こんにちは!the WOOF専属ライターでトイプードル8歳オスのライチです。
みんな、健康診断って、受けてる?ライチは毎年受けているんだけれど、「お元気なのに動物病院に行く必要あるの!?」「ご病気でもないのにチクリされちゃうの、嫌なんだけど!」って、いつも思います。
今日は、「犬に健康診断なんて必要なの!?」ってテーマで、日本動物医療センター(JAMC)の長倉獣医師に取材を敢行。健康診断って何するの?ってところから、色々聞いてきちゃいました!
この記事は、ペットの予防医療の普及・啓発活動を展開する獣医師団体「Team HOPE」の協力により作成したものです。
健康診断や予防医療についてもっと知りたい方は、Team HOPE公式(http://teamhope-f.jp/) をチェックしてね🐶
[icon name=”comments” class=”” unprefixed_class=””] お話を伺った方
長倉 絵里佳(ながくら えりか)
酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業
日本動物医療センターにて勤務
現在、当院にて予防医療セクションリーダーを務めています。
予防や健康診断を始め、動物が健康で長生きすること、そして動物との生活をご家族が安心して幸せに送るために、何ができるのかを日々考えています。
健康診断の受診は、早期発見・早期治療の第一歩
ライチ
今日は体験健康診断、ありがとうございました!でもライチ、何をされたか、わかりませんでした。健康診断って、何をするんですか?
長倉先生
お疲れさまでした!今回はライチくんの健康状態をひととおり診るために、身体検査、レントゲン検査、血液と糞尿の検査をしました。
健康診断とひと口にいっても、どんな検査をするのかは病院によって異なります。身体検査のみのシンプルなものもあれば、ライチくんがやったような基本的な検査を加えたもの、さらには内分泌検査など特殊な検査をつける場合もあります。
ライチ
さっそくですがズバリ、動物病院の健康診断って必要ですか?ライチ、お元気いっぱいだし、おうちで「健康チェック〜!」ってベタベタ触れられるから、いらないのかなって思っちゃいます…
長倉先生
おうちでの健康チェックは良いですね!それでもやっぱり、獣医師の健康診断は必要だと私は思います。
ライチくんのように、元気で大きな問題はないように見えるコでも、実際に触ったり胸の音を聞いてみると、なんとなくおかしいなぁってところを発見することはよくあることです。実際、0~3歳の異常値検出率は犬で4.9%、猫で4.1%というデータがあり、血液検査や糞尿の検査などをすると、病気の前兆だったり、かすかな兆候がみられることもあるのです。
目に見える変化であれば気づいてもらいやすいですが、そうではなく身体の中でじわじわじわじわ進む病気は、おうちでは見つけるのが困難です。症状が出るころにはかなり重症化していて、手遅れになるケースも少なくないんですよ。症状はなくても、病気の元になりそうなものを早期に発見できれば、獣医師から日常生活での工夫や病気の予防に関してアドバイスすることもできます。
それに加えて、「前と比べて今はどうなのか」ってところをみるのは、病気発見のおおきな手がかりになります。「定期的な」獣医師の健康診断はとても大切です。
ライチ
なるほど!お元気だからと油断してたら、だめなんですね!でも、ライチのお友達で、ご病気の治療を受けているコがいますけれども、そういうコは病院にたくさん行っているですから、定期的な健康診断はしなくてもいいですか?
長倉先生
ご病気のワンコにも、定期的な健康診断は受けて欲しいです。
病気の治療では、その病気を集中的にみるものです。たとえば心臓の治療をしているコだと、定期的にレントゲンをみたり超音波をとるなど、心臓病に関する検査が主になります。獣医師もご家族も、心臓の方に注意を向けがちです。
でも、身体の中では他の病気が進行することもありえますよね。このとき、心臓にばかりに注目するようだと、他の病気の可能性を見落としてしまうこともあると思います。
健康診断は病気の治療とは異なり、先入観をできるだけ排して、全身の健康状態を確認しようとします。治療中のコでもこうした機会をもつことは、早期発見早期治療のために必要だと思います。
ライチ
ご病気の発見をするためには、大きな病院で健康診断受けた方が良いですか?
長倉先生
一般的な健康診断項目なら、たとえば血液検査や糞尿の検査などであれば、病院によっておおきな差はないと思います。機材についても、それほど差はないでしょう。
健康診断を受ける動物病院を選ぶポイントという意味では、むしろ動物病院のスタッフとの相性や、質問のしやすさなどの方を優先して考えた方が良いかもしれません。一般的な健診であれば、継続的に検査を受けているとか、ご家族からたくさんお話を聞ける方が、獣医師も良い診断が下せるのではないかと思います。
ただし、一般的な項目より詳細な検査を行う場合は、機材やスキルや経験による差も出てくると思います。もし一歩先の項目にすすむなら、かかりつけ獣医師と相談のうえ、必要に応じて大きな病院や大学病院を紹介してもらうと良いでしょう。
健診メニューは獣医師と相談して決めよう
ライチ
どんな検査を受けたらいいかは、どうやって決めるんですか?犬はみんな、一番簡単なのでいいって言うと思います…。
長倉先生
年齢や犬種によってなりやすい病気がありますので、そのコに合わせた項目を選択するのが良いですね。
シニアであれば、血液や糞便の検査などのオプションも、加えた方が良いとは思います。ただ、何歳のどの犬種のコでも、「これだけやっておけばパーフェクト」というものはありません。簡単な身体検査をしたり、ご家族とお話する中で気になる点があれば、その点を払拭するための検査を提案します。たとえば、オシッコに心配があるコには尿検査を提案しますし、聴診してみて心臓に雑音があったら超音波の提案をします。そのコによって、変えて行くのがいいと思いますね。
また、腎臓障害の目安となる項目について、基準範囲外となる子の割合が7歳以降から徐々に増加し、11歳になると2倍、13歳を超えるとさらに増えるというデータがあります。こうしたデータを踏まえると、年齢に応じて11歳では年に2回、13歳以降は年に3回に頻度を増やした方がいいようです。
もちろん、ご家族の希望に沿ってメニューを決めることが大前提です。
シニアといわれる年齢(小型犬だと8歳前後、大型犬だと6~7歳)は、癌や関節炎その他の病気を発症しやすいものです。病気を早期に発見するため、必要な検査項目や頻度がふえるんだって。
ライチ
簡単な身体検査だけ受けたいって言ってもいいのかなぁ?それだけでも、診てもらう意味ありますか?
長倉先生
もちろん大丈夫ですよ!来院されて、お身体を触らせてもらって、目や口や脚の様子をみるだけでも、十分に意味はありますから。お家では見落とされてしまう点を、獣医師や看護師などが気づくこともありますからね。気になるところがあれば、次に検査をしてみましょうという話もできるし、普段の生活でできる工夫などのご提案もできます。
動物病院に足を運んでもらう、身体をみさせてもらうというのは、とっても意味のあることだと思います。
ライチ
いろんなオプションを提案されたとき、お断わりしてもいいですか?ご家族が悩むこと、結構あるみたいです。
長倉先生
はい。一回持ち帰って、ゆっくり考えてください。どの獣医師も、そのコの状態に応じて必要だと思うものを提案するとは思いますが、なんかこう腑に落ちないということもあるかも知れませんし、費用の面で心配だったり家族会議が必要なこともあるかと思います。
提案した獣医師の側が、そのことで嫌な気分になることはもちろんありません。
健康診断は愛情記録、上手に活用しよう
ライチ
ライチは今のところはお元気で、健康診断でご病気が見つかったことがなくって、家族は嬉しいですけれど、お財布が軽くなって悲しいって言います。
長倉先生
そうですね、お財布への負担はありますよね。でも、何もしないなくて手遅れになったり、突然の別れが訪れるとしたらどうでしょう?本格的な治療だと想定外の費用がかかることもありますし、突然の別れによる後悔や悲しみは計り知れないものものですよね。
健康診断は、一時的には大きな支出ですが、その場限りのものではありません。この先の動物の健康と、ご家族との幸せな暮らしを守ることに繋がるものです。
是非、この機会に獣医師にたくさん質問をして、いろんな知識を持ち帰ってください。もちろんその場で聞いていただくのが一番ですが、後から「あれどうだったかなぁ」「聞きそびれちゃった」という点をお問い合わせいただいても構いません。お電話でも、改めて来院いただいていいですし。そこはもう、どんどん聞いてください!
健康診断の費用って、気になるものですよね。動物病院によって異なりますが、大体の目安は「1万円台~3万円台」だそうです。これは、検査項目の違いや、検査する箇所などによっても費用が異なるからです。決して安くはないけれど、健康・安心できる暮らしにはかえがたいものってことかな。
ライチ
おかあさんは、ライチの写真とか動画とか撮りますけれど、それもお役にたちますか?
長倉先生
動画は、すごくありがたいです!たとえば「咳が出ます」「変なクシャミのようなのが出る」といっても、来院されたときは全く出ないなんてこともありますから。動画のように目にみえるものがあると、どういう検査をするかのヒントにもなります。写真や動画、録音などは、とってもありがたいです。余裕があったらぜひ撮ってください。
もちろん、「撮影どころじゃない」というときに無理する必要はありません。動物に危険が及ぶ状態なら、病院に連れて行くことを優先すべきですから。ただ、複数の人がいる場合や、飼い主さんに余裕があるときは、撮影していただくとありがたいです。
日常的なメモ、たとえばいつ何回症状があったとか、気になることなどをメモしておくことと、質問時間が充実しますよ。
ライチ
そのほか、健康診断を受けておくことのメリットありますか?
長倉先生
記録として残るものをお渡しできることでしょうか。これはTeam HOPEの健康診断の話になりますが、詳細な報告書をお渡すると、とても喜んでいただけます。普通の健康診断では、血液検査などは検査報告書がありますが、身体検査などはその場で聞いて終わりということが多いものですから、愛犬の健康記録を年ごとに残せるのは嬉しいもののようですよ。
残念ながら動物を亡くした際にも、亡くなった寂しさはあるもののケアを続けてきた充実感が得られたり、その子との時間の振り返りが出来てよかったというお声を頂いたこともあります。
あと、少し話がそれてしまうかもしれせんが、日常生活の中で受けた健診結果は、災害などで異常な状態になったとき、貴重な情報になるんです。被災した動物が体調を崩してしまうことは多くあるんですが、そうした異常がもともとあったものなのか、それとも災害をきっかけに起こったのか、獣医師が診断するうえで、おおきなヒントになるからです。災害対策の観点からもぜひ、健康診断の受診を検討してください。
安心が得られること・将来の幸せな時間を守ることが健康診断の醍醐味です。
ライチ
それって、Team HOPEの加盟病院じゃなくってもいいですか?だって、ご近所にないってコもいると思います。
長倉先生
はい。健康診断そのものが、ワンコの皆さんの健康維持に役立つものですから、いつもの病院で良いですから、ぜひ受診してくださいね。どこか良い病院はないかなぁとお探しなら、HOPEの加盟病院もご検討ください。統一した項目を検査する「わかりやすさ」と「詳細な報告書」がありますよ。
普段の健康状態を確認には、ぜひ『ウェルネスチェックシート』を使ってみてください。何か異常を感じたら、動物病院に相談してくださいね。
[icon name=”heart” class=”” unprefixed_class=””] 取材協力
Team HOPEは、全国の獣医師・動物病院がTeamとなって、ペットの予防医療と健康管理の普及・啓発 活動を推進し、ペットにやさしい社会の実現を目指すプロジェクトとして2013年12月に発足。Team HOPEの「Team」には、獣医師同士のTeam、業界全体でのTeam、そして、ペットオーナーと獣医師とのTeamづくりを願う気持ちが込められています。
〈取材・文=釜口祥子(@kero269)〉