犬のデンタルケアは犬種に関係なく、どんな犬でも必要です。適切なケアを怠れば、どの犬も歯科疾患になるリスクは高くなりますが、一部の犬種では遺伝などの要因により発症リスクが高いことがわかっています。
歯科疾患の危険因子にはどんなものがあるの?
家でのケアを怠ること、適切な治療を行わないこと、そして不適切な食事は歯科疾患の大きな原因です。しかし、ケアをしっかり行っていても、一部の犬は歯に問題を抱えてしまうことがあります。
歯科疾患の危険因子として次のものが考えられていますが、犬種によってはこれらのリスクをもって生まれてきます。
- 歯並び:歯並びの悪さは、歯垢がたまりやすさや、噛むことによる自然な口内浄化作用に影響します。
- 短頭種(Brachycephalic dog):マズルが短いパグなどの犬種は、歯が成長する余地が少ないために、不正咬合のほか、歯が隙間なく生えたり、歯が奇妙な方向に突き出るなどの問題を抱えています。このため歯垢がたまりやすいうえ、ブラッシングなども困難です。
- 遺伝:遺伝も歯科の問題に影響しているとみられています。ヨークシャーテリアは、チワワ、ポメラニアン、プードルなどの特定の犬種では、ライフステージに関係なく歯周病が確認されています。
- 生活習慣:噛まずに飲み込んで食べたり、噛むタイプのオモチャをあまり使用しななどの生活習慣も、歯垢たまりに影響します。またフリスビーなどのモノをキャッチするスポーツを好むかどうかでも違いはでてきます。
- 食生活:栄養状態は口腔環境にも影響すると考えられています。ただし「ドライフードを食べることで汚れが取れる」という言説には信ぴょう性はありません。
小型犬と大型犬では違いはあるのか
AKCは、「直面する歯科の問題は、小型犬と大型犬で異なる」としています。頭の大きさや歯並びのほか、生活習慣 によっても違いはでてくるようです。
小型犬では歯石の形成、歯茎の後退(知覚過敏の原因のひとつ。歯周病のサインともいわれる)、歯の喪失みられるそう。一方の大型犬は、アグレッシブなカミカミによる歯の破折(歯の硬組織が折れたり割れたりすること)が多くみられ、これが感染の原因となって膿瘍および歯の喪失を引き起こすことがあるといいます。
歯の病気になりやすい犬種
それでは、「歯の病気になりやすい」といわれる犬種をあげていきます。パートナーが該当したら、ぜひ今より積極的に、お口ケアに取り組んでくださいね。
・コリー、シェルティ、ダックス
コリー種およびシェトランド・シープドッグ、ダックスフントのように、上顎にたいして下顎が通常よりも短い犬種は、オーバーバイト(噛みあわせた際、上の前歯が下の前歯に被さる)になりがちです。またマズルが狭い(口のあたりがほっそりしている)ため、特に歯の上部の歯の内側表面に歯周ポケットができやすいと言われます
・パグなどの短頭種
パグ、シーズー、ブルドッグ、ラサアプソス、およびボストン・テリアなどの短頭種の多くは、不正咬合の問題をかかえています。また、歯の間に隙間がないため細菌がたまりやすく、歯周病にもなりやすい傾向にあります
・小型のトイ品種
ヨークシャー・テリア、プードル、マルチーズ、ポメラニアンチワワには、乳歯遺残(にゅうしいざん)がみられます。乳歯が残ったままになる状態のことで、速やかに対処しないと永久歯が正しく生えてこない状態(不正咬合)を引き起こす原因となります。また42本の歯を小さな口に合わせる必要があるので、細菌がたまりやすく歯周病も起こりやすいといわれます
・ボクサー、グレート・デーン、マスティフ
歯肉の過形成や肥厚を起こしやすい犬種です。
・シーズー、マルチーズなど
シー・ズー、ラサ・アプソ、マルチーズ、幅ニーズなどは、歯が生えてくるのが通常より遅くなることがあります。ほとんどの場合は時間の経過により生えてくるため問題になりませんが、生えてこない場合は周辺組織に炎症を起こしたり、嚢胞を形成するなどの問題を生じさせるおそれがあります
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