ペットの肥満問題に挑む〜給餌方法を見直すことでヘルシーなご長寿ワンコを目指そう!

サイエンス・リサーチ
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愛するワンコ家族と、楽しい生活を送っていますか?

いつも一緒、何をするのも一緒。いろんなものを共有している。住まいやベッド、ジョギングの時間、さらに時々デザートだって!分かち合う暮らしは本当に楽しいものですが、それがダメな生活習慣ならどうでしょう。ワンコの健康を脅かす大問題かもしれません。

肥満はエネルギー摂取と消費の不均衡から起こる

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うんどう、してください! © Ivonne Wierink / Shutterstock

1億9千万人がペットと共に暮らす国、アメリカ。ここで飼い主とペットが「共有」している問題は、なんと食べ過ぎなのだそう。結果、両者ともに共通する「最も多い栄養不良の形」は、栄養の摂取不足ではなく摂取過多だというから驚きです。肥満の蔓延は、人間と動物双方に、糖尿病や高脂血症、がんなど、同様の疾病を引き起こしています。

本年7月に開催sれたADSA(アメリカ酪農科学協会)とASAS(アメリカ動物科学学会)共同年次総会で、世界から集まった5人のコンパニオン・アニマル栄養学専門家が、犬猫への過剰または間違った餌やりの影響を、生体エネルギー学(Bioenergetics)的観点から考察し発表しました[1]

生体エネルギー学とは、生命体がどのような様式で、どれだけのエネルギーを獲得しているか、またそれを利用しているかなどを専門とする科学の一分野です[2]。生体エネルギー学を専門とする研究者たちは、肥満をエネルギーの消費と摂取の不均衡であるととらえ、これを実際のペット肥満解消に役立てようと試みているというわけですね。

「食べ過ぎて運動しなければ太る」というと、これまで私たちが持っている知識とそれほど多く変わるようには聞こえませんが、彼らは食物分子からどのようにしてエネルギーを取り出し、どのように活動のエネルギーに変えるかということを、生化学・分子生物学的観点から解明しようとしているところに違いがあります。

うちのコ、太ってる?飼い主さんがきっちり把握しよう

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このコの体重、すごすぎ! © cynoclub / Shutterstock

イリノイ大学の動物栄養科学教授、ケリー・スワンソン博士は、ペットの健康に最も重要な役割を果たすのは飼い主であり、飼い主が認識を変え、行動を変える必要があると述べています。「飼い主は、自分のペットが可愛いくて可笑しいずんぐりむっくりの動物ではなく、実際は肥満なのだと認識する必要があります。引き締まって健康なペットは長生きするだけでなく、より質の高い生活が送れるのです」

実際、2015年4月にピュリナペットケアが発表した調査結果によれば、BCS(ボディーコンディションスコア:皮下脂肪量)4または5の痩せ型を維持している犬は、平均寿命が1.8年長いことがわかっています[3]。また肥満気味の犬では、マズルのあたりの毛が白髪になる、よたよた歩く、元気がなくなるなど「老い」のサインがいち早くみられたということです。ぽっちゃりが可愛い、という認識では、大切なペットの寿命を縮めてしまうようですね。

肥満解消の食餌療法は個体ごとに行う必要がある

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たべて、よ〜し! © Ivonne Wierink / Shutterstock

スリム体型を維持するためには、どうしたらよいのでしょうか。

Hill’s Pet Nutritionの博士研究員であるデニス・ジュウェル博士は、年齢や犬種などの個々の要素を勘案した給餌をすべきと主張します。「動物はそれぞれ、例えば体重を維持するために他の動物よりカロリーを多く消費するか否かを決定するなど、個体特有の遺伝子を持っています。年齢やサイズなどの要素を基にペットをカテゴライズし、その群に適した給餌プログラムを作ることはできますが、食餌療法は個体ごとに作らなければならないのです」

研究者たちは、「さらなる調査および研究が必要」としながらも、食餌療法における食物繊維について言及しています。食物繊維の摂取が、エネルギー代謝と腸内細菌の数によい影響を与え、肥満解消を含む健康維持に役立つ可能性を示唆しました。犬の食物繊維の摂取については諸説あり、現在のところ飼い主であるわたしたちが自身をもって取り入れられる成果は出ていないようです。健康への良い影響があるとわかれば、これまでの食事習慣も少し変わるかもしれませんね。

肥満の予防はシンプルに。給餌量をしっかり管理!

さすが研究者。難易度の高い要求を突き付けてくるなあ、と思ってしまいました。犬の年齢や犬種、サイズや生活習慣まで勘案し、栄養価をはかって毎日の食事を与える・・・・なーんて、普通の飼い主さんには無理な要求です。

ここはシンプルに、おデブは長寿の敵ということを認識したうえで「運動量に食事量をあわせる」「1日に与える食べ物の総量を管理する」で良いと思います。しかし、ペットの栄養に関する最先端の研究って、えらく進んでいるんですね。

 
h/t to American Society of Animal Science. “Countering pet obesity by rethinking feeding habits: Reevaluation of pet feeding regimens could spell healthier animal companions.” ScienceDaily. ScienceDaily, 30 July 2015. , 翻訳:kaya.uk


[1] Swanson, K. (n.d.). Companion Animal Symposium : Bioenergetics of pet food (Vol. 93, pp. 581–582).
[2] 生体エネルギー学とは – コトバンク
[3] Purina – Nutrition And Extending A Dog’s Healthy Years

 
Featured image by AnikaNes / Shutterstock

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