【犬本紹介】想い想われ犬と人『犬のおもいで』~犬の表情に込められた気持ち

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皆さんこんにちは! この原稿がアップされる頃は、残暑でしょうか。梅雨明けから急に暑くなった東京で、毎日冷たいシートでひんやり感覚を楽しんでいる読書犬・ぐりです。さて、今月は犬のカウンセラーが書いた、実話をもとにした本をご紹介します。

犬のカウンセラーの実話

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image by Aaron Jacobs / Flickr

犬のおもいで』(三浦健太著 KADOKAWA 2014年)は、犬にまつわる7つの物語が納められた本です。『犬のこころ』(三浦健太著 KADOKAWA 2011年)の続編ですが、どちらから読んでもまったく問題ありません。

著者の三浦さんは、高校卒業後、3年間の会社員生活を経験、その後は全国で犬のしつけ教室を開いてきました。多くの飼い主さんの悩みに寄り添い、どうすれば、犬が、そして人が幸せに暮らせるかを、飼い主さん、そしてそのパートナーである犬と一緒に考えてこられた方です。

私たちは犬を選ぶことができますが、犬は飼い主を選べません。人の意思で人に飼われ、上手に暮らせないからといって捨てられ、その命を人が断つことに、大きな矛盾を感じていました。(p.3)

という三浦さん。いわゆる問題行動といわれる犬の行動がなぜ出てきているのかを、犬と飼い主の関係を見ながら判断し、アドバイスをしているそうです。

パートナーを送り出す辛さ

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image by Nick Kidd / Flickr

そんな三浦さんが出会った、数多くの犬と人。その中から印象的だったストーリーを、ほぼ事実に即して書いたのが本書です。

「被災地の犬ユリ」は、東日本大震災で被災した田辺アキさんとその飼い犬ユリの物語です。一人暮らしのアキさんは10年前から柴犬のユリと生活を共にしていました。2011年3月11日、あの大地震に見舞われた仙台市で、津波によって家を失います。ユリと一緒に避難所へ向かうアキさん。室内に犬は連れて行けないため、仕方なく外につなぎますが、寂しさと不安からユリは一晩中鳴きました。日に日に避難者のストレスもたまり、そこにとどまることが難しくなったアキさんとユリは、もう少し田舎のこぢんまりとした避難所へ移動します。すべてユリのためです。なんとか受け入れてもらえる避難所を見つけたと思い、ほっとしたのもつかの間、やはりユリの吠えはおさまらず、同じ避難所にいる人からやんわりと「なんとかなりませんか」と相談されるのです。

その後、アキさんはユリが幸せになれるような道をさぐり、意を決して、ボランティアに預けます。お互いに遠く離れた後、ストレスからユリは人を噛みますが、犬を愛する人たちのおかげで、少しずつ心の健康を取り戻していくのです。

地震は自然災害ですが、多くのものを奪います。命、物、そして穏やかに暮らしていたころの心も。人々が生きていくのに精いっぱいのときに、動物の命にまで心を向けるのは、ましてやそれが他人の飼っている犬であれば、なかなか難しいのかもしれません。だからこそ、災害に備えて、僕たちペットをどのように避難させるのか、を考えておいてもらえたら嬉しいなと思います。そして、災害時に、こうした動物たちを救出し、預かってくれる団体があることも本当にありがたく、素晴らしいことだと思いました。

一方、福島県双葉町に住んでいた鳥井さん夫妻も、東日本大震災によって家を追われました。そう、東京電力福島第一原発の事故によって、です。鳥井さんのパートナー、雑種犬のゴンも一緒です。双葉町の自宅では鳥井さんとそれこそ一日中片時も離れずに暮らしていたゴンでしたが、避難でのストレスからかだんたんと元気がなくなっていきます。そんなゴンを心配して、鳥井さん夫妻は、レスキューに来てくれていた団体にゴンを一時預けることにしました。

預け先で手厚くお世話をされていたゴンでしたが、ある時急に危篤状態に陥ります。周りにいたスタッフは手を尽くし、福島から鳥井さんも駆けつけます。その後、ゴンはどうなったのでしょうか。ぜひ本書でご確認を。

他にも、犬のしつけはどうすればよいのか、犬の幸せを一番に考えた結果、ある試みをした戸田さん夫妻、小学校のクラスで犬を飼うことにしたクラス担任、愛犬と一緒に散歩中、とある出来事から川の掃除にかかわることになった中村さんなど、どの物語も事実がベースになっているからか、読み応えがありました。

犬が持つ深い愛情

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image by Frank – (Denzel) / Flickr

著者の三浦さんはあとがきにこう書いています。

長い間、犬と暮らし、犬を育てていると、「しつけ」や「訓練」より、もっと先に知るべきことがあると痛感します。犬の能力の一番の素晴らしさは、深い愛情を持っていることではないかと私は思っています。犬が本来持っている愛情は、私たち人間が想像する以上に深いものです(p.202)

嬉しいなあ。僕たちのことをこんなに理解してくれているなんて。人のパートナーとして、一緒に暮らしていくためには、もちろんしつけは必要だと思います。でも、そのときに、僕たち犬の本来持っている、「人が好き」という気持ちを大事にしてもらえたら、きっと最高のパートナーとして楽しく暮らせるのではないかと思います。犬の心の中をもっと知りたいという方におすすめの一冊です。



Featured image credit Bailey Cheng / Flickr

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