万個とも言われる汗腺をうまく使いこなすことで、体のオーバーヒートを防いでいます。
一方、我らがワンコたちの汗腺は肉球の周辺を除いては発達が悪いのです。毛に覆われているから汗を吸収している訳ではなく、汗が上手にかけないのですね。
夏の暑い日に床の肉球跡が目立つ訳も(汗の跡だったんだ!)、額から汗を流している姿を見たことがない謎も、これで解けました。では、彼らはどうやって、暑さをしのぎ、身体の熱を逃がしているのでしょうか。
浅速呼吸(パンティング)で熱を逃がす
パンティング(浅速呼吸:せんそくこきゅう)により熱を逃がすというのが、一つの答え。犬はの呼吸中枢は、身体の温度の上昇によっても反応します。汗だけでは十分に熱を放散できないので、口を開けて舌の水分を蒸発させることや、呼吸数を多くしたり勢い良く呼吸することで、呼吸器粘膜からの水分蒸発を増加させ熱を逃がすのです。
顔と耳の血管を拡張させることで熱を逃がす
顔と耳の血管を拡張させることも、身体の熱を放散するのに役立っているそうです。スティーブン・コレン博士によれば、顔と耳の血管を拡張させることは「血液が皮膚の表面近くを流れるようになり、イヌの血液を冷やすのに役立つ」のだとか。この仕組みは、体温上昇が外気温のせいではなく運動した結果である場合に最も効果があるそうです。
このほか、簡単で決定的、そして人間としては非常に羨ましい’体温を一定域に保つ方法’は、そもそも動かないというもの。日陰で静かに過ごして体温を上げすぎないようにするのですね。
39度を超えてきたら「異常高熱」
暑い日中は涼しい部屋でのんびりダラリと過ごして、涼しくなってから運動…というのが理想的ですが、明るい太陽の光に誘われて外に出てしまうこともあるでしょう。そんな時も、運動量や犬の興奮には気をつけて。「異常高温(hyperthermia)」と呼ばれる状態になってしまいます。
体温が41度を超えてくると、内臓にダメージを与えることになるので要注意です。動きが鈍くなったり、混乱しているように見えたら、異常高温状態に陥っている恐れがあります。目に見えないダメージが犬の体を蝕んでいることがあります。飼い主判断で「大丈夫」と考えずに、必ず獣医師に診てもらいましょう。’歯茎と舌の色がおかしい(真っ赤に成っている)’というのが危険信号の一つです。
可愛いだけでなく、汗をかく機能まで付いている犬の肉球。犬にはとても大切なものなのですね。夏の暑い時期は、犬の体温上昇にも注意が必要ですが、焼けたアスファルトで火傷をさせることのないよう、お散歩前に触って確認することをどうかお忘れなく!
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 発汗は身体にとって 重要な「冷却システム」| ヤクルト健康情報誌『ヘルシスト』
[2] イヌの動物学 (アニマルサイエンス) (2001) 猪熊 寿, 林 良博, 佐藤 英明, 東京大学出版会
[3] Do dogs sweat? | Psychology Today
Featured image credit Rob Swatski / Flickr
真夏の熱さは命に関わる〜イヌの体温調節と熱中症について復習しておこう! | the WOOF
梅雨のジメジメした時期を過ぎると、日本列島も本格的な「サマー♡」に突入です。 暑い!すごく暑いよ。でも、ず〜っと家に閉じ込めていたワンコさんにお詫びをしようと、お外に連れ出したくなってしまう飼い主さんもいらっしゃることでしょう。